第2話 こんばんは
部屋の前に立ち、意を決して扉を開けるコムギ。
「はやく、はやく!カモンカモン!」
声も近く大きく聞こえる。コムギからしたら正直ウザかった。
それでも怖いので、ゆっくりと扉を開けていく。
ギィィィーーーーッ
少し開いたタイミングで、閉じていた目を開く。
コムギは驚いて目を見開いた。
そこには衝撃的な光景が広がっていたのだ。
なんと、誰もいなかったのだ。
ただの寝室。コムギは恐怖で震えた。
さっきの声は?私が話していたのは?
コムギの中にはもう「お化け」という言葉が離れなかった。
「えっ...?だ、だれ...?」
そうだ、誰か隠れているに違いない。
そう信じて、声を出した。
しかし、声は驚くべき場所から聞こえた。
「いやーごめんごめん。変なことに巻き込んじゃってさー。とりあえず話したいことがあるからさ。ささっ、そこの椅子に座りなよ。おっと、足が一本折れてるからバランス取って座ってね。」
なんと、ベッドから聞こえたのである。
6歳になったばかりの女の子が見たら、反応は決まってる。
「キャァァァァァァァァァァーーーーーーーーッ!」
コムギは、急いで扉を閉めて玄関に向かって走った。
「あっ、ちょっ、まっ!」
何か聞こえた気がしたが、そんなのが気にならないぐらい怖かった。コムギは玄関に着くなり、もう一度ドアガチャをする。
ドンドンドンッ!ガチャガチャガチャッ!
「パパァーー!ママァーー!タスケテェーー!」
先程確認したにも関わらず、コムギは大号泣でドアを開けようとする。しかし、あいもかわらずドアはびくともしない。
「もうやだー!パパァー!ママァー!」
こんなとこにパパもママもいない。よくよく考えたらそうだった。そんなの、入る前から分かっていた。本当にいなくて、コムギはもう悲しくて仕方がなかった。コムギは、ドアの前で崩れるように倒れた。
「こわいよぉ...。パパァ...。ママァ...。」
泣き疲れ、歩き疲れ、女の子は眠くなってきた。そうだ、これは夢なんだ。このまま目を瞑って、起きたらまたパパとママがいたらいいな。それを願って女の子は眠ろうとした。
「おーい。脅かしてごめんよー。」
さっきの部屋から例の声が聞こえる。
いやいや気にするな、これも夢なんだ。
起きたら、この変な声ともバイバイだ。
コムギはもう眠る体制に入っていた。
「ちょっ!眠っちゃダメだ!君がパパとママに会えないのも、僕たちなせいなんだ!起きて!話を聞いてくれよぉ!」
口調がさっきのちゃらけた声とは打って変わる。
焦ったような声で話しかけてきた。
"パパとママ会えない?"
その言葉が、脳に響き、コムギは飛び起きた。
「なんで...?パパとママはどこなの...?」
もしかしたら、パパとママに会うための情報を聞ける。
コムギはさっきの部屋に向かって声を出す。
「そういう事も踏まえて話がしたいんだ!僕の姿が怖いかも知れないけど、我慢してもう一度きてほしい!絶対襲わないって誓うよ!お願い!」
コムギは勇気を出して、もう一度部屋に向かって歩き出す。既に一度見てしまったので、恐怖は半減していた。
着くなり部屋のドアノブを握り、またゆっくりと扉を開ける。
「事前に言っとけばよかったねぇ。僕はベッドだよぉ。まぁ、この世界で言うなれば、"ベッドの怪"とでも言うのかな?まあ、そこの椅子に座ってよ。」
コムギは警戒しながら椅子に向かって歩く。
「ほんとうに、たべたりしない?」
「食べないというか、"僕は"、君を襲えないの方が正しいかな?」
何か裏がありそうな感じにベッドは答える。
コムギは手を伸ばして椅子を寄せ、腰をかける。
「キャッ!」
背もたれにもたれた瞬間、急に左後方に転けそうになった。
急いでバランスを取ったので転ばずに済んだ。
「言ってなかったかい?その椅子は足が一本折れてるんだよぉ。気をつけて座ってよ。」
言ってた気がするが、コムギにはそんなの聞ける余裕がなかった。バランスをとりながら座り、もう一度ベッドに向かって話しかける。
「ベッドさん。パパとママにあえないってなんで?」
コムギは単刀直入に話を切り出す。
「そうだねぇ。まず、パパとママが会えない理由は、ここが夢だからなんだ。」
「ゆめ?」
ほら。やっぱり夢じゃん。
コムギは、自分の考えが合ってたことに少しだけ喜んだ。
「けど、普通の夢とはちょっと違う。君が見てる夢は僕達のいる世界。通称、"夜の世界"さ。」
「よるのせかい?」
どういうこと?普通の夜とは何が違うの?
