⭕ 【 ベアリーチェの誕生日パーティー 】 パーティー会場 5 / さぁ、ダンスの時間だ 1
ベアリーチェ
「( 話してると、あっと言う間だな。
教えてくれて有り難な、セフィ。
急いで戻るよ! )
──クルチェ,クレル,パム……ワタクシ、お色直しへ行きますわ〜~ 」
従姉:クルチェール
「 えっ?
お色直し?
もうそんな時間かよ?
早いなぁ 」
従姉:クレリエンヌ
「 最後のお色直しでしたわね〜。
楽しみですわ〜♥ 」
再従妹:パムミメーラ
「 ……ベリィはどんなドレスを着ても似合う…。
……絶対に可愛い…(////)」
ベアリーチェ
「 有り難う御座いますわ〜~(////)
行って来ますわ〜〜 」
クルチェ,クレル,パムに手を振ると、オレは転ばないように注意しながら、ドルシーの元へ向かった。
3度目のお色直しを終えてパーティー会場へ戻ると、ダンスが始まろうとしているところだった。
ダンス…。
お披露目ダンス……。
忘れてたぁぁぁぁぁああああああっ!!!!
そう言えば、オレの誕生日を祝う為に勝手に開かれた誕生日パーティーなのに、何故だか祝われる側のオレが人前でダンスを披露しないといけない悪習があったんだっけぇ!!
デビュタント……だっけ??
招待に応じて出席してくれた親族,親類,親戚──一族への御礼も兼ねたダンス……。
盛大なパーティーを開いて人を招待しないで、身内だけでパーティーしてくれていいのに、貴族社会って何で一々豪勢なパーティーを開きたがるんだよ?
この悪習もお貴族様の道楽かよ…。
こんな大勢に囲まれた中で注目を浴びながら踊りたくねぇぇぇぇええええええっ!!!!
視線が恐怖いよ!!
特に野郎共のオレを上から下まで舐め回すような厭らしい視線が恐怖過ぎるぅぅぅううううう!!!!
初めて出来た友達にもオレのダンスを見られるんだぞ!
こんな大勢の前で失敗したら…………大恥を掻いて、シュケルハン侯爵家の名前に泥を塗る事になり兼ねない!!
オレ……立ち直れなくて、そのまま引きこもりのニートになっちまうよぉぉぉおおおおっ!!!!
ピンチなオレは一体どうしたらいいんだよぉぉぉおおおお!!!!
オレの顔は笑っているけど、心の中では両手で髪を掻き毟っていた。
誰かオレを助けてくれ────。
ベアリーチェ
「( ──セフィ、どうしよう…。
オレ…こんな大勢の居る人前でダンスなんて踊れないよ…!!
折角、友達も出来たのに──。
友達の前で不様な格好を晒して恥なんて掻いたら、どんな顔して会えば……。
いや…もう2度と会えないかも……。
そんなの嫌だよ…。
オレがダンスで失敗して笑い者になったら、シュケルハン侯爵家まで貴族界で笑い者になる!!
身内が…家族が……オレなんかの所為で……大恥を掻いて迷惑を掛けちゃうよ……。
セフィ──、オレはどうしたらいいんだ??
どうしたらダンスを失敗しないで最後までちゃんと踊れるんだ?? )」
セフィ
『 そんな事です?
ワタシのベリィ、ワタシに任せてください 』
ベアリーチェ
「( セフィ?
何とか出来るのか?? )」
セフィ
『 実体化したワタシとダンスを踊れば良いです 』
ベアリーチェ
「( えっ…??
セフィ……ダンスを踊れるのか?? )」
セフィ
『 ふふふ。
踊れます。
待っていてください 』
ベアリーチェ
「( う、うん……。
分かったよ。
セフィを待ってるよ )」
オレはダンスを踊り易いドレスを着ている。
まさにダンスを踊る為に考えられた上品で可愛いドレス…。
オレはドルシーと一緒に立っていた。
暫くすると、まるで十戒のように人が道を開け出した。
会場がザワザワとざわめき出したかと思うと、会場に居る全員の視線を釘付けにしている人物が現れた。
その人物は颯爽と歩いている。
一目見て、実体化してくれたセフィだって事が分かった。
オレより頭1つ分ぐらい背の高いセフィの周りには、キラキラした光が幾つか浮いている。
妖精さんだ。
雪のように真っ白い髪を靡かせながら、オレに向かって上品に歩いて来る。
セフィ
「 ──御初に御目に掛かります。
僕はタシィルドレテク・セロッタと申します。
ベアリーチェ様、どうか1曲、僕のお相手をお願い致します 」
ベアリーチェ
「 ──喜んでお受け致しますわ〜〜 」
オレは迷わずセフィの手を取った。
目の前のセフィはまるで何処ぞの王子様っぽく見える。
セフィのエスコートは完璧だった。
全ての所作が人間離れしているみたいに美しくて、オレとセフィを取り囲んで見ている大人達が、セフィに見惚れているのが分かる。
本来ならばオレに向けられる筈の視線も全部、セフィに向けられている。
優雅で華麗な一切の無駄の無い洗礼された動きに、会場内の誰もが釘付けになっていた。
セフィが視線を独り占めしてくれて、マジで助かるよ!!
ベアリーチェ
「{ ──凄いな、セフィ!
皆がセフィに注目してるよ!!
視線が釘付けだな }」
セフィ:タシィルドレテク
「{ ベリィが緊張しないように、ワタシを5割増しに見せてますからね。
周りに浮いている妖精の力です }」
ベアリーチェ
「{ 妖精さんって凄いんだな! }」
セフィ:タシィルドレテク
「{ ワタシのベリィ、肩の力を抜いて、身体をワタシに委ねてください。
ダンスは妖精がフォローしてくれます。
始めましょう }」
ベアリーチェ
「{ おう!
頼むよ、オレのセフィ!! }」
セフィ:タシィルドレテク
「{ ワタシのベリィ、君の望むままに── }」
会場に音楽が流れ始めた。
オレはセフィとダンスを踊る。
オレは苦手なダンスをちゃんと踊れていた。
どうやって動いていいのか全然分からないけど、妖精さんがフォローしてくれているのか、自然と手足が動いてくれている。
妖精さん、マジでパネぇぇぇええええ!!
妖精さんの力って、マジで凄いな!!
リズミカルなステップもターンも、どんと来いだぜ!!
オレ自身の力で踊ってるわけじゃないけど、ダンスって楽しいんだな!
セフィとなら疲れ知らずのまま何時間でも踊っていられる!!
曲が終わってしまった。
楽しいダンスの時間は終わったんだな…。
ベアリーチェ
「{ セフィ… }」
名残惜しかった。
このままセフィの手を離してしまうのは、嫌だな…。