♥ 応接室 2
──って言うか…抑、ステイン・エンディミンなんて知らないしな!
“ 殺人剣 ” なんて言う物騒な言葉が、お母様の口から出て来るなんて思いもしなかったよ…。
殺人剣……人を殺す剣術って事だよな?
コッワ!!
ま、まぁ…剣なんてもんは凶器だからな。
人が人を殺す為に作られたような武器だもんなぁ…。
だけど、護身剣ってのは気になるかも…。
身を守る為の剣術かぁ…。
お母様がマスターしている護身剣を見てみたいなぁ。
お願いしたら見せてくれるかな??
それにしたって…魔物が出るなんて、とんでもない世界じゃないかよ。
人間が受ける脅威ってのは、精霊や妖精からのとばっちりだけじゃなかったんだな。
──あ…でも、無下に命を奪い過ぎると悪徳が加算されて、一定値を超えると魔物化するって、セフィが言ってたよな…。
もしかして、元人間だった魔物に襲われたりするって事なのかな??
ベアリーチェ
「 お父様〜〜、人間を襲う魔物は魔物化した元人間ですの〜〜? 」
お父様:ディアスト
「 ベアリーチェ!
何処でそんな事を知ったんだ?! 」
ベアリーチェ
「 セフィが歴史の勉強の中で教えてくれましたわ〜〜 」
お父様:ディアスト
「 歴史の勉強中に…。
そうか…。
それなら致し方無いな… 」
──致し方無いんかい!
お父様:ディアスト
「 …………魔物にも種類があってな。
魔物について詳しい事が知りたいならセフィロートに教えてもらいなさい。
人間より亜人類の方が魔物には詳しいからな 」
ベアリーチェ
「 分かりましたわ〜〜 」
そうなのか?
人間はあんまり魔物に対して詳しくないんだ…。
何か、以外だなぁ…。
お父様:ディアスト
「 確かに出現する魔物の中には元人間だった魔物も入っている。
元からの魔物は、魔素が噴き出ている場所から生まれる。
“ 生まれる ” と言うのは語弊になるかな。
濃い魔素が地面から噴き出している場所は、魔物が生息している≪ 魔界 ≫と呼ばれる世界と繋がるらしい。
≪ 魔界 ≫に生息する魔物が魔素を道として地上に出て来るそうだ。
その為、通り道となる地面から噴き出している魔素を弱める為に〈 セレネイ 〉が居る 」
ベアリーチェ
「 セレネイ…ですの〜〜? 」
お父様:ディアスト
「 あぁ。
〈 セレネイ 〉がマーナを使い、濃い魔素を薄い魔素へ弱めると≪ 魔界 ≫に生息していた魔物を騎士達でも倒す事が出来るようになる 」
ベアリーチェ
「 〈 セレネイ 〉は伝承に出て来る聖女様みたいですわ〜〜 」
お母様:レナフォード
「 〈 セレネイ 〉は聖女様のように魔素の浄化は出来ないのよ 」
ベアリーチェ
「 浄化…ですの〜〜? 」
お母様:レナフォード
「 そうよ。
〈 セレネイ 〉はマーナを使って、魔素を薄めて弱める事しか出来ないの。
地面から噴き出る魔素を消す事は出来ないわ。
聖女様はマーナを使って、魔素を浄化する事が出来るの。
魔素が噴き出している地面を浄化すると、魔素が消えて、地面の割れ目も綺麗に消えてしまうのよ。
≪ 魔界 ≫で生息していた魔物なら浄化する事が出来るの 」
ベアリーチェ
「 元人間の魔物の浄化は出来ませんの〜〜? 」
お父様:ディアスト
「 魔物化した元人間は浄化する事は出来ないそうだ 」
ベアリーチェ
「 倒せませんの〜〜? 」
お父様:ディアスト
「 いや、魔物化した元人間は倒せる。
魔素を薄めて弱める必要もない 」
ベアリーチェ
「 王子殿下が道中に魔物に襲われたとしても、魔物化した元人間なら倒せますのね〜〜。
安心しましたわ〜〜。
護衛騎士の中には〈 セレネイ 〉も居ますの〜〜? 」
お母様:レナフォード
「 勿論、居ますよ。
魔物を弱らせる事が出来るのは〈 セレネイ 〉だけですからね。
王族には多くの〈 セレネイ 〉が居るから、王子殿下が出掛ける時には必ず同行される事になっているの 」
お父様:ディアスト
「 地面から噴き出る魔素は定期的に〈 セレネイ 〉が薄めて弱めているから、≪ 魔界 ≫と繋がる心配はない。
≪ 魔界 ≫に生息している魔物が出現する事は早々ない。
魔物よりも怪物の出現が心配だな 」
ベアリーチェ
「 怪物ですの〜〜?
危険が一杯ですのね〜〜 」
お母様:レナフォード
「 王子殿下が訪問してくださるのは、ベアリーチェの身を案じてくださっているからなの。
シュケルハン家には〈 セレネイ 〉が居ないから、王族へ派遣の申請をしないといけないから、大変なのよ 」
ベアリーチェ
「 どうしてシュケルハン家には〈 セレネイ 〉が居ませんの〜〜 」
お父様:ディアスト
「 公爵,大公の爵位にならないと〈 セレネイ 〉を領地へ迎える事は出来ない決まりだからな。
こればかりは仕方無いんだ 」
ベアリーチェ
「 お父様〜〜、どうしたら侯爵から公爵へ上がれますの〜〜? 」
お父様:ディアスト
「 うん?
爵位を上げる方法か?
手柄を上げて忠誠心を示す事だな 」
ベアリーチェ
「 手柄と忠誠心…ですの〜〜? 」
お父様:ディアスト
「 私には無理だが、ツァイベルが手柄を上げ、王国へ忠誠心を示せば、爵位を上げて戴く事が出来るだろう。
ベアリーチェは爵位を上げてほしいのか? 」
ベアリーチェ
「 シュケルハン領に〈 セレネイ 〉を迎える事が出来れば、王族へ〈 セレネイ 〉の派遣を申請しなくて良くなるのでしょう〜〜 」
お父様:ディアスト
「 ハッハッハッハッ!
そうだな。
ベアリーチェは未々子供だな!
安心したよ 」
ベアリーチェ
「 安心ですの〜〜? 」
お母様:レナフォード
「 ふふふ(////)
爵位を上げるかどうかは、次期領主になるツァイベルに任せましょうね 」
ベアリーチェ
「 そうですわね〜〜。
早くツァイベルお兄様にお会いしたいですわ〜〜 」
お母様:レナフォード
「 バルデロンド王立学院を卒業した後は、1年間の留学をする事が決まっているから当分会えないわね 」
ベアリーチェ
「 留学…ですの〜〜?
ツァイベルお兄様は凄いですわ〜〜 」
お母様:レナフォード
「 隣国の≪ アグトウェル王国 ≫へ留学するのよ。
交換留学生に選ばれる程、ツァイベルは優秀で有能なのよ。
他にも何名か留学するそうよ 」
ベアリーチェ
「 ツァイベルお兄様から≪ アグトウェル王国 ≫の話を聞きたいですわ〜〜 」
お父様:ディアスト
「 学院を卒業したら一旦実家へ帰って来る予定だ。
留学する為の準備をする必要があるからな。
交換留学は卒業してから翌々月から始まる。
ツァイベルと話せる時間もあるだろう 」
ベアリーチェ
「 嬉しいですわ〜〜。
待ち遠しいですわ〜〜 」