「そう、夜の世界。君達が生きてる世界は人や道具が働き、見られて、輝いてる"昼の世界"。ここは、昼の世界で使われなくなって忘れられた、つまり"死んだ"道具や人間達が成仏されずに来る世界。それで、"夜の世界"なのさ。」
「テンゴクとかジゴクとかとちがうの?」
パパとママから聞いた死後の世界とは違う。
そのことに、コムギは少し疑問だった。
「君のいう通り、どんな物も普通は死んだらそこに行く。けど、ここはその世界と昼の世界と真ん中の世界なんだ。死んだけど死んでる事を認められない、やり残した事があると、死後の世界と昼の世界に同時に引っ張られてここに来て"怪"になるんだよ。」
「ふーん。」
聞いといてなんだが、6歳のコムギにはあまり理解できなかった。
「じゃぁ、なんであたしはここにいるの?もしかして死んじゃったの?」
しかし、ここは死後の世界の類だという事だけは理解できた。
それでは、普通に生きてるコムギが来るのはおかしいのだ。
「いや、大丈夫。君は生きてるよ。君は僕達の世界に干渉できる"夢"を見る事が出来るんだ。どうやら君は、一際霊感が強いらしいからそのせいだね。」
つまり自分はただ寝ているだけなんだと、コムギは少し安心した。
「イヤー、ひっさしぶりに人間の気配を感じてさぁ、鐘を鳴らして正解だったよー。」
「だれかきたことあるの?あのゴーンはベッドさんがやってたの?」
急に馴れ馴れしく話しかけてくるベッドに、コムギはまた問いかける。
「ん?まぁ一人ね。君と同じく霊感が強い人間だった。どうやら、近くの車道で寝て夢でこの世界に干渉した。君と同じようにこの館に呼んだけど、よっぽど眠かったのかこの館で寝てしまった。」
「ここでねちゃうとどうなるの?」
そういえば、さっき寝ちゃダメだって言って気がする。
そのことについて聞いてみたくなった。
「ここで寝た場合、見る夢は本当の死後の世界なのさ。天国か地獄か分からないけど、そこに行ってしまったら生きていても戻ることが出来なくなるんだ。因みにゴーンはそこのヒモを引っ張ってやった。」
通りで、必死になって眠らないようにしたんだ。
「ふぅーん。ベッドさん、やさしいんだね。」
コムギは頷きながら、天井から垂れてる紐を引っ張った。
ゴーン!
同時にあの音はここから出てたんだと、内心の疑問も晴れた。
けど、どうしてここにあるんだろうとも思った。
「ベッドさん、どうすればおきれるの?ずっとこのままなの?」
いつまでもここにいるのは嫌だ。
なので、コムギはここから起きれる方法を聞いた。
「それについてなんだけど、まず、君がここに迷い込んだ原因は、君の霊感が僕達の未練のオーラに干渉したのが原因なんだよ。つまり、君が起きるには僕達の未練を晴らさなくちゃダメなんだ。」
「みれん?」
6歳なので、まだ知らない単語だった。
「未練って言うのは、やりたかった、出来なかった、悔しいと言う気持ち。言わばお願いさ。僕達が無意識にそのオーラを出して、君に解決してもらおうと君が起きるのを邪魔しちゃうんだよ。」
コムギはよく分からなかったが、このベッドが私に願いを叶えてほしいと言うのだけは分かった。
「けど、いまおはなしできるのはベッドさんだけだよ?」
ベッドは僕達とは言ってる。
しかし、どこからも声がしない。
このベッド以外に、誰の願いを聞けばいいのか分からない。
「他の怪の声は普段は聞こえるし、なんなら会話もしてるよ。けど、今は君がいる。君が未練を解決してくれるんだと、言い換えれば順番待ちをしているんだ。それで、他の怪の声は聞こえなくなっちゃったんだ。」
つまり、ベッドの未練を晴らせば次の怪の声を聞く事が出来ると言う事らしい。
「それじゃあ、ベッドさんのお願いを叶えてあげればいいの?どんなお願い?」
コムギはベッドの願いを聞いた。
早く起きるため、そしてここから出るために。
「いいけど、僕の願い?本当に、言っていいの?」
ベッドは恥ずかしがりながら、少し興奮気味に返した。
「いいよ!あたしができるならなんでもやる!」
さっきの泣いていた姿はどこへやら。まるで家事を手伝う子供のようだ。
「本当に、本当にい、いいのの?」
よほど興奮してるのか、ベッドの声が震えている。
「はやく言って!」
このベッド、流石にしつこい。
「じゃ、じゃあ言うよ、スーッ、ハーッ。ぼ、僕の願いは...。」
「ベッドさんの願いは...?」
さあ、どんな願いなんだろう。コムギはワクワクした。
「せ、洗濯、しして欲しい...。」
「ふぇ...?」
え?今なんて言った?
「お洗濯!して欲しい!」
どんなお願いが来るんだろう。
そうワクワクしていたコムギだった。
「えっ?そんなこと?」
しかし、このベッドのお願いはコムギにとってあまりにも普通すぎた。
どうもハッピー氏です。
6歳児を表現するのが凄く難しいです。
あまり漢字を使わないようにして対処していますが、長くて読みにくい場所は仕方なく漢字を使っています。
また、そもそも読みにくい小説ではありますが、途中の夢の解説の部分が1番分かりづらくて読みにくいと思われます。
自分の実力ではあそこをうまく纏めるのは不可能だったので、批判でもいいので改善案など出していただけると幸いです。
とりあえずこの小説は1〜2ヶ月ほどで完結まで持っていくつもりですので、今後とも宜しくお願い致します。