⭕ 廊下 1 / クルチェールSide 1
──*──*──*── 廊下
ドアを開けて、シェリーお姉様の部屋から廊下へ出ると、お母様の専属護衛騎士のソニファニアが控えていた。
ソニファニアって一寸長いから、オレは “ ソニア ” って省略して呼ばせてもらってる。
お父様は “ ソニファニア ” って呼んでるけど、お母様やシェリーお姉様は、オレと同じで “ ソニア ” って呼んでる。
だけど、2人の場合は愛称呼びだ。
シェリーお姉様はオレよりもソニアと仲が良いからだ。
因みにソニアには、ジオセルッドって名前の父親が居て、ヤンディエン,ランディレス,シェルルナ,ソニランの師匠でもある。
オレは親しみを込めて “ ジオじぃ ” って呼んでる。
お父様の護衛騎士をしているランディは、お母様の護衛騎士をしているソニアが好きで片想いをしていると専らの噂だ。
──と言うか、ソニアは独身男性の騎士達から絶大な人気を誇っていて、孤高の高嶺の花的存在なんだとか。
憧れの的と言うか……、毎回ソニアに告白しては撃沈しているらしい。
ソニアは男の騎士達だけじゃなくて、女の騎士や侍女,市民からも人気がある。
ソニアは公認してないけど、ファンクラブなんてのも作られちゃってるみたいだし…。
ソニアへ恋するランディには、手強くて強者のライバルが多いんだ。
ソニアのファンクラブには、 “ ソニファニア様親衛隊 ” なんてのがあって、マチルフォント領の騎士隊の殆んどが入隊しているらしい。
どんだけソニアが好きなんだろうな?
憧れるのも恋愛も自由だとは思うけどさ……ソニアの人気は凄まじいものがある…。
オレはランディと仲が良いけど、別にランディの恋の応援はしていない。
ぶっちゃけ、ソニアが誰と付き合おうが、誰と結婚しようが興味はないんだよなぁ。
オレが気になるのは、シェルルナに恋をしているソニランの方だ。
シェルルナと顔を合わせたソニランの反応が面白いんだもんなぁ(////)
実はシェルルナもソニアと同様にファンクラブがある。
流石に “ シェルルナ様親衛隊 ” なんてのは未だ無いらしいけど、親衛隊が出来るのは時間の問題かも知れない。
シェルルナは女騎士の先輩になるソニアを尊敬していているらしい。
ソニアに憧れて騎士隊に入団したって事を本人から聞いた事がある。
ソニアが女騎士の先駆けではないけど、ソニアに憧れて騎士隊へ入団する女性が居るわ居るわ。
訓練や鍛練が厳しいから挫折しないで正式な騎士隊になれるのは、極僅かな狭き門だ。
シェルルナはその狭き門を突破した努力家で頑張り屋さんの実力主義者だ。
ソニアもシェルルナの事を根性とガッツのある後輩として可愛がっている。
恋愛的な意味ではなくて、純粋に騎士の後輩としてだよ。
巷では「 ソニアはヤンディエンの事を好いているのでは── 」なんて噂が囁かれているみたいだけど、クレルの情報網ではデマらしい。
クレルの情報網は凄いんだよなぁ。
一体全体何処で仕入れてくるんだか。
マチルフォント領の騎士隊の色恋沙汰をローゼルグイン公爵家の令嬢が詳しいのって、おかしくないか?
クレル的にはランディには頑張ってもらいたいらしくて、密かに応援をしてるらしいけど……。
まぁ…クレルが好きなのは、ソニランだからな…。
クレルからの積極的なアプローチには、ソニランも頭を抱えているみたいだ。
クレルからの猛アプローチに対して嬉しい反面、シェルルナを好いているから板挟みになっているんだろう。
想われる内が花なんだから、クレルにしとけばいいんじゃないかと思うけど、公爵令嬢と護衛騎士だからな……。
大人の世界では身分差があり過ぎるのが問題視されていたりする。
貴族の恋愛は身分がなんちゃらで色々と面倒なんだよなぁ…。
仮にソニランがクレルと結婚する事になったら、ソニランは騎士を止めてローゼルグイン公爵家の養子になる事になるらしい。
クレルには双子の兄が居るけど、嫁がせる事はしないで婿養子を迎える事になっているからだ。
ソニランが公爵家の婿養子になったなら、相当な苦労するのは目に見えているわけだ…。
そりゃ、ソニランも悩むよなぁ?
ジオじぃと親しいオレだけど、オレにもお祖父様は居る。
母方のお祖父様になるけどな。
父方にはお祖父様は居なくて、お祖母様だけだ。
お父様のお母様──オレにとってのお祖母様は、伯母様のマージョリー・ダルファシクと同じ魔女の末裔だ。
お父様にとって、母親は義理の母──育ての親みたいなものらしい。
お父様とお祖母様とは血が繋がっていないから、お父様は魔女の血族じゃない。
魔女の末裔と血族じゃない事に実は一寸だけ安心してたりすのは内緒だ。
お祖母様の名前はアクージョ・アクージョダって言って、如何にも悪役感が半端ない。
アクージョお祖母様には2人の妹が居て、アクーダルとワルーダスって言うらしい。
魔女の末裔の間では、かなり有名な3姉妹らしいんだけど、どう有名なのかはオレは知らない。
別に知らなくてもいいんじゃないかとすら思っている。
魔女の末裔のアクージョダ家とダルファシク家は、≪ 魔界 ≫に居た頃から仲が悪いらしい。
そんな仲の悪い魔女の末裔同士がマチルフォント公爵家の身内になってるんだから、世の中って分からないよな…。
◎ 訂正しました。
クルリエンヌ ─→ クレリエンヌ
◎ 変更しました。
クレリエンヌは1人娘 ─→ クレリエンヌには双子の兄が居る