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第63話 お見送り(2)

「き、機会があったら話すから。それより、ねぇねぇ。明日の土曜日って佐々木くんは暇?」


 西沢さんはあまりこの話はしたくないのかな?

 ちょっと強引な感じで話を変えた――ような気がした。


「僕は基本的に休みの日はいつも空いてるよ。テストも終わったところだから宿題以外はしないだろうし」

「だったら一緒に遊ばない? カラオケとか行こうよ」


「えーと、歌はあんまり得意じゃないんだけど、それでもいいなら」


 僕は音痴ってわけじゃないけど、特技なしを自称するだけあって歌うのも決して上手くはない。


「そんなの全然オッケーだよ~。わたしは佐々木くんと一緒に行きたいんだから」

「僕も西沢さんの歌を聞いてみたいかな。じゃあ時間はどうしようか?」


「うーんと、そうだね……お昼くらいから? 適当にモールをぶらぶらしてから、カラオケに行こっ♪」


「じゃあお昼の1時に駅前で待ち合わせでいい? いつも学校帰りにバイバイする南口の改札を出たところで」


「1時にいつものところね、りょうかーい。おめかししていくから楽しみにしててね♪」

「うん、楽しみにしてる」


「じゃあまた明日ね、佐々木くん」

「うん、また明日。バイバイ西沢さん」

「ばいば~い♪」


 手を振って西沢さんと別れた僕は、駅に向かうと電車に乗った。

 そして座席に座ったところで僕は「ふぅ……」と大きく息を吐く。


(西沢さんのご両親といきなり対面ってのはさすがに緊張したなぁ……)


 付き合ってる彼女の家に行って両親と食事会っていうのは、彼氏にとって考えられうる最も難易度が高いイベントじゃないだろうか?


 それでもご両親ともにとてもフレンドリーに話してくれたので、想像していたよりもはるかに緊張度合いは低かったわけだけど。


 その証拠に、僕はお肉をそれはもうガッツリと食べてしまっていた。

 いくら口の中でとろける最高級の松坂牛だったとはいえ、もしガチガチに緊張していたらあんなにガッツリは食べられなかったはずだ。

 そもそも僕は同世代男子と比べて食が細いほうだし。


「後はまぁぶっつけ本番ってのが良かったのかな」


 思い返せばそもそもの始まりであるラブレターにも名前がなくて、屋上でいきなり西沢さんに告白されたし。

 初デートもショッピングモールの入り口で偶然会って、そのままデートをしたし。


 西沢さんとはなんでか、こういう超ぶっつけ本番のイベントが多い気がする。


 おかげで心の準備をする必要がなかったし、あれこれ思い悩む時間もなくて済んだのだ。

 そう言う意味では余計なことを考えないで済んだから良かった気がするよね。


 僕は時間があればあるだけ考えすぎてしまって、結局いい考えも浮かばずにドツボにハマっちゃうタイプだから。


(でも別れ際の西沢さん、ちょっとだけ変だった気がしたな……)


 小学校の修学旅行について尋ねた時に、露骨に視線を外されてしまった。

 いつも僕の目を見て話してくる西沢さんだったから、僕はそのことが少しだけ気になっていた。


 周りが暗かったからはっきりとはわからなかったんだけど、少し顔が強張っていたような気もする。


(うーん。話の流れ的に、修学旅行で何か大きな失敗をしたからあんまり話したくなかったのかな?)


 もしそうだとしたら無理に聞き出すのは良くないよね。

 西沢さんが嫌がることを敢えてする必要なんてないのだから。


 そんな風に考えた僕は、だからこのことについてはもう考えないようにしたのだった。


「明日のカラオケ楽しみだなぁ。それと松坂牛のステーキ、ほんと美味しかったなぁ……」


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