✒ 中庭 2
中庭から遠目に屋敷を見る。
空の上に、おぱぱい様──もとい魔女が居た。
魔女とワンセットになっている魔法のホウキの棒の部分に足を乗せて立っている。
魔女って魔法のホウキに股がって乗るんじゃないのか?
立ってて大丈夫なのか?
落ちたりしないのかな?
黒っぽいマントがバサバサと音を立てて風に靡いている。
マージョリナは片手に凝った杖を持っている。
あの杖から魔力の塊を出して、屋敷へ目掛けてブッ放したんだろう。
おっかな〜〜〜。
だけど、屋敷は何処も壊されてない所を見ると、セフィが生み出した妖精さんがマージョリナが放った魔力の塊を食べたのかも知れない。
マージョリナは器用にホウキの上にたったまま、杖を振り回して魔力の塊を出した。
マージョリナの周りには沢山の魔力の塊が現れている。
その魔力の塊は、容赦なく屋敷に向けて放たれるけど、1つも屋敷には当たらない。
屋敷から離れた場所に落ちた魔力の塊は、物凄い爆音を立てて地面を容赦なく抉り取る。
ひぇぇぇぇえええええ……!!!!
あんな破壊力のある魔力の塊が屋敷に当たったりでもしたら大変だぞ!!
それにしても、あのマージョリナって…凄い魔力を秘めてるんだな…。
おっかない魔力の塊を山程作っては、次々に放ってるんだからさ!!
その魔力の塊を食べちゃう妖精さんも凄いけど……。
あんなに沢山の魔力の塊を食べて妖精さんは、お腹を壊したりしないのかな??
ベアリーチェ
「 …………あんなに高い所に居るマージョリナをどうやって止めたらいいんだよ… 」
セフィ:セフィロート
「 ベリィ、何をしてます?
ワタシに見せた威勢の良さは何処へ行きました? 」
ベアリーチェ
「 セフィ〜〜〜 」
ひょっこりとオレの背後から現れたセフィに抱き付く。
無力なオレはセフィに頼らないと何も出来やしないんだ。
どうせオレは、口だけ女ですよ!!
ベアリーチェ
「 マージョリナが高い所から魔力の塊をブッ放ってるんだ!
何とかしたくても、あれじゃ何も出来ないよ… 」
セフィ:セフィロート
「 なかなか賢いですね。
妖精と十分に距離を取って攻撃するとは 」
セフィ:セフィロート
「 セフィ〜〜~、感心してる場合じゃないだろ〜〜 」
セフィ:セフィロート
「 距離を十分に取っていてもしている事は攻撃ですからね、妖精に喰べられるのは時間の問題です 」
ベアリーチェ
「 セフィ……、マージョリナに攻撃を止めるように言えないかな? 」
セフィ:セフィロート
「 ベリィ…。
…………言うだけ言ってみましょう。
妖精王を前にしても諦めないと思いますけど? 」
ベアリーチェ
「 …………チャンスは与えたいんだ。
セフィが説得しても飛天族を殺して死体を手に入れようとするなら、諦めるよ… 」
セフィ:セフィロート
「 皆に正体を明かす事になりますけど良いです? 」
ベアリーチェ
「 あっ……。
………………いや、いいんだ。
それでクルチェの家族が助かるなら──、正体がバレたって構わないよ。
ジークリンデ様とシェリアンナ様には気付かれちゃってるわけだしな 」
セフィ:セフィロート
「 分かりました。
愛しいベリィ、君が望むなら叶えましょう 」
そう言ったセフィは、オレの額に口付けすると、身体を透けさせてマージョリナの元へ向かった。
ベアリーチェ
「 オレ……セフィに頼んでばっかりだな… 」
セフィを見送りながら、オレは小さく呟いた。
セフィ
「 マージョリナ──、ワタシの妖精へ攻撃するのは止しなさい。
妖精王の生み出した妖精に魔力の塊を放つ事が何を意味するか、知らない筈はないでしょう 」
魔女:マージョリナ
「 ──妖精王?!
ほほほっ……本当に居たのねぇ…。
アタシは妖精に攻撃なんてしてないわぁ。
アタシは飛天族を狙っているだけなのよぉ。
そんなに妖精が心配なら、飛天族の周りをうろちょろしないように言ってほしいわねぇ!
目障りなのよぉ!! 」
セフィ
「 それは出来ません。
ワタシの妖精は飛天族を守る為に居るのですから。
マージョリナ、貴女がワタシの妖精への攻撃を止めて、飛天族を諦めて、大人しく≪ 魔界 ≫へ帰れば、精霊はサバトに参加している魔女を皆殺しにはしません。
貴女が飛天族を諦めず、ワタシの妖精への攻撃を止めないと言うなら、貴女にはこの世から消えてもらう事になります 」
魔女:マージョリナ
「 ほほほっ……妖精王が魔女を脅すのぉ? 」
セフィ
「 脅し?
何故精霊が魔女を脅す必要がありますか。
精霊がその気になれば、魔女を絶滅させる等、容易と言うのに…。
貴女は精霊と妖精がどの様な存在なのか両親から教わりませんでしたか?
精霊と妖精には “ 関わるな,喧嘩を売るな ” と教わりませんでしたか? 」
魔女:マージョリナ
「 ………………それはぁ… 」
セフィ
「 素直に聞き入れてください。
金輪際、飛天族を狙わず,襲わないと誓うなら、見逃してあげますよ。
妖精王が下手に出ている内に去った方が身の為ですよ。
飛天族の死体の為に、同胞達の命を犠牲にする程、貴女も愚かではないでしょう? 」
魔女:マージョリナ
「 …………そうねぇ…。
その通りだわぁ。
…………大人しくサバトの集会場へ戻るとするわぁ…。
残念だけどぉ…… 」
セフィ
「 お気を付けて 」
魔女:マージョリナ
「 ────なんて、諦めるわけがないでしょっ!!
妖精王が何よ!
偉そうにアタシの邪魔をするんじゃないわぁ!!
──目障りなのよぉ!!
アタシの前から消え去りなぁぁぁ!!!!
超絶究極奥義──、アザブランデメデス!!!! 」
マージョリナは呪文を唱えると、杖の先端に全属性の魔法を融合させる。
融合させた魔法を妖精王に向かって放った。
セフィ
「 おや…、それが貴女の選択ですか。
妖精王の忠告を無視するとは…。
折角の慈悲が無駄になりましたね。
救いようのない… 」
セフィはマージョリナが放った融合魔法を難なく掻き消した。
精霊に魔法攻撃は無意味なのだ。