女教師異世界でも教官をす
「弱すぎる。私ではなく、生徒でもよかったかしら。
でも、私の実力を見たかったのだからしかたがないわね。」
そういって、剣をしまい舞台を降りる。
「お前ら、これでわかったな。」
軍務卿は集めた兵士たちを見回して、そう言った。
「納得いきません。女性に教わるなんて。」
「男尊女卑な考え方ね。わからなくはないけど。
もしかして女性騎士はいないの。」
「まさか。護衛の任務の関係上、女性騎士もいます。
ですが、どちらかというと。守りの剣というか。」
「ああ。大楯や特殊な盾を使った護衛剣術ね。」
「ご存じですか。」
「ある程度の武術は使えるもの。」
「ははは。すごいですね。力と速さだけではないのですか。」
「ま~ね~。で認めないの?」
そういって、兵士たちの方を紅葉は見る。
「それは・・・。」
「ねぇ。ちょっと。」
「なんでしょうか。」
軍務卿を端の方に呼んで小声で話し始めた。
「ほんと~~~に申し訳ないんだけど。
教えても無駄そうな人が大半なんだけど。」
「それは・・・。身体的な部分でですか?」
「そう。無理そうな子は将にでもする?その辺も教えられるけど。」
「いいのですか?」
「これはあまりに酷いもの。まあとりあえず、いろいろ教えてみるけど・・・。
本当にこの国の騎士は大丈夫。」
「かろうじてですかね。防衛ならね。」
「なるほど。で、まだ不満があるみたいだけど・・・。
殺って良い?」
「あえて聞きますが、何を?」
「全員対私。」
「ははは。本気ですか?」
「本気。」
そういった紅葉は良い笑顔をしていた。
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「さて、皆さんの教官になるモミジ・カザマです。」
そう挨拶する紅葉の前には傷だらけの騎士たちが整列していた。
騎士たちは一様に不満そうな顔をしながらも、大人しく挨拶を聞いていた。
「不定期ではありますが、皆さんに戦略、戦術、戦闘術をお教えします。
よろしくお願いいたします。では、手始めに、この舞台の周辺をそうね~、
20周してもらおうかしら。あなたたちもよ。」
そういって生徒の方に向きにやりと笑う。
生徒たちは愕然とし、騎士たちはあっさりという紅葉に
何言ってるんだこいつという驚きの顔をする。
「な~あに。そんな顔をするの。そうね。
じゃあ私に抜かされなければ10週で良いわ。
私は、開始から10秒で走り始めるから、さあ頑張りなさい。
はい!開始!」
兵士も生徒も慌てて走りだす。
「1~、2~、3~。」
速い人間は5秒で舞台の4分の1を走り切る。
そして、10秒立つぐらいで半周に届くぐらいまでいくが、
無慈悲な宣言が響く。
「10!ハイ、スタート。あ、ちなみに私は20周だから。」
そういって、走りはじめる。
最後尾が半周を過ぎるあたりで、抜き去る。
「ぜぇ。ぜぇ。普通に走って。抜かれるとか。
さっきまでの試合は全力じゃないのか。」
最後尾の人間はすでに息も絶え絶えに走っていた。
「これでも、身体強化は切っているんだけどね。」
「げ~。」
スタミナはあるが脚力がない大野 鉄平が抜かされる。
5週の時点で全員を抜き去る。
「じゃあ、面倒だから。身体強化で、速力をサポート。」
ぐんぐんと紅葉はトップを走っていた騎士を突き放す。
そして、10週、15週、20周と走っていく。
その間にも周回遅れを生み出し、
完走する。
「じゃあ、わたしは軍務卿と話しをするから、アン。後のカウントはお願いね。
あとで、順位と完走後の様子を教えて。」
そう言って、軍務卿を伴って、詰所の一角に歩いていく。
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「で、教育方針なんだけど。」
「ええ。どのように?」
「最初の1回は私がするけど、その後は彼らにお願いをしようと思うの。
レイ、サラ、勇。」
紅葉が呼ぶと初老の男、甲冑の女性、東方風の男性が後ろに並ぶ。
「レイが戦略を、サラが戦術を、勇が剣術を見るは」
「これはこれは。なかなかの方たちで。」
「私の直下の配下だからね。で、それでも良い?」
「ええ。この方たちなら、問題ございません。」
「決まりね。」
そう言って、二人は握手を交わした。