⭕ 【 オレは、ベアリーチェ・シュケルハン 】 ベアリーチェの自室 2
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『 ワタシのベリィ──。
ドレス選びをドルシーに任せて良いです? 』
ベアリーチェ
「( いいんだよ、セフィ。
オレはドレスの事は、さっぱりだからな。
オレよりドレスに詳しいドルシーに任せる方が良いドレスを選んでくれるんじゃないかな。
一応、釘も刺しといたしな! )」
セフィ
『 そうです?
どんなドレスもベリィなら似合います 』
ベアリーチェ
「( 有り難な、セフィ。
オレもそう思うよ。
何たってベアリーチェは可憐で可愛いからな! )」
セフィ
『 お誕生日パーティー、楽しみですね 』
ベアリーチェ
「( そうだな。
どんな御馳走が食べれるのか楽しみだよ! )」
セフィ
『 ふふふ…。
ベリィが食いしん坊だと知れたら、皆即倒しますね 』
ベアリーチェ
「( ははは…。
笑えないなぁ… )」
オレに話し掛けて来たのは、オレの守護精霊をしてくれている虹属性を司る精霊だ。
“ セフィ ” はオレが付けた名前だ。
虹属性を司る精霊はセフィ以外にも存在しているらしいけど、セフィは特別な虹属性の精霊らしいんだ。
どうやらセフィは妖精を生み出す事が出来て、全属性の妖精を統べる妖精王でもあるらしい。
精霊王と肩を並べる程の最高位の精霊なんだとか。
セフィって凄いんだ……。
何でそんなに凄過ぎる妖精王のセフィがオレなんかの守護精霊をしてくれているのかと言うと──、どうやらセフィの前世に関係があるらしい。
セフィとオレは前世で出逢っていて、セフィ曰く濃密な関係だったらしい。
“ 濃密な関係 ” って言われると、ついつい如何わしくて厭らしい関係を想像してしまうけど、セフィとオレの関係はそれほど大した関係じゃない。
前世でセフィは犬だったらしい。
どうやら前世のオレが助けた犬らしい。
生憎とオレは覚えてないんだけど、セフィは鮮明に覚えているんだとか。
セフィは前世で飼い犬だったらしいけど、飼い主家族が引っ越しする事になったらしくて、捨てられたらしい。
どうやら引っ越し先では動物を飼えないらしくて、人間の身勝手な理由で捨てられたんだとか。
飼ってるペットを捨てるなんて犯罪だぞ!
もう、この時点で無責任な飼い主家族が許せない。
どうせなら、ペットも一緒に暮らせる引っ越し先を探せよな!!
ペットは家族じゃないのかよ!!
飼い主家族に捨てられてしまったセフィは、何とか匂いを辿って飼い主家族を探していたらしい。
セフィ…健気だなぁ…。
その道中でセフィは、数名の心無い男子学生達に目を付けられてしまったらしくて、追い駆け回された挙げ句、囲まれて理不尽で容赦ない暴行を受けたらしい。
袋叩きってヤツだな。
弱っている動物を囲って虐待するなんて、益々許せないんだけど!!
そいつ等は、どうやら受験生だったらしく、日頃の鬱憤やストレスを弱い動物を虐待する事で発散させていたらしい。
とんでもない学生達だ!!
親の顔が見てみたいもんだ!
意識が朦朧として今にも死にかけていたセフィは、どうやら当時失踪中だったオレに助けられたらしい。
最低でクズな悪魔のようなガキ共からセフィを助け出したオレは、傷付いたセフィに簡単な手当てをした後、動物病院へ向かって全力疾走したらしい。
ごめんな、セフィ……オレ、全然覚えてないよ…。
動物病院へ向かって走っている途中で、ストレス発散中の動物虐待を邪魔された男子学生達に見付かってしまったオレは、男子学生達に囲まれた挙げ句、鉄パイプで殴られて、激しい蹴る,殴るの暴行を受けたらしい。
前世のオレぇぇぇぇぇぇええええっ!!!!
暴行を受け続けている間、弱りきっているセフィをずっと抱きしめて、必死にセフィを庇い続けていたらしい。
男子学生達が居なくなった後、ボロボロな姿になったオレは、セフィを見捨てる事はしなくて、何とかセフィを動物病院へ運ぼうと傷付いた身体に鞭を打ちながら必死に歩いたらしい。
実際に鞭なんて持ってなかったと思うよ?
前世のオレは、鞭を振り回すような趣味なんてなかったと思いたい。
だけど、動物病院へ向かって歩いている最中に力尽きて、路上に倒れ込んだままピクリともしなくなったらしい。
前世のオレぇぇぇぇぇぇええええっ!!!!
オレの最後って、そんな死に方だったのぉぉぉおおおお!?
動かなくなったオレに抱き抱えられて、守られていた重傷のセフィは、息絶えるまでオレの傍を離れないで、降って来た激しい雨に打たれる中、意識が遠退いて死んでしまったらしい。
セフィ……。
前世では犬だったセフィが生まれ変わって、この世界で精霊として生を受けたらしい。
オレの霊魂を感じたセフィは、生まれ変わったオレを見付けて、ベアリーチェの守護精霊になったんだとか。
見ず知らずの小汚ない犬を身体を張って命懸けで助けて、命懸けで守って、最後まで庇い続けて、見捨てる事なく助けようと尽力した前世のオレに対して、セフィは恩義を感じているらしい。
受けた恩を返す為に、生涯を懸けてベアリーチェを守護すると決めたんだとか。
…………有り難い話ではあるけど、前世のオレは結局のところ、セフィを助けられなくて、挙げ句の果てには死なせてしまったわけだ。
恩義を感じる必要なんてないと思うんだけどな…。
精霊から直に人間が守護される事は異例中の異例な事で前代未聞な事らしくて、どうやらオレの知らない所で、かなりの有名人だったりするらしい。
なんか恐いなぁ…。
オレ、軍事利用とかされたりしないよな??
もう今から、かなりのガクブルだよ!!
──とまぁ、前世での諸々な事情があって、全属性を操れる虹属性の精霊で、妖精を生み出したり、全属性の妖精を統べる妖精王で、精霊王とも肩を並べる対等な精霊のセフィがオレの守護精霊をしてくれているわけだ。
有り難い上に、すんごいチートだよな、オレってばさ。
いや…オレがチートなわけじゃないか。
オレは素質持ちじゃないから、魔法を使う事は出来ないし、体術,武術の才もない。
今のオレは無力で、セフィに守護られないと生きていけないような、か弱い9歳の小娘でしかない。
侯爵家の令嬢だから、走り回って遊ぶなんて事も許されないし…。
外は天気が良くて遊ぶには、もって来い日和だ。
前世みたいに思いっきり身体を動かしたいなぁ。
ボールを蹴りながら走るぐらいなら、今のオレにでも出来ると思うんだよ。
肝心のボールが無いから蹴れないけどな。
ほんの少しの時間でもいいから、内緒でセフィに連れ出してもらいたい。
よし、今度、頼んでみよう!!