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授業の様子

昼休み、僕は教室で、ナギサとカエデ、アキラの三人と昼食を摂っている。母さんが作ってくれた弁当はいつも美味い。ナギサも美味しそうに食べている。可愛いなぁ。


…しかし、早かったなぁ。ヤスヒロ君がいじめられるの。まあ、僕も一役買ったけどね。


え?何をしたかって?簡単だよ?ヤマトに、スミレがヤスヒロ君に好意を抱いていることを伝えただけ。


今はヤマトとその取り巻きに屋上でボコボコにされ、服を燃やされているところだ。僕はそれを薄くばらまいてある煙で感知している。


昼休みが終わり、授業が始まってもヤスヒロ君は教室に戻ってこなかった。


まあ、さすがに裸では来ないか。


「む?一人いないが、誰か知っている奴はいるか?」


教師が僕たちに問う。しかし、誰も何も言わない。


「ああ、いないのは『無能』か。なら、授業を始めても問題無いな。」


教師はそう言い、授業を始めた。


…僕にとっては簡単すぎる。ナギサも余裕そうだ。


僕は煙で球を作る。ナギサは風でそれを散らす。僕達が暇なときにする遊びだ。








次は実技の授業だ。僕はヤスヒロ君の体操服の端を煙でつまみ、屋上に投げる。


…お、来た来た。『無能』を知らしめる時が。


実技の授業では模擬戦がメインらしい。他のクラスも合同で行われ、学年で順位が決められる。


「よし、やるか、アキラ。」


「ああ、今度こそ一泡吹かせてやりたいところだ。」


僕はアキラと模擬戦をするつもりだ。皆は僕達に視線を送る。



「それでは、初め!」


実技の担当の教師が開始の合図を出す。


「おらぁ!」


アキラはそれと同時に、身体強化したタックルを繰り出す。


「無駄だよ。」


僕は体を煙に変え、通り過ぎる直前にアキラの全身に煙を纏わせ、拘束した。


アキラは抵抗するが、拘束は解けない。


「くっ、このっ…はあ、だめか、降参する。」


「ふぅ。アキラ、強化倍率上がってない?結構きつかったんだけど。」


煙だけではそろそろ拘束しきれなくなってきた。


「ああ、だから行けるかと思ったんだが…」


「昨日、煙を吸収する前の僕だったら解けていたね。でも、僕も強くなっているんだよ。」


「そうか…本当に勝てる気がしないな。」


アキラは天を仰ぐ。


「アキラ!私としよ!」


「ん、おう、分かった。」


ナツメがアキラを連れて行く。



「じゃあ、お兄ちゃん。次はナギとしよ?」


ナギサが僕を誘う。可愛い。


「ああ、分かった。お手柔らかにね?」


ナギサは強い。相性にもよるが、Sランク探索者の実力には十分届いている。


そしてナギサは風で僕は煙。今まで僕は、ナギサに一度も勝ったことが無い。



「じゃあ、いくよ?」


ナギサが言った、その瞬間。僕の体は細切れにされた。ナギサの真空刃だ。


僕は体を再構成しようとするが、ナギサの風で再び散らされる。僕は無色の煙をナギサの周囲に集めるが、これも散らされる。…勝てる気しない。


僕はナギサの付近の空気に煙を忍ばせ、呼吸のために吸い込む空気を利用して攻撃しようとしたが、ナギサは雲より上空からの大量の空気を下降気流として地面にぶつける。僕は地面に潜り込み、ナギサの足元から地上に出たが、ナギサは風を纏い、空を飛んでいた。


さらに、圧縮した空気の弾を僕に向けて発射する。僕の体はそれを受け、粉々になる。


そして…


「やりすぎだぁ!」


教師が叫ぶ。


「「はい?」」


僕とナギサは首を傾げる。ああ、ナギサが可愛い。


「だから!周りを見ろ!」


僕達は周りを見渡す。そこには荒れ、変わり果てた訓練場。コンクリートの地面は粉々になり、地面には穴がいくつも空いている。


「あ~、修繕費って学校持ちですよね?」


僕は聞く。


「いや、そのつもりだったんだが、ここまでの被害となると…」


「え!?そ、そんな…」


ナギサは顔を青ざめさせる。いかんな、ナギサに余計な心労をかけさせるわけにはいかん。


「ナギサ、僕は少し校長と話してくるよ。」


「え、でも…ごめんなさい。お兄ちゃん。」


ナギサは目に涙を浮かべて俯く。待て待て待て待て。泣くな。泣かないでくれ!


「安心しろって。こういうときは、お兄ちゃんを頼れって言ってるだろう?今回も、何とかするさ。」


僕はナギサを抱きしめて、言う。


「…うん。ありがとう、お兄ちゃん。後は、お願いします。」


ナギサは僕の胸に顔を押し付けて言った。


「はい、お願いされました。じゃあ、行ってくる。」


僕は最後にナギサの頭を撫でて、校長室に向かった。













「あ~、事情は分かった。お前たちの力に耐えられるほどの施設を持っておらんかった、我が校の責任と言いたいところだが、それだと予算が足りなくなってしまう。だが、この金額を一つの家庭に押し付けるのもなぁ…」


教師が校長に事情を説明すると、こう返ってきた。


「どのくらいの金額なんだ?」


僕は尋ねる。


「高くて、コレだ。」


校長は右手の人差し指を立てる。


「一兆?」


僕は尋ねる。


「なわけあるか!一億だ。」


校長は言う。


「そ、じゃあ、これで払うよ。」


僕は『死煙』のギルドカードを取り出す。


「「は?」」



「え!?『死煙』!?お前が!?なんで?」


校長の口調がおかしなことになっている。


「なんでって…本人だから?」


「いや待て!『死煙』は五年も前からSランク探索者なんだぞ!?お前みたいに若い奴が…」


「確か、十歳か十一歳の時にSランクになったはずだけど…特例だって。」


探索者稼業を始めたのは、八歳。ナギサが失明した次の日だった。


僕はギルマスから貰った身元保証書を取り出す。


「「マジかよ…」」


校長の口調が威厳の欠片もないものになっている。


「まあ、そういうことなら分かったが、このことは他に誰が知っているんだ?」


「僕が話したのは、『黒猫』のギルマス、その秘書、後は…あなた達二人だけだね。」


「「マジかよ…簡単に話したらダメなやつじゃん。」」


「そうだよ?くれぐれも…内密にね?」



僕は少し威圧して、その場を去った。


後に残されたのは一億の小切手と、いい年をして漏らした、中年の男性が二人だけだった。

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