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少食の獏  作者: 光輝
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今夜の仕事

報告書


八月上旬、家族からの通報があり15歳の少年が病院に搬送、

その他、同日、同地区にて同年代の子供が4名搬送された、

同日、同地区、同年代、以上の共通点より同じ夢を見ていると考えられる。


いずれの患者もあらゆる外部からの刺激で目覚める気配はなく、

眠ってはいるものの瞼の下での眼球の動きは活発なため、

ただの睡眠ではなく、特異な夢によってもたらされている睡眠だと思われる。


また、上記5名は同じ中学校の卒業生であり友人だったと思われる、

そして5名以外の同級生に対して調査を行ったところ、

皆、口をそろえて「最近中学生の頃の夢を見る」と言う、

このことから夢を見ている人間は4名だけでなく、

最終的には同級生全員を夢に取り込むのではないかと考えられる。


現在、5名は病院にて経管栄養にて栄養を送るという形で健康をサポート中、

しかし、すでに4名が巻き込まれていること、

他の同級生にも影響が見られ始めていることを踏まえ、

そして、この子たちの二学期始業式にも間に合わせてあげるために、

早急に対処すべきと思われます。


PS・病床数にも看護師にも余裕がないのでこれ以上増える前によろぴく★


                    木枕病院院長  木枕(きまくら) (げん)



渡された報告書をとりあえず読む、最後の最後にだいぶ私情が入っているが、

(げん)さんの言う通り、二学期の始業式までに目覚めさしてあげるべきだろう、

問題はどのグループがこの夢を喰いに行くかだ。


口を開いたのは(バク)の現トップ第一グループリーダーの壮志(そうし)さんだ、

「わりぃ、俺らまだ国から渡されてる仕事、

 終わらせ切れてねーわ、どっちかで行ってくんない?」


ここでの”どっちか”は俺、(あき)率いる第三グループ、

それと蒼人(あおと)さん率いる第二グループだ、とりあえず蒼さんのほうを見る、

目が会うと爽やかな笑顔で口を開く、

「僕ら、昨日の仕事で疲れてるんですよね~。」

本当にさわやかな笑顔、優し気な瞳をしているが有無を言わせない強みがある。


さらに、

「年齢的にも(あき)達のほうが近いし、

 ここ最近複数が巻き込まれてるタイプの夢に入ってないでしょ?

 このタイプは誰が夢の本体なのか見極める必要があるし、

 そういうのって経験を踏んだほうが良いんじゃない?」


そう言うと壮さんも「確かになぁ、よしっ!行ってこい!」と俺の肩をたたく、

まぁ別に、最初から行く気ではあったから拒否することもなく、

「了解っす」の返事で今夜の仕事が決まった。


報告書を手に寮に戻る、連絡を入れていたため全員食堂に集まっていた、

(じん)幸成(こうせい)(れい)結斗(ゆいと)、それと俺、(あき)

全員がそれぞれ席についている、仁は飯を食ってるし、幸成は先輩へのメール、

怜は難しそうな本を読んでて結斗は人形のほつれを直している、

とりあえず全員に報告書を渡す、

仁の報告書はすでにコップのコースターとして使われている。


「今夜の仕事だ、目を通してくれ」


「この報告書では夢にいるのは5名とされているが、

 夜なので他の同級生も夢の中にいると思われるため、

 最初に5名以外はすぐにそれぞれの(バク)に喰って貰い夢から出ていかせる。」


「異論は?」


「なし」 「ないよぁ」 

返事を返したのは怜と幸成の二人、後二人は食事と縫物で忙しいらしい、

「じゃあ各自しっかり眠るように、また夢の中で会おう、

 夢に入ったやつから5人以外の夢を喰って行ってくれ」

そう言って俺は食堂を後にする。


そもそも他人の夢に入りたいと思うだけで入れるわけではない、

基本入るには相手の夢に呼ばれ巻き込まれるしかなく、

赤の他人が夢に巻き込まれることまずないはない、

しかし(バク)保有者はその夢を見ている人間の一部にさえ触れれば入ることができる、

つまり俺は今から5人のうちの誰かに触れなければいけない、俺は病院に向かう。


俺ら(バク)の寮はこういった理由から病院のすぐそばにある、

病院に向かうと院長の(げん)さんが迎え入れてくれた、


「やぁ、暁まってたよ、すぐに案内しよう。」


「いやぁ、助かったよ最近一般の患者もおおくてねぇ~、

 このままこの子達の同級生みんな来るとなると看護師もたいへんでねぇ。」


「ここだよ、みんな幸せそうに眠っている、

 今回の夢はこの子らにとって幸せな夢なんだろうねぇ。」


源さんは口数が多い、

いい人だ患者の中でも子供に対してはより目を光らせている。

改めて5人の顔を見る確かに穏やかな顔をしている、

全員同じ病室なのはは源さんの配慮だろう、

手前の男の子の足に触れる、これで俺は(バク)の力を借りてこの子らの夢に入れる、


「そうですね、皆幸せそうにしている、でもこのままではいけない、でしょう?」


「そうだね。」

源さんは悲し気に笑う、子供に関しては思い入れが強くなるようだ。


病室を後にし、寮へと戻る、風呂に入り布団に潜り込む、

後は眠るだけ、(バク)が俺に語り掛ける、

「さっきの餓鬼の夢でいいのか?」

眠気が襲ってくる中返事を返す、

「あぁ、頼んだ今夜の夢はおいしいといいな。」


「まったくだな、じゃぁ暁、”おやすみ”」


ーおやすみー

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