LV248 見た事のない景色
「これはなんだ?」
ベンが驚くのは無理はない。ベンが以前にここを訪れた際には、確かに光り輝く湖が目の前にあった。だが今、目の前に広がる光景は明らかにそれとは違っていた。
「これは湖なのか?」
皆が困惑するのは当然である。かつて湖があった一帯には怪しい雰囲気漂う見た事もない木の根で覆い尽くされていた。さらに湖の中央付近には何本もの木がうねり重なり合った巨大な一本の木が聳え立っている。
「これの全てがあの木の根?」
「それより、あの木の大きさだ。普通にあの大きさの木が育つまで普通は千年以上はかかるぞ!」
「あんな木……俺も見た事がない」
ベンも知らない木。誰もがそれに驚愕する。
「とりあえず、行ってみましょう」
調査隊は湖に張った根の上を歩き、湖の中心に生えた巨木を目指した。
「木の先端が見えない」
「しかしながら見事なきですの」
皆は近付くにつれその木の途方もない大きさに気付く。
「アレはなんだ?」
シロクが木の根元の方を指を差す。
「魔物? アレって魔物よね?」
と、サリエルが言う。
ここで、調査隊が歩みを止める。巨木まであと200m程と言ったところであろうか。不思議な動きをする生物達を発見したからである。
他の者より視力の良いベレッタとドレンが、いち早くその生物を視認する。その生物は人間と同じく二足歩行で二本腕。頭や体は全て木でできている。一枚板で形成されたような顔には掘ったような目と口があり、耳と鼻はついてなくのっぺりとした顔だ。童のような体格で身長は100㎝に満たないくらいの大きさである。
すぐさまドレンはスキルを発動する。
「スキャンLV7」
ジョボネゴッダ(弟)
LV ――
HP 100
腕力 ――
魔力 ――
守備 ――
素早さ ――
スキル ――
魔法 ――
ドレンは大きく動揺した。ドレンのスキャンスキルは成長し、今やLV7まで達している。これはあらゆる生物の基礎能力を全て盗み見できるスキルである。ベンのスキャンLVですらLV5であり、ドレンには敵わない。ドレンはこれを買われ調査隊に抜擢されたと言っても過言ではない。それほどにスキャンLV7は貴重スキルである。
「ジョボネゴッダ(弟)……あとHP100以外は全て謎? こんな事は今までなかったぞ」
そんな中、ミルミルは小刻みに震えていた。
「大丈夫ですか? ミルミル様」
「どうしたんだよ突然」
ヨルヨルとシロクがミルミルに歩み寄る。
「厄災……厄災がもう始まろうとしている」
皆が一斉にミルミルに視線を集めた。
「厄災……奴らが」
ジョボネゴッダは全部で5匹。円を描くように楽しく踊るその中心には、さらにひと回り大きなジョボネゴッダが存在していた。そのジョボネゴッダは岩に座し、俯きぼーっとしている。ドレンはさらにスキャンLV7を発動し中心に座すジョボネゴッダの能力を確認する。
ジョボネゴッダ(兄)
LV ――
HP 200
腕力 ――
魔力 ――
守備 ――
素早さ ――
スキル ――
魔法 ――
「なんなんだよ。コイツ等」
またもドレンは、HPしかスキャンできない。
「厄災かなんだか知らぬが、我がぶっ飛ばしてやるのだ」
「待て、ベレッタ!」
ベレッタはドレンの静止を聞かず、羽を広げると猛スピードでジョボネゴッダに突っ込んでいった。
「HP100など雑魚ではないか。恐れる事はあるまい」
ピエロは言うが、ベンとドレンの顔は冴えない。
ベレッタはあっという間に距離を詰め、ジョボネゴッダに頭上から声を掛ける。
「我は魔王ベレッタ。ジョボネゴッダとやら勝負なのだ!」
ジョボネゴッダ(弟)達は、一瞬立ち止まりベレッタを見上げたが、全く興味を示さず再度踊りだした。




