弟が死んだ 後編
前回のあらすじ
オランダの友人は葬式に来てくれない
本文
最初から断られた私は
なんかむかついてきてしまった
なんで弟のためにこんなことしなきゃいけないんだろう
くそ腹立つ、死ねよ阿部ぱぱぴぽ
あ、もう死んでるんだった。
怒りが収まらないので
あいつが使ってた布団を
包丁で切り刻んだ
ふーちょっとすっきりかも
次はバンドメンバーかな
えっと、突然の連絡失礼しま……
あーもう面倒くさいまじで
別にそこまで畏まる必要もないか
弟の友達なんてどうせゴミだろうし
ー阿部の姉です。弟死んだんで葬式来てね
あれ?今度は返信自体来ないな…
もしかしてこいつ
同じバンドメンバーからも嫌われてる?
ピロン♪
あ、来た
ー申し訳ないですけど
そいつの葬式なんて行きたくないです
他のメンバーも同じらしいです
え?マジかよこれ
ー理由を聞いても?
ー阿部のやつ、何年か前に電話してきて
俺やバンドへの文句とか急にぶち込んできたんです
解体して10年以上経ってるってのに
さすがに異常者過ぎてもう関わりたくないです
長文きついな…
ーあっそ
ーは?弟が弟なら姉も姉だな
死ねよ阿部一族
ー弟は死んでるけどw
はぁ…葬式開かない方がいいかな…
全然お香典集まらないじゃん……
それからも私は色んな人に連絡したけど
来てくれるって人は誰もいなかった
ほとんどが障碍者っぽくて
まともに意思疎通すらできなかった
死んだって伝えたらむしろ喜んでた奴もいた
だれも…本当に誰も来てくれないなんて…
一体どんな人生だったの?ぱぱぴぽ……
仕方がないので葬式はやめて
死体だけ焼くことにした
今時埋めるなんて贅沢は到底できない
次の日、私は子供を連れて火葬場に行った
職員に弟の処理を頼む
「では、弟をお願いします」
「へい、焼き加減はどうしやしょう?」
「はい?」
「レア、ミディアムレア、こんがりのどれかに仕上げますんで」
「え?じゃ、じゃぁこんがりで…」
「ハハハ、冗談ですよ!」
「えっ、は、はぁ…」
「でも家族の死体をこんがりって
中々不謹慎な方ですね
個人的にあなたみたいな人嫌いですよ」
「……」
たかが力仕事の土方風情が
生意気なこと言ってくるので
頭に来たけど、どうせ会うのは
今日だけだし、子供もいるしで我慢した
落ち着くために息子を見ていると
職員が開始の合図をあげた
「では、始めますね」
バチバチ
弟が焼かれていく
体が燃える音がまるで
拍手の音のように聞こえてきて
妙にテンションがあがってしまう
そうやってしばらく
燃える様子を見ていると
息子が辛そうな声を出してきた
「ねぇ、ママ、ここ暑いし臭いからいやだよ」
「ごめんね、でも、もうすぐ終わるから」
子供には暑かったみたいだ
少し離れるか
弟が灰となって空を舞う
彼の死因は麻薬によるショック死
気持ちのいい死に方だったから
あんなに楽しそうに舞っているのだろうか
弟との思い出を振り返ってみる
執拗に私の風呂を覗いてきたり
胸を揉ませろと堂々と要求してきたり
寝てる私の体をこっそり撫でたりして
はぁ、本当気色悪い奴
ねぇ、ぱぱぴぽ……
あなたには言ってないけど
私がうんこしながら
あなたにおっしこの仕方を教えた時
あなたが勃起していたこと
実は気づいていたよ…
何をどうしたらそんな風になっちゃうの…
同じ家族なのにわからないや…
そうやって感想に浸っていると
息子が話しかけてきた
「ところでママ、あそこで焼かれてる臭い死体って誰なの?」
「えっ?」
「ねぇ、誰??」
あれは
あそこで焼かれているのは
「誰なのママ、教えて?」
いい思い出がある訳でもない
死んで悲しい訳でもない
むしろ生きていればそっちの方が困る気もする
同じ母から生まれ
同じ飯を食って
同じ家から育ち
やがて別々になった
あれは……
私の……
「さぁ、ママもよくわからないや」
「へー知らない人なんだ」
「そうなの!ってか臭いからもう帰ろうか!」
そう、あれはもうただの屍
なかったことにして
私は私の人生を歩もう
でもせめて
別れの挨拶だけはしておくね
さようなら
さようなら、あべぱぱぴぽ
完




