表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

夢幻ループ

作者: 若松ユウ

 長話を終えて電話ボックスから出ると、知らない街だった。夜の帳が降りている。

 そして、季節はいつの間にか冬になっていた。星一つ見えない漆黒の空からは、しんしんと雪が降ってくる。

 夏服を着た女子学生は、目の前の光景を理解できず、しばし白銀の世界に呆然と立ち尽くしていた。

 だが、それも長くは続かなかった。何故ならば、ミニスカートの裾から、針で刺すような冷気が襲ってくるからだ。

 学生は電話ボックスに戻り、寒さに震える手で十円銅貨を投入口に押し込み、ダイヤルを回した。


  *


 長話を終えて電話ボックスから出ると、知らない街だった。景色は茜色に染まっている。

 そして、季節はいつの間にか夏になっていた。質屋の張り紙がある電柱では、蜩が切なげに鳴いている。

 冬服を着た男子学生は、目の前の光景を理解できず、しばし暮れなずむ夕陽を見るともなしに見ていた。

 だが、それも長くは続かなかった。何故ならば、ポリエステルの詰襟が熱を閉じ込め、汗が噴き出しているからだ。

 学生は電話ボックスに戻り、暑さで張り付くシャツを不快に思いながら十円銅貨を投入口に押し込み、ダイヤルを回した。


  *


 他愛もない世間話をしてから受話器をフックに置いてボックスを出ると、いつもと変わらぬ街だった。季節も夏に戻っている。

 夏服を着た女子学生は、ホッと安堵の息を一つもらし、家路を急いだ。

 しかし、安心するのは早かった。なんとなれば、丁字路を曲がった先には、見知らぬ一軒家が建っていたからだ。

 学生は直感的に来た道を引き返し、電話ボックスに駆け込んだ。そして、再びダイヤルを回した。


  *


 他愛もない世間話をしてから受話器をフックに置いてボックスを出ると、いつもと変わらぬ街だった。季節も冬に戻っている。

 冬服を着た男子学生は、ホッと安堵の息を一つもらし、家路を急いだ。 

 しかし、安心するのは早かった。なんとなれば、丁字路を曲がった先には、見知らぬアパートが建っていたからだ。

 学生は直感的に来た道を引き返し、電話ボックスに駆け込んだ。そして、再びダイヤルを回した。


  *


 それから、二人の学生は何度も電話をかけ直した。

 四回目で誰かと入れ替わっていることに気付き、九回目で原因が分かり、十一回目で法則性を見破った。

 そして最後の十円銅貨を投入して臨んだ十三回目で、ようやく二人は完全なる元の世界へ戻ることが出来た。

 どこまでが現実にあったことなのか、それとも、最初から夢を見ていたのか。そんなことは、わからない。

 ただ一つ、翌朝に目を覚めた二人の財布には、十円銅貨が一枚もなかったそうである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 拝読しました。 幻想的なお話でした。夢か現かという感じですね。題名も素敵です。 二人の主人公が入れ代わり立ち代りという状況を対として並べてあって、しかも端的にその状況が語られているので、…
[一言] 企画より拝読させて頂きました。 公衆電話というか、電話ボックスは本当に見なくなりましたよね。残す方針ではあるようですが、地元にはもう一つもありません。 だから電話ボックスの話を読むと、当…
[一言] 描写が丁寧なので、風景が分かりやすかったです。冬と夏の(多分)同じ時間帯なのに明るさの違い、ここでゾクッと来ますね〰〰っ! 登場人物たちはさぞかし驚いたことでしょうね。 何度も何度も電話を…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