⭕ 【 オレは、ベアリーチェ・シュケルハン 】 ベアリーチェの自室 1
◎ この作品の主人公は「 オレ 」と「 オレ 」の両方を作中で使い分けています。
御了承ください。
──*──*──*── ベアリーチェの自室
オレはベアリーチェ・シュケルハン。
シュケルハン家の娘で、7女だ。
シュケルハン家は王族に忠誠を誓う貴族で、爵位は侯爵だ。
オレ──こと、ベアリーチェ・シュケルハンは、お貴族様の侯爵令嬢ってわけだ。
オレは7女だから、一応は末子だけど、弟妹が産まれたら、お姉ちゃんになるし、末子じゃなくなる。
オレには6人の姉貴が居て、5人の兄貴が居る。
この世界の夫婦の夜は、どうやらお盛んらしい。
貴族だからなのか──、裕福な暮らしが出来るからなのか──、理由は分からないけど……、幾ら何でも子作りし過ぎじゃないのか?
お父様は自分の年齢を考えた方がいいと思う。
年甲斐もなくハッスルし過ぎだ。
お母様も拒めばいいのに避妊もしないで、お父様に求められるまま毎晩、夫婦の営みに応じているみたいだ。
夫婦仲が良くて円満なのは良い事だと思うけどさ、お互いの年齢を考えて、そろそろ避妊ぐらいしようぜ?
…………まぁ、9歳の小娘が「 どうして、避妊しないの〜? 」なんて聞ける筈もなく…。
お母様のお腹の中には、新しい命が既に宿っているわけで…。
オレの年齢は9歳だ。
もう直ぐ、オレは10歳の誕生日を迎える。
憂鬱だぁ〜〜〜〜。
今は自室に居て、誕生日パーティーというか、お披露目会というか──で着る事になるドレスを選んでいる最中だ。
ドレスになんて興味ないから、ぶっちゃけ面倒くさいよ…。
派手なドレス,奇抜なドレス,ケバいドレス,変なドレス,露出度の高いドレスとかじゃなかったら、何でもいいや──って思う。
化粧とか香水とかアクセサリーとか色々とチャラチャラしたヤツを付けられて、お洒落させられるんだろうなぁ……。
オレ、化粧臭いのや香水臭いのは駄目なんだよ…。
滅入るぅ〜〜〜。
侍女
「 ──お嬢様、どちらのドレスがお気に召されますか? 」
ベアリーチェ
「 ドルシー…。
そうですわね〜〜。
何れも可愛らしいですわね~~。
素敵なドレスばかりで迷ってしまいますわ〜〜。
決められませんわ〜〜 」
オレは如何にも女の子らしく可愛く困って見せる。
まぁ、実際にオレの身体は女の子だし、容姿も文句なしに完全な女の子だ。
心は違うけど。
オレの前世は男だから、9歳の女の子を演じるなんて、かなりの苦痛なんだよ!
だけど、子供らしく可愛く困って見せると、オレの専属侍女をしてくれているドルシーが喜ぶんだ。
不本意ではあるけれど、可愛子ぶるれば、それなりに穏便に物事が運ぶから慣れた。
姿見に映るオレは確かに可愛い女の子だ。
申し分ないぐらい可愛い。
前世のオレの前に居たら、間違いなく一目惚れしちゃって、勢いあまって告白してしまうぐらい儚くて可憐で可愛い。
おっとりぽやぽややや〜〜〜んっぽい天然系に見える。
世間知らずで純粋無垢で世の中の汚い事なんて微塵も知らない天使みたいに可愛い。
うん、自他共に認める可愛さが全身から滲み出ている可憐な少女だ。
ドルシーがメロメロになって、夢中でオレに御執心してしまう気持ち、解るよ!
姿見に映った自分の変わり果てた姿を見て、絶句して、絶望して、即失恋したオレは、どんなにショックだったか……。
生まれ変わった自分の容姿に恋するわけにもいかないからなぁ……。
オレはナルシーが大嫌いだからな。
ナルシーにならないように気を付けないといけない。
ドルシーはオレの為に真剣になってドレスを選んでくれている。
丸投げして御免な、ドルシー。
外見は兎も角、心が男で御免な、ドルシー。
オレは胸に抱きしめているウータンの頭を撫で撫でしながら、ドレスを選んでくれているドルシーを見守る。
専属侍女:ドルシー
「 お嬢様、1着に決められないなら、数着をまとめて買いましょう。
お色直しでドレスを着替えるのはどうですか? 」
ドルシーめ、オレを着せ替え人形にする気かよ…。
お色直しなんて、滅茶苦茶面倒くさいヤツじゃんか。
あれ……、無茶苦茶だったかな?
でもなぁ……着せ替え人形すると姉貴達,兄貴達は喜ぶだろうなぁ……。
不本意だけど、普段着の今でも十分に可愛いオレが、お色直しをしたら今よりも数十倍は可愛くなるんだろうなぁ…。
面倒くさいけど、見てみたい気持ちもある。
女に生まれ変わってしまった以上、オレが女の子と付き合う事は出来ない。
同性同士でキャッキャッウフフな友達付き合いは出来るだろうけど、それ以上の関係にはなれない。
百合やらレズやらは流石に抵抗あるからな…。
オレはそっちの世界に「 コンニチハ 」なんかしたくない。
勿論、男と付き合うなんてのも論外だし、もっての他のゲロゲロゲェ〜〜〜だっ!!
身体は女でも心は男だからなぁ……。
男と●●●●なんてしたくないよ!!
オレは異性と●●●●して子作りをしなくても許される──、寧ろ処女性を高く求められている修道女になって、残りの生涯を修道女として清く楽しく慎ましく生きて行こうかと本気で考えていたりする。
修道院をオレの人生の安息の地にするんだ!!
侯爵令嬢のオレが「 修道女になりたいですわ〜 」なんて言ったら、全力て阻止されてしまうかも知れない。
この本音は誰にも言えない……。
専属侍女:ドルシー
「 あの…お嬢様… 」
──おっと、いけない!
ドルシーがオレの意見を待ってくれていたんだった。
ドルシーが提案してくれた案は激しく嫌だけど、オレの行き場のないムラムラを一体どうやって発散させたらいいんだ。
そんなわけで、オレはドルシーの提案に対して、こう言ってやる事にした。
ベアリーチェ
「 とても素敵な案だと思いますわ〜〜。
ワタクシも可愛いドレスをお父様,お母様,お姉様達,お兄様達にも見せたいですわ〜~。
──ポッ(////)」
専属侍女:ドルシー
「 お姉様…(////)
有り難う御座いますっ!! 」
ドルシーはオレの言葉を聞いて、感極まっているのか涙ぐんでいる。
泣く事ないだろ〜〜〜。
大袈裟だなぁ〜〜。
最後の「 ポッ(////)」が余計だったかな??
嬉しそうにオレが着る事になるドレスを選んでくれているドルシーへ念の為、オレはNGドレス── 決して選んではいけないドレス ──を教える事にした。
これは誰にも譲れない大事な事だからな!!
NGドレスをチョイスしたらドルシーとは絶交するし、解雇する事も一緒に伝えといた。
これでドレス選びはドルシーに一任しても大丈夫だろう。
そう思いたい。