エンデの力
「なるほどね。これはエンデにしかできない。」
紅葉は飛空艇の窓から、眼下に広がる町を双眼鏡で見ながら答えた。
そこには、飛空艇の船首が通過するたびに、ところどころで光が上がり、
人が消えていく。
「船首の先で結界の範囲を押し広げる感じだな。結界の範囲に入ると、
精霊と九尾とつながっている奴らは強制的に九尾の町へと跳ばされる。」
「すごい力ですね。」
名取はエンデの力に感嘆の声を上げる。
「これが神の如き力ですか。」
富士は呆然としながら、立ち尽くす。
「いや、これはエルフや魔法にたけたものなら、やれなくはない。」
「そうなんですか?」
エンデが後ろからそう声をかける。
「ああ、魔力を一時的に増やす方法もあるし、
今回の件は神の力を借りている部分もあるからな。」
「あれ?そうなの。」
紅葉が驚いて聞き返す。
「まぁ。あんさんには難しいか?」
「ああ。」
生徒たちは紅葉を見て納得の顔をする。あきれながら、名取がいう。
「信幸さんがやらないのは、運転しながらは難しいからですか。」
「そうだ。意外と適正がない場合は繊細なコントロールが必要だ。
エンデは権能が『空間』だからな。」
「ああ。そういう。あれ?私たちもできるんですか?」
宮城が信幸に聞く。
「できるが・・・。魔力をためた3mぐらいの大きさの魔石が数個。
お前ら全員で同じことを考えながら、発動すればどうにかってところかな。」
「それは、難しいですね。何時間も同じことを考えるのは大変ですから。」
富士が頭を振りながら、できないと否定する。
「だな。一つ教えてほしいのですが、特性と属性の関係って。」
「あっ。それは教えられる。
えっとね。持っている『特性』や本人の『性格』によって、
『属性』にあたえる『事象』に影響を与えるのよ。
私は『大地』と『火炎』の二つの特性を持っているけど、
性格がこんなんだから、『火炎』の方が『事象』に影響を与えやすいのよ。」
そう、説明する。
「なら、私はどの特性も持っていますけど、
性格的には『風』や『土』、『水』ですか?」
「そうね。でも、『火』もあると思うわよ。周りをよく鼓舞しているじゃない。」
「ああ、そういうのもいいんですか。」
「そうよ。」
宮城の質問にそう返す。
「なら。今一度、自分たちの性格や特性を見直した方がよさそうですね。」
そう、神戸が締める。
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「今日はここまでにする。停止はさせるが、エンデ、魔法は?」
「停止させる。俺も、そう持続させることは難しい。」
「そうだな。もったいないしな。」
「浮かせたままだが、大丈夫か?」
「気体を満たした状態なら、火種がなければ問題ない。」
「そうか。そうだよな。」
そんな会話をしながら、食堂へと向かう。




