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「残り12か月ということについては先程聞いた──が」


 迷いのない足取りで歩み寄り、一歩踏み出すと、サヴジは使者をまっすぐに見据えた。


「コトネへの説明には、俺も同席させてもらおう」


 いいだろう、コトネ。

 そう呼びかけられ、コトネはほうっと息をつき、頷く。


「そのうえで──北の国の立場からも、意見を述べさせてもらいたい」

「かしこまりました。それでは改めまして、再び今後についての概要からお話させていただきます」


 もう一度始めから話してもらえる、と聞き、いくらかコトネの肩から力が抜ける。


「大丈夫よ、一緒に聞くから」

「エリンもだよ! コトネとエリンの大事な話だもん、全部聞くわ!」

「うん、……ありがとう」


 柔らかに笑うフェリカと、両手をグッと握って意気込むエリンの様子に、コトネの頬がふっと緩む。

 そんな様子に、二、三度、小さく頷くサヴジ。

 ちらりと視線で使者に続きを促す。


「これより、各国の王子王女様の元へ、皇貴様がお渡りになります」


 これまでも何度か、各国間で4人が集まったことはあるが、それらはすべて東西南北すべての国の王子王女が一緒だ。

 コトネ一人でいずれかの国に行ったことはないし、サヴジ、エリン、フェリカいずれもふたりきりで過ごしたことはない。


「皇貴様には、その期間に改めて婚姻の儀に進むことを考えていただきます」


 その言葉に、コトネの胸が小さく揺れる。

 サヴジ、エリン、フェリカへと一瞬視線がさ迷うのを見て、


「──ただ、こうして4人で集まる機会がなくなるわけではない。あくまでも、コトネと、それぞれの国が改めて向き合う機会ができるということだ」

「サヴジ様のおっしゃる通りでございます。此度のような交流会は、この12か月の間も。そして後々に渡っても、ぜひとも大切にされるべき機会でございますから」


 再び安心したように小さく息を吐くコトネ。

 先程から短期間に気持ちが揺さぶられたせいか、安心したせいか、一気に疲れが押し寄せてきたような気がする。

 

 未性別から性別化すれば、個人によって程度の差は在れど思考や気持ちにも様々な変化が出るという。

 誰かを選び、いずれかの性別になれば、これほどまでに気持ちが揺れることはなくなるのだろうか。

 

 そんなことがふと頭に浮かぶ。

 

(今はそこを考えるより、ちゃんと目の前のことに気持ちを向けなくちゃ)


 1年後には、自然とわかることだ。

 そう自分に言い聞かせた、そのとき。

 

「俺としては、あまりコトネを迷わせたくない」


 凛と響く声に、僅かに下がっていた視線が上がる。

 

「交流会は、東西南北の順で行われてきた。ならばここからは、逆回りということを提案したい。このままコトネは北の国に残り、第1回目とすることを」


 サヴジの言葉に、思わずコトネが、エリンが、フェリカが使者を見る。

 

「ヤコクとしては、差し支えございません。ただし——滞在期間および帰還については、ヤコクの規定に従っていただきます」


 するすると告げると、使者は恭しく頭を下げた。


「まずは最初のお渡り先をお決めくださいませ、皇貴様」

 

 (……ちゃんと、向き合わなきゃ)

 

 

──こうして、コトネの“選ばなければならない時間”が、動き始めた。

 

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