✒ 庭園 1
──*──*──*── 庭園
クルチェとソニファニアさんとオレは、果樹園へ寄ってから庭園へやって来た。
庭園の出入り口は1ヵ所だけで、木で作られた立派な扉があった。
誰も居ない時は扉は閉められていて鍵が掛けられているらしいけど、誰かが居る時は扉は開け放たれているらしい。
立派な扉から庭園へ入ると、其処はまるで別世界みたいだった。
空気が違うって言うか──、雰囲気がガラリと変わって、まるでお伽噺の世界へ迷い込んでしまったみないな気持ちになるから不思議だ。
見た事のあるような花から、見た事のない珍しい花が季節に関係無く咲き誇っていて……、何て言葉で表現したらいいのか思い付かない程に美しい光景がオレの目の前には広がっていた。
竜宮城の様子を “ 絵には描けない美しさ ” って表現する言葉があるけど、まさにそれな!
仮にだよ、この光景を絵に描ける人が居たとするならば、その人は世紀の天才画伯並みのレベルだろう。
神業の持ち主だとオレは思うね!!
感嘆の声を出すオレを横にクルチェは摩訶不思議な空間の中を驚きもしないで慣れた感じで歩いている。
見慣れた光景なんだろうな。
慣れって怖いな…マジで。
ソニファニアさんさんも見慣れてるんだろうか、笑顔でオレを後ろから促してくれる。
公爵家の庭園のレベルってマジでパネェ〜〜〜!!
ベアリーチェ
「 ……とても素敵な庭園ですわね〜〜。
不思議な世界へ迷い込んだみたいな気分になりますわ〜〜。
これを全部、魔法で維持してますの〜〜? 」
従姉:クルチェール
「 そうだよ!
此方に噴水やブランコがあるんだ。
大きな樹もあって、木陰の下で読書も出来るよ。
登り易い木もあるし── 」
ベアリーチェ
「 クルチェは木登りが出来ますの〜〜?
凄いですわ〜〜 」
従姉:クルチェール
「 えへへ(////)
今日は木登りしないけどな。
木の上から庭園を見渡す事が出来るんだよ。
見晴らしが良いから、オレのとっておきの場所なんだ 」
ベアリーチェ
「 ワタクシも木の上から庭園を見渡したいですわ〜〜。
残念……ですわ〜〜 」
オレはセフィの傑作品でもあるドレス風ワンピースを見ながら、残念そうに溜め息を吐いた。
本当に残念過ぎるからガチでガッカリだ。
ワンピースを汚すわけにもいかないし、侯爵令嬢である以上、軽い気持ちで木登りなんて危ない行為は出来ない。
貴族令嬢じゃなければなぁ…。
従姉:クルチェール
「 梯子もあるから明日登ってみるか?
動き易くて汚れても構わない服なら何着も持ってるから、ベリィにも貸すよ 」
ベアリーチェ
「 本当ですの〜〜?
嬉しいですわ〜〜(////)」
従姉:クルチェール
「 ベリィなら、どんな服を着ても似合うよ!
今日はブランコに乗ろう 」
クルチェに手を握られたまま歩く。
女の子と手を繋いで歩く日が来るなんて……(////)
前世では付き合っていた彼女とも手を繋いで歩いた事がなかったのになぁ…。
女の子同士って平気で手を繋いで歩くもんなのかな?
男同士で手を繋いで歩いたもんなら、白い目で見られて有らぬ噂を流されたり、ゲイだのホモだのと疑われちゃうもんだけど……、女の子は違うのか?
レズやらユリやらって思われたり、噂されたり、白い目で見られたりしないのかよ…。
もしも、そうなら不公平だよなぁ…。
いや…、勘違いしないでほしいけど、オレは決して男と手を繋ぎたいわけじゃない。
断じてだ!!
手を繋ぐのもハギュッとするのも男なんかよりも女の子との方が良いに決まってる!!
オレは断然、女の子派だ。
レズだろうと、ユリだろうと言われたって関係無いね!
男なんかと仲良くイチャコラ出来るかってんだよ!!
胃の中のを全部、リバースしちゃうんだからな!
女の子同士って……良いもんだなぁ〜〜〜。
ふへへ(////)
大きな樹の近くに本当にブランコがあった。
椅子代わりに座れるようになっているブランコで、大人の女性が横に2人並んで座れるサイズだ。
子供には大きいサイズのブランコにクルチェと一緒に座ってみた。
ブランコの後ろにはソニファニアさんが立っていて、ブランコを揺らしてくれている。
公園のブランコみたいに勢い良く漕ぐ事は出来ないみたいだけど、これはこれで楽しい。
如何にも高貴なお嬢様が優雅に庭園を楽しんでいるみたいな気持ちになる。
これはきっと絵になる光景だと思うんだよ。
ブランコを楽しんだ後は、噴水を見に行く事になった。
クルチェとシェリエッタ様のお気に入りの噴水らしい。
噴水の前に着くと不思議な気持ちになった。
噴水の真ん中には像が立っていて、4枚の翼を生やした美しい女性の姿をしている。
まるで天使様を思わせる像だ。
ベアリーチェ
「 素敵な像ですわね〜〜。
天使様ですの〜〜? 」
従姉:クルチェール
「 ハハハッ!
天使様じゃないよ。
この像のモデルはシェリーお祖母様なんだ。
マリスお祖父様が作らせたんだよ。
え〜と……ひしょ…何だっけ?? 」
護衛騎士:ソニファニア
「 飛天族です、クルチェール様 」
従姉:クルチェール
「 あっ、それだそれ!
翼を生やした飛翔族の人鳥族と間違われ易いんだけど、別の種族だよ。
人鳥族の背中には翼が2枚のしか生えてないけど、飛天族の背中には翼が4枚も生えているんだ。
確か……、精霊の力を使えるんだったかな 」
ベアリーチェ
「 精霊の力を使えるなんて、まるで吸血鬼みたいですわね〜〜 」
従姉:クルチェール
「 吸血鬼?? 」
護衛騎士:ソニファニア
「 ベアリーチェ様は吸血鬼を御存知なのですか? 」
ベアリーチェ
「 セフィに教えてもらいましたの〜〜。
精霊の力が使えるなんて凄いですわ〜〜 」
護衛騎士:ソニファニア
「 吸血鬼は翼を奪われた “ 飛天族の末裔ではないか ” と言われているんですよ。
吸血鬼の魔女狩りの話は有名ですね。
絵本にもなっているのでベアリーチェ様も1度読まれてみては如何ですか? 」
ベアリーチェ
「 絵本がありますの〜〜?
セフィに聞いて探してもらいますわ〜〜 」