♥ ベアリーチェの自室 6
オレはクルチェの字を見て改めて思い知らされたよ!!
有り難な、クルチェ!
オレは必ず汚文字を脱却するぞ!!
流石に美文字を書くのは難しいけど、子供らしくて誰にでも読める字を書けるように心掛けようと思う。
有り難う、気付かせてくれて!!
クルチェは今日から心の友──、心友だ!!
読ませてもらった3通の手紙に書かれている内容は、大体が似たような事だった。
封筒に同封されていたのは、折り畳まれた布だ。
広げてみると、一般的なハンカチぐらいの大きさかな?
どの布にも魔法陣が描かれている。
魔法陣の真ん中には文字が書かれていて、どうやら送り先を書いてくれているみたいだ。
1枚目には【 マルチフォント公爵家 クルチェール・マチルフォント 】と書かれている。
2枚目には【 ローゼルグイン公爵家 クレリエンヌ・ローゼルグイン 】と書かれていて、3枚目には【 アンベート伯爵家 パムミメーラ・アンベート 】と書かれている。
どの封筒にも送り先の書かれていてない布が1枚ずつ入れられていた。
魔法陣の真ん中にオレの名前を書いて、転送陣で送り返せばいいんだな?
布には取り扱い説明書というより、注意事項が書かれた薄っぺらい紙が同封されている。
詳しい取り扱い説明書、ないんかい!!
オレは注意事項の紙を手に取ると読んでみる事にした。
ベアリーチェ
「 ──えぇと、何々……この転送陣は、お手軽に文通を楽しむ為に改良された転送陣です。
魔法陣から、はみ出る物は転送が出来ません。
魔法陣が赤色に変化する物は転送が出来ません。
魔法陣の真ん中に名前を書いたら、魔法陣へマーナを注いでください。
〈 ノマ 〉の方は〈 マナ 〉の方にマーナを注いでもらってください。
魔法陣が緑色に変われば使用が出来ます。
重量制限を守り、決まりを守り、悪用しないように活用しましょう。
……………… “ 悪用しないように ” って事はだ、悪用する奴が居るって事かよ? 」
セフィ:セフィロート
「 そうでしょうね。
自己管理にも限界があります。
妖精に預けておけば、無くす心配も誰かに悪用される心配もないです 」
ベアリーチェ
「 そうだな!
大事な物は妖精さんに預かってもらうのが1番だもんな。
──名前を書いてからマーナを注ぐんだよな?
〈 マナ 〉って言えば、ドルシーなんだけど、また呼ぶのも何か悪いよなぁ…… 」
セフィ:セフィロート
「 ワタシがします。
ベリィが転送陣を持っている事を知る者は少ない方が良いです 」
ベアリーチェ
「 そうなのか?
──じゃあ、転送陣はセフィに任せるな。
オレは3人に御礼の返事を書くよ。
転送陣も送り返さないといけないしな 」
セフィにレターセットを出してもらったオレは、手紙をくれたクルチェ,クレル,パムに返事の手紙を書く事にした。
先ずは封筒の表に送り先の名前を書いて、封筒の裏にはオレの名前と書いた。
序でに日付も書いておく。
次は中身を考えないといけない。
セフィが用意してくれた下書き用の便箋を前にして内容を考える。
先ずは当たり障りのない挨拶文を書いた。
誕生日パーティーに出席してくれた御礼と、転送陣を用意してくれた御礼と、これからも友達として末長く宜しくね〜んってな気持ちを込めて書いてみた。
1人ずつ違う内容も書いてみる。
そう言えば、前世では手紙らしい手紙なんて書いた事なかった。
今のオレが手紙を書けるのは、セフィが用意してくれた文通参考帳なる物を見本にしているお蔭だ。
これがないと、現代人だったオレは、オレとしてまともな手紙が書けない。
女の子と文通する日が来ようとは思いもしなかったよ。
手紙を書くのは面倒だけど、ちょっとだけ心が踊ってる。
ふへへ(////)
オレの思いとしては、天気の良い日に4人でピクニックをしたり、近場に遊びに行ったりしてみたい事を書いてみた。
今日の午後には専属執事が来た事も書き加えといた。
書き終えたら清書する前に必ずセフィに確認してもらう。
誤字,脱字があると恥ずかしい事になるからだ。
いきなり書いて失敗すると、便箋が勿体無いから一発書きは恐くて出来ない。
そう思うと、一発書きしたんだろうクルチェは凄い子だと思う。
字はズギャギャギャギャフンだけどな!
クルチェにはセフィお手製の書き方練習帳を一緒に送りたいと思うんだけど、余計なお世話だろうか…。
セフィに聞いてみよう。
ベアリーチェ
「 ──セフィ、どうかな?
訂正する所はあるか? 」
セフィ:セフィロート
「 とても頑張りましたね、ベリィ。
赤ペンで訂正しました 」
ベアリーチェ
「 有り難な 」
セフィが直してくれた練習用の便箋を受け取ったオレは、何れぐらい直されているのか確認してみた。
まるで赤ペン先生だな…。
真っ赤ではないものの…………赤いよ!!
何でこんなに赤ペンで直されないといけないんだよ!
滅入るぅ〜〜〜。
ベアリーチェ
「 …………なぁ、ちょっと多くないか?
もう少しさぁ、手加減してくれないの? 」
セフィ:セフィロート
「 手加減です?
便箋が真っ赤になりますけど良いです? 」
ベアリーチェ
「 それは手加減とは言わないだろ!!
鬼ぃ!! 」
セフィ:セフィロート
「 ベリィは恥を掻きたいです? 」
ベアリーチェ
「 …………掻きたくないです。
今夜、手紙を書くのは止める!!
こんなの見せられて書く気なんて起きないよ!! 」
セフィ:セフィロート
「 ワタシが清書の見本を用意しときます。
明日は見本を見ながら清書してください 」
ベアリーチェ
「 セフィ〜〜〜(////)
有り難な!
清書の見本があれば百人力だよ!
──なぁ、セフィ。
セフィがオレの為に用意してくれた書き方練習帳をクルチェにも渡したいと思うんだけど、どうかな? 」
セフィ:セフィロート
「 1通目で相手に送るのは失礼ではないです?
書き方練習帳の事を内容に追加してはどうです 」
ベアリーチェ
「 ……そうだな。
うん…じゃあ、それで!
なんて書いたらいいかな?? 」
セフィ:セフィロート
「 正直に書かない方が良いです。
“ 親しき仲にも礼儀あり ” と言いますし、オブラートに包むと良いです 」
ベアリーチェ
「 “ オブラートに包む ” って言われてもだな…。
女の子だろ。
どうやって包んだら良いか分からないよ…。
相手が男だったらなぁ…。
態々気遣う必要ないのにな …… 」