✒ 子供部屋 1
──*──*──*── 子供部屋
昼食を済ませたクルチェとオレは、庭園で描いた絵の鑑賞会をする事になった。
クルチェは絵を描くのが好きなのか、テンションがアゲアゲになって単に張り切り過ぎただけなのか、スケッチブックに沢山の絵を描いていた。
上手いか下手かは、ノーコメントでもいいだろうか……。
クルチェ本人は自信満々に描いた絵を見せてくれるけど、現代日本の極々一般的な美術的感覚を持っているオレからしたら…………「 芸術は爆発だぁ! 」って発言してメチャクチャな絵を描いてドヤ顔してる美術家の頭の中を心配してしまうレベルだから意味が分からない。
御免な……、前世のオレには高度な芸術を理解出来る程の絵心が無かったんだ。
誰が見ても「 上手だね 」って笑顔で微笑ましくなるようなレベルの極々平凡で一般的な美的感覚しか備わっていなかったんだから、芸術的作品の良さや価値が分からないのは仕方無いと思うよ?
クルチェの描いた絵は、まさにそんなレベルのハチャメチャズギャギャギャギャフンな絵だったわけで……。
なんて言葉で表現したらいいのか分からなくて悩んでしまう程の出来なわけで……。
「 個性的だね 」とか「 クルチェらしさが出てるね 」とか、当たり障りの無さそうな事を言えば良いのかな??
「 100年後には価値ある作品になってるだろうね 」は流石に褒めてはないよな……。
だけど、どの絵もカラフルで、見ていて元気になれる絵ではある。
「 花を描いたんだ」とさえ言わなければ、美術家の先生達には評価されると思うよ?
セフィは精霊なだけあって、クルチェの絵を誉めるのが上手い。
クルチェが何を見て描いたのか分かるんだろうか。
まぁ、妖精さんが居るからなぁ……。
次はオレがスケッチブックに描いた絵を見せる番だ。
オレの描いた絵は至って普通で一般的な面白味の欠片もない絵だ。
オレが描いた花の名前は分からないけど、頑張って4種類を描いてみた。
クレパスって柔らかいし描き易いし、本当に助かる。
クレヨンは固いし、色が濃いし、指に色が付いちゃうから洗い流すのが大変だった記憶がある。
扱い方が雑だったからなのか、よく折れたりもしたし。
だけど、このクレパスはついつい力んで力をいれちゃっても、パキッと割れたりしない。
指にも色が付き難いし、クレヨンとクーピーの間みたいな感じ?
クレヨンとクーピーの良い所を合わせた感じ??
兎に角、オレが言いたいのは、「 クレパスを思い付いた人,考えた人,作ってくれた人,日本に広めてくれた人,クレパスの実用化に関わってくれた全ての人達に有り難う!! 」って事だ。
何で異世界に日本にある筈のクレパスが存在してのかオレは分からないけど。
もしかしたら、日本でクレパス製作に関わった事がある人が転生してて、絵を描くのが好きな人達の為に作ってくれたのかな?
そうだったら嬉しいなぁ。
≪ バルハロン王国 ≫には無さそうだから、他国で手に入るのかも知れない。
セフィが生み出した妖精さん達が世界中に居て、偵察をしてくれているみたいだから、偵察中に見付けてくれたのかも知れない。
もっと偵察してもらったら、他にも見付かるかも知れないぞ!!
妖精さんの偵察に関しては今後の事も考えて、セフィと色々と話し合う必要がありそうだ。
それに、このクレパスはクレヨンみたいに水を弾いたりしないから、濡らした絵筆でクレパスの上をなぞると色が伸びるらしい。
水彩絵の具を使わなくても、水彩絵の具を使ったみたいな表現も出来るみたいなんだ。
箱のフタの中にクレパスの使い方が大陸文字で詳しく書かれてある。
大陸文字だから、何処の国のクレパスなのかは分からない。
クレパスの話は横に置いとこう。
子供が描く絵だから、一輪を大きく描いてみたんだ。
すんごく上手ではないけど、ド下手でもない。
無難な絵を描けたと思うね。
因みに花の横に、てんとう虫や蝶のナサギとか簡単な生き物も描き足してみた。
従姉:クルチェール
「 ……………………。
ベリィってさ…10歳だよな? 」
ベアリーチェ
「 そうですわね〜〜。
どうしましたの〜〜? 」
従姉:クルチェール
「 何かさぁ……10歳の子供が描くような絵じゃないよな? 」
ギクギクっ!!
ベアリーチェ
「 そ…そんな事ありませんわ〜〜。
ワタクシは普通に見たままを描いただけですわ〜〜 」
従姉:クルチェール
「 そうかなぁ?
…………10歳の子供が描く絵ってさ……もっと、こう……なんて言ったらいいのか迷うんだけど……… 」
ギクギク,ギクギク!!
従姉:クルチェール
「 …………もっと…下手なんじゃないかな?
ベリィの絵は、全然下手に見えない…… 」
ギクギク,ギクギク,ギクギクっ!!
従姉:クルチェール
「 ベリィ……、絵を描いた事があるのか? 」
ベアリーチェ
「 それは〜〜…… 」
ヤバいぞ、ヤバいぞ!
どうしよう!!
「 今日描くのが初めてですわ〜〜 」なんて言えない雰囲気だぁぁぁぁあああああ!!!!
一体この絵の何がいけないんだろう?!
オレは精一杯、子供らしく描いたつもりだったのに!!
何処が “ 子供らしくない ” っていうんだろう??
どうしよう……何て言って誤魔化せばいいんだ!!
セフィ:セフィロート
「 クルチェール様、ベリィお嬢様は絵を描くのは今回が初めてではありません。
お兄様方,お姉様方に混ざり、絵を描かれています。
お兄様方,お姉様方の描き方や塗り方を見よう見真似されたのでしょう。
上手に描くと奥様から御褒美を頂けますから 」
従姉:クルチェール
「 そうなんだ?
そっか、ベリィは兄姉が多いもんな。
歳の離れたお兄様やお姉様が居たら、描き方や塗り方が似て来たりするんだ? 」
セフィ:セフィロート
「 左様で御座います 」
セフィ〜〜〜、ナイスフォローだよっ!!