Chapter.93
蒼和くんを駅まで送って家に戻ったらおねーちゃんたちが帰ってきていた。
蒼和くんと入れ違いになったことを話すと、おねーちゃんだけじゃなくてパパもママも残念がっていた。
今度ちゃんと紹介するねって約束して、部屋に戻る。
ふぅ、と息を吐いて、やっと落ち着きを取り戻す。机に戻されたルーズリーフの中身が気になって、そっとページを開いてみた。
私が書いたチェックシート、その次のページに、蒼和くんの字が書かれていた。
【□50個全部達成! おめでとー!】
こんなこと、書いてくれてたんだ……。
嬉しくて、微笑ましくてふふっと笑う。
蒼和くんは、いつどんなときでも私を幸せにしてくれる。
私はそのページをそっと撫でて、いつか黒く塗れたらいいなって思いながらそっと閉じた。
ルーズリーフを元の場所に戻して、蒼和くんのお母さんからいただいた手土産を持って、リビングへ降りた。
* * *
去年の春休み、私は一人、憧れの“由上蒼和”さんを想ってチェックリストを作っていた。高校卒業までの間に、50個のうちいくつ達成できるかなってワクワクしながら。
それから一年後、私は蒼和くんと一緒に一年前とは違うワクワクを感じながら、春休み中に少し遠出をしてデートする日のしおりを作っていた。
日帰り旅行みたいになったそのデートはしおりの内容通りには行かなかったけど、それもまた楽しくて、一緒にいる間も家に帰ったあとも、ずっと笑顔でいられた。
そんな風にして二人の日々が過ぎていく。それが永遠なのか、一瞬なのか、いまはまだわからない。できれば永遠……だといいな、って思いながら、私は蒼和くんと一緒の時間を過ごす。
ネットであの記事を見つけていなかったら、チェックリストを作っていなかったら、きっと私はずっと物怖じしたまま、憧れの“由上さん”と仲良くなるどころか近づくことさえできなかったと思う。
チェックリストなんて作らなければよかったって思ったときもあったけど、いまではあのときの自分に感謝してる。
ルーズリーフは机の上に飾られた宝物たちと一緒に、これからもずっと大切にしていくだろう。
* * *
春休みが終わって、私は蒼和くんと一緒に電車に乗って学校へ向かった。
この先、高校を卒業して別々の路を歩むことになっても、二人の関係がいままでみたいに続けばいい。
そう願いながら、今年も桜並木の中を通る。
一年のときはただ憧れて見つめていただけだったピンク色の髪の同級生が、いまは茶髪の彼氏になって隣にいてくれる。なにかの奇跡のように思えるこの状況に、心の底から感謝した。
「お、また一緒だ」
「わ、ほんとだ」
クラス分け発表の看板を確認し、顔を見合わせて喜んだ。
「これからもよろしくね、光依那」
「こちらこそ、よろしくお願いします、蒼和くん」
二人で頭を下げて、三年生用のシューズボックスが置かれている玄関に向かった。高校生活最後の一年も、今まで以上に充実させようねって誓い合いながら――。
end




