✒ 【 阻止された暗殺 】 客室 2
じぃさんめ、オレが話さなくても事情を知ってるくせに!
何で態々オレの口から言わせたいんだか。
ライエルに自覚させる為か?
まぁ、いいや。
聞かれたからには答えないといけないよな。
オレは老執事と話した内容を包み隠さず話す事にした。
その前に、お祖父様とセフィの打ち合いを見ている最中に、いきなりライエルから突き飛ばされた事も忘れずに話しておく。
これでライエルが何故、いきなりオレを突き飛ばさないといけなかったのか──理由をライエル自身の口から聞ける筈だ。
まぁ、大体の事情は分かっているんだけどな。
オレもじぃさんと似てるなぁ。
オレが知っている事は話終えた。
紅茶菓子に出されているクッキーを摘まんで口に入れる。
ティーカップに注がれた紅茶を飲んで、口の中を潤した。
ベアリーチェ
「 ──ワタクシの知っている事は、これで全てですわ〜〜 」
ほっこりした笑顔をじぃさんに向けて微笑む。
じぃさんはまるで自分が知っている情報とオレの話した内容を擦り合わせているかのように聞いていた──ように思う。
実際にどうかは知らんけどな。
お祖父様:ステイン
「 成る程な…。
──して、ライムエント王子殿下よ。
貴殿が何故、ワシの可愛い孫娘を地面へ突き飛ばさなければならなかったのか──、詳しい事情を聞いてもよいですかの? 」
婚約者:ライエムント
「 ………………お話します 」
ライエルは戸惑いながらも、覚悟を決めたように頷いた。
オレは左手をライエルの右手の上に重ねた。
ライエルはチラリとオレの顔を見る。
だからオレは、ライエルに対してニコリ──と笑顔を向けた。
ホッとしたのか、ライエルもオレに柔らかい笑顔を向けてくれた。
オレの中身が男じゃなかったら、オレはライエルに惚れていただろうか。
うん、分からん。
ライエルは自分が体験した事を包み隠さず話始めた。
オレの知らないライエル視点の話だ。
護衛騎士に剣術の稽古を受けていただけの事はあるのだろう。
ライエルは “ 何か ” を察知し、違和感を覚えたらしい。
「 ヒュッ── 」と言う風が切られた音が聞こえたのが、ライエルの命を救う事になったらしい。
此処でライエルが「 ヒュッ── 」と言う不可解な音に気付かなければ、ライエルは老執事の剣を避けきれず、心臓に剣が突き刺さっていた──との事だ。
オレを突き飛ばしたのはやり過ぎだと後から思ったらしいが、その時は無我夢中だったらしい。
何せライエルの視界に入ったのは、首を跳ねられて胴体だけになった身体が地面に倒れていて、大量の血で地面を汚していたからだ。
何が起きたのかライエルにも把握は出来なかったようだが、良くない事が起きた事は理解出来たらしい。
兎に角オレを此処から逃がさないといけないと強く感じたらしく、婚約者である自分を盾にしてオレを何とか護衛騎士の元へ走らせようと思ったらしい。
オレを突き飛ばしたのは、やり過ぎだったと後悔しながら──、剣を構える老執事と対峙していたそうだ。
ライエルの表情は辛そうだった。
声を絞り出すように話すライエルの声は震えるている。
老執事の失礼極まりない発言にキレたオレが、ライエルを後ろへ下がらせて、オレが直に老執事と対峙して話始めた事も正直に話しやがった。
ライエルめ──っ!!
其処は馬鹿正直に話さなくてもいいんだ!
少しはオレの身になってくれよ…。
老執事と話終えて、オレがライエルへ振り返ったのを見逃さなかった老執事は剣をオレの頭へ目掛けて降り下ろしたらしい。
その瞬間、剣が地面に落ちる前にオレの背後で大量の血が飛び散ったらしい。
何が起きたのかライエルにも分からなかったらしく、老執事の身体が “ 何か ” がぶつかったように消えて行くのが見えたそうだ。
風は吹いていなかったらしい。
声を発する前に、老執事の姿が消えてしまい、ライエル自身も何が起きて、どうなってしまったのか分からなかったんだとか。
ただライエルに分かっていたのは、飛び散っている大量の血と、老執事が愛用していた剣が血溜まりの中に落ちている事ぐらいだったとか。
8年間、共に過ごして来た老執事が何故、自分に剣先を向けて殺そうとして来たのか──、ライエルには分からなかった。
だけど、オレと老執事の会話を聞いて、ライエルは────。
信じたくないと──、これは悪い夢なのだと──、自分は悪夢を見ているだけだと──、起きたらベッドの中に居て、老執事が何時もみたいに起こしてくれるんだと──、老執事が目の前で死んでしまった事を認めたくなくて、信じたくなくて……そう思い込もうとしていそうだ。
此処に来なければ、老執事は死なずに済んだし、オレだって序でに命を狙われる事はなかっただろう。
ライエルの殺害は何処か別の場所で行われたかも知れない。
老執事にライエルが殺害される日が来る迄は、ライエルは老執事と偽りだらけの楽しい日々を過ごせていたかも知れない。
それはそれでどうなんだろうな…。
ライエルは悲運な星の下に生まれた王子なのかも知れない。
それと婚約破棄は別問題だけどな!
ライエルも知っている内容を話終えた。
ベアリーチェ
「 ライエル様〜〜 」
オレはライエルの名前を呼んで、ライエルの右手をギュッと握ってあげた。
話終えれたライエルは少しだけ顔色が戻ったように見えた。
お祖父様:ステイン
「 ──成る程な…。
セフィがワシ宛に送ってくれた報告書と類似しているな。
馬鹿弟子めが…。
選りに選って王子殿下の殺害に手を貸すとは…情けない…… 」
セフィ:セフィロート
「 正気を失っていたのかも知れませんよ 」