食らうもの狂うもの
「紅葉!お前の大罪だ!暴食を使え!」
信幸が紅葉に叫ぶ。
「暴食?!まじで。」
嫌な顔をしながら、頭を振る。
「問題があるわ!食べてもいいけど。影響を受けて暴走をするわよ!」
「大丈夫。そうなったら、俺の領分になる。」
「ああそういう。」
紅葉の大声に、エンデがしたり顔をして答える。
紅葉は器用に攻撃を捌きながら、天を仰ぐ。
「信兄。」
そう言って信幸を見る。
信幸は紅葉の言わんとしていることを理解して、
生徒に蔦を巻き付けて持ち上げ、飛行船まで戻る。
「ありがとう。さて!エンデ。しっかりやってよ。」
「俺は『空間』だぜ。隔離で失敗はしない。」
紅葉は苦笑を浮かべ、九尾を真っすぐ見据える。
「さあ食事の時間よ、『暴食』。『烈火』!」
紅葉は火を纏い、火花のようにふっと消え、
九尾の真後ろで、膝を着いた。
「そこか。『隔離』!あんど~。お前はふっとべ!」
エンデがそう言うと九尾が上空へと飛ばされ、
徐々に小さくなる。気を失ったのかだら~んと四肢を投げ出している。
それを飛行船から伸びた枝葉が受け止める。
<エンデ、頼むぞ。>
<任された。>
紅葉だった人形が黒い靄に包まれる。
(おや?紅葉は接続を切ったか。本能のなせる業だな。
なら、やりようが。っと。)
黒い靄が四角に固まったかと思うと、徐々に球体に変形し、爆発する。
そして、なぜか意思を持ったように靄が近づいたエンデへと殺到する。
それをエンデはバックステップで数回躱し、人形から距離をとる。。
「ガァァァァ!」
人形が唸り声をあげると罅が入り、徐々に形が大きくなる。
「オイオイ。その人形高いんだがな。壊さんでくれよ。」
そう言いながら、手刀を振るい、靄を切り落とす。
靄はエンデに近づくのをやめ、人形の内側へと集まり、
異形へと姿を変える。
そして、腕を振り回し、黒いブレスを吐く。
腕やブレスの通った先は腐り落ちるように削れていく。
そして、火球が周囲の木々を燃やす。
「龍人?いや、キメラか。妖精の透明な羽、鬼人の頭部、魚の鱗、狐の尻尾?
精霊と例の邪神か?面倒な。それに、これは腐食なのか?
劣化速度が加速している?
厄介な。面倒だ。壊すしかないか。」
そうつぶやくと、エンデは左手を突き出す。
「忍!アル!やるぞ!」
エンデの影が人形を作り、背中に黒翼が生える。
「『圧壊』!」
そういうと人形の中心に吸い込まれるように崩れ始める。
周囲の炎も朽ちた草木もそこに吸い込まれていく。
それに抗うように四肢を踏ん張り、ブレスを吐こうとするが、
それさえも自らに吸い込まれていく。
「キャァァァ!」
薄気味の悪い声が周囲に響く。
「グゥ。っち。抵抗がデカい。」
エンデは突き出した左手を右手で支え、
脂汗を書きながら、耐える。
そして、しばらくすると、人形のコアに使っていた宝玉がむき出しになる。
それを確かめて、左手を握る。
すると、宝玉が地面へと落ちて、自らの影に沈む。
「助かるよ。忍。」
そう言いながら地面に転がり、空を仰ぐ。
そんなエンデの視線の先に、飛行船が降りてくるのが映る。
「はー。紅葉の人形って。在庫あったけ・・・。」
<ヤクが、「どうせすぐ壊すだろう。」って言って作ってたぞ。>
「あっそ。なら、すぐに戻ってこれるか。」
<入ッタゾ。>
忍がそういって、飛行船の影から人形を吐き出す。
「ふー。上手くいったみたいね。リソースが汚染されなくてよかったわ。」
「人形は一台だめになったけどな。」
すでに、人形に意識を映していた紅葉が華麗な着地を決め、
エンデを覗き見ながら、労をねぎらった。




