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夜の館の夢語  作者: ハッピー氏
1章 ベッドの怪
4/17

第4話 きれいきれい

怪とは

1.元人間、及びかつて人間に使われ人間を慕っていた道具等。人間と道具で一個体、大多数で一個体の怪もいる。


2.負の感情を持ったまま死んでしまった、あるいは誰からも忘れ去られたもの。


3.本来行くべき場所に行けず、未練に縛られて特殊な人間の夢に干渉してしまうもの。


4.一つの怪が出現している間、他の怪は出現しない。


5.みんながみんな、襲うわけではない。



夜の世界とは

1.特殊な人間のみ干渉できる夢の中の世界。


2.物や建造物は現実とほぼ同じ配置をしているが、人間がいない。


3.代わりに、未練を残した怪がおり、怪のエネルギーが覚めるのを妨げる。


4.戻る(覚める)には、怪の悩みを解決する。

ルンルンと洗濯場のある部屋へと歩くコムギ。

枕に言われた通り、右壁の手前から2番目のドアの前に立つ。


「ベッドさん。このおへやであってる?」


コムギは箱を置き、ドアを指差す。

ドアにはwash&bathと文字で書かれている。

しかし、コムギは英語が読めない。


「そうそうこの部屋。奥が風呂場になっていて、脱いだ服をすぐ洗濯出来るようにって、前の家主がここに洗濯場を使ったんだ。」


つまり脱衣所兼、洗濯場ということらしい。

コムギはドキドキしながら、ドアノブを捻り、ドアを開けた。


ガチャッ!ギィーーー!


ドアを開け中を見ると、一見普通の脱衣所。

入って左手の壁には服を入れる棚。その棚一つ一つに籠が置いてある。また、奥の壁はすりガラスになっている。おそらく向こう側が浴場なのだろう。


「ベッドさん。ここだけへんだよ?」


コムギが指差したのは入って右側の一段下がった石畳の空間。木で出来た水が張ってある水槽に大きな桶が浮いている。その隣の棚には薬品らしき物が並べられている。何より、コムギが気になったのは、大きなローラが二つ付いた機械。何に使うのか、コムギにはさっぱりだった。


「コムギちゃん、ここが洗濯場だよ。あの水槽で洗うものを入れて、洗濯したあと、隣の機械で脱水するんだ。」


コムギはびっくりした。

ママが洗濯に使う、白い箱がなかったからだ。

コムギがイメージしていたお洗濯とは、大分かけ離れているようだった。


「ベッドさん、ごめんなさい。あたしおせんたく出来ないかも...。」


ボタンポチポチですぐ終わると思っていたのに大きな誤算だった。すっかり自信を無くしたコムギ。それを横目に「やはり」と思った枕は、また大きな声で話しかけてきた。


「大丈夫!洗い方も教えながらやるから、ゆっくりやろう。」


枕は、ない腕でコムギの背中をトントンするかのように、コムギを励ます。


「うん。がんばる!」


コムギはとりあえず自信を取り戻したようだ。

その様子にホッとした枕はコムギに指示を出す。


「とりあえず、あの水槽に溜まってる水を抜いて、新しい水を入れ直そう。水槽の中に栓があるから抜いて欲しいな。」


言われた通りコムギは水槽の中を覗くと、ボールチェーンに繋がった栓があった。コムギは袖をまくり、水槽の中に手を入れてチェーンを引っ張る。栓が抜けると、水がゆっくりと穴から抜けていった。


「ひゃぁっ!」


コムギはびっくりした。

急に足に冷たい水の感触があったからだ。水槽の水はコムギの足元を流れ、石畳の中心の排水穴にむかって流れていった。

コムギは急いでズボンをたくしあげ、水槽の水が無くなっていくのを眺めた。


「ベッドさん。おみずがなくなったよ。」


コムギは水槽の水が全て抜けた事を枕に伝える。


「それじゃあ栓を穴に戻して、水を入れ直そう。蛇口を右に回してごらん?」


コムギは言われた通り栓を穴に戻し、蛇口を捻る。


「ひゃぁっ!」


すると水が勢いよく流れ出した。

冷たい水がコムギの顔に飛び散る。


「本当はお湯がいいんだけど、今は出ないからね。仕方ないけど水でやろう。」


コムギは「うん。」と一言い、水が溜まるまで水槽の中を見つめていた。

自分ならできる。パパとママに会うんだと、自分を鼓舞する為にじっと水面に映った自分を見続けた。


それから数分後、水は水槽の高さの7割ぐらいまで溜まった。


「ある程度溜まったみたいだね。それじゃぁやっていこう。まずシーツからやるから、シーツをあの水槽に入れてくれる?」


コムギは箱から畳まれたシーツを取り出し、水槽に入れる。

シーツは水を吸いながら水槽の中で広がる。


「ヨシッ。次は洗剤を入れよう。隣の棚から赤いラベルの入ったボトルがあるから、それを取り出して中の洗剤を水槽に入れよう。」


コムギは棚から赤いラベルで「お洗濯用」と書かれたボトルを取り出し、蓋を開けて中の洗剤を水槽の中に入れた。ドバドバと大量に。


「ちょいちょいちょい、入れすぎぃ!壁にスプーンがあるからそれ使ってよ!」


コムギは横を見ると、壁に白い粉が付いた大きなスプーンがあった。コムギはスプーンを手に取り、既に半分以上が無くなった洗剤をさらに入れた。


「もう入れなくていいよ!ボトルを戻して!」


コムギはベッドの声に驚いて、ボトルに蓋をして棚に戻す。枕は悪い予感が的中した事に、大きく「はぁ〜。」とため息を付いた。


「ベッドさん。ごめんなさい...。つぎは、ちゃんとやる...。」


コムギはさっきの事を申し訳なさそうに枕に謝った。


枕はため息はついた。

しかし、コムギの年齢や状況を改めて振り返り、仕方がないとも思った。ましてや急に家族に会えなくなったのに、この年齢でここまでやってくれているのだ。

その精神力に感服すらする。

頑張るコムギを見て、枕は心の中でほくそ笑んだ。

同時に、頑張るコムギをしっかりサポートしてあげないととも思った。


「初めてだし仕方ないよ。ヨシッ、次はもみ洗いだ!前向きに行こう!」


枕はまたコムギを励ますように大きな声を出した。

その声に応えるようにコムギは笑顔を取り戻した。


「うん!がんばる!ベッドさんやり方教えて!」


コムギは泡でモコモコになった水槽の中のシーツを持ち、枕から指示を待つ。


「そうだね。まず、左手と右手で汚れた部分を持って、汚れた部分同士をくっつける。そしたら、思いっきりこするんだ。お湯じゃないから完全には落ちきれないと思うけど、頑張って!」


コムギはなんとか言われた通りやる。

しかし、中々汚れは落ちない。お湯でない事だけでない。コムギは力が弱く擦っても擦って汚れが取れないのだ。それでもコムギは一生懸命シーツに幾つも付いた大小様々なシミ。その一つひとつを落としていった。


その時、また枕から頑張れコールが聞こえた気がしたが、コムギは無視した。


「ハァハァッ。ベッドさん...。終わったよ...。」


なんとか洗い終えたコムギ、完全に落ちてはいないが、遠目で見れば分からないぐらい薄くなっている。


「よくやったコムギちゃん!終わったシーツはそこの桶にいれてね!さぁ、そのまま掛け布団もやろうか!」


コムギは急にテンションが下がった。

ただでさえシーツも大変。

更にシーツより重い布団もある事に。

疲れてしんどいが、パパとママに会うためだ。


コムギは、「大丈夫、自分ならできる」と自分を鼓舞して体を動かした。


「うんしょっ。ねえベッドさん、このおふとんもおんなじ?」


コムギは掛け布団を水槽の中に入れ、枕にやり方を聞く。


「そうだね、シーツみたいに汚れを擦る感じでいいよ。やりにくいかもだけど頑張ってね。」


コムギはシーツでやった感覚を思い出しながら、掛け布団の汚れを落としていく。表面、裏面共にシーツと同じような茶色い固まったシミが付いている。


「ベッドさん。この茶色いのはなーに?」


コムギは気になって聞いてみた。

少なくとも、ジュースでもお漏らしでもなさそうだ。


「(スーッハーッ)そうだね、この汚れについてはまた後で話すよ。」


枕は一度大きく深呼吸した。

そんなに話したくない事なのかな?

コムギは気になって仕方がなかった。


「ベッドさん。おふとんもおわったよ。」


シーツ同様完全に落ちきってはいない。しかし、枕から見ても十分だった。


「コムギちゃん、本当にありがとう!ヨシッ!最後はシーツと掛け布団を脱水だ!まずはシーツからやろう!」


久しぶりに洗ってもらったベッド。

汚れが取れてとてもテンションが高かった。

あと少しで自分の未練が晴れる!

やっとあの世に行ける!

そうワクワクしていた枕だった。


「ねぇ。ベッドさん。これどう使うの?」


コムギのその言葉に、枕のテンションはまた少し下がった。

ハッピー氏です。

ついにベッドの真相が分かります。

次と次に跨いで書きます。少々ネタバレになりますが、性的表現とグロ表現が苦手な方はお控えください。


次に洗濯の箇所について、私自身洗濯は手洗いした事が無く、調べながら書いていますので本当に合ってるのかわかりません。正しいやり方を教えて下さると嬉しいです。


面白くないと思う方もいると思いますが、最後までお付き合い頂けると幸いです。

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