紅葉の力と性質
「信さん、今の秋ちゃんは何ですか?」
大野が息が上がっている信幸に駆け寄りながら問いかける。
「ちょっ、まっ。」
信幸は左手で紅葉を支え、右手で槍を杖に肩で息をしながら、
待つようにいう。
「信幸様はお疲れですので、私がお答えいたしましょう。」
富士の手から人型に戻ったレイがいう。
アンも人型になり、紅葉を受け取る。
青龍と六合が信幸の腕輪からでて、肩を貸す。
「そもそも、紅葉様は成長の権能と試練の権能、
そしてこの世界で邪神となった闘神と同じ
闘争の権能の3つを保有しています。」
「えっ?!秋ちゃんって、神なの?!」
「そこからですか。」
「てっきり、勇者か英雄の生まれ変わりだと思ってた。」
「ああ、なるほど。紅葉様のご兄弟、信幸様、流治様含め、
神とは異なるのですが、世界を運用するための力を
システム及び世界から委任された権限を保有しています。
神とは異なるのですよ。偶像ではなく、そうですね・・・。
スポーツの審判と考えてください。
スポーツごとにルールがことなり、必要に応じて、
ルールを増やしたり、改訂したりする権限を持った審判です。」
「なるほど、権能がスポーツでその権能の範囲なら
ルールの設定が独自でできるわけか。」
「そうです。でですね、闘争の権能は生物の根源の部分で、
また本能に根付いているものなのです。
なので、ルールに縛られることなく。また、ルールも定めにくい。
試練や成長なら、どうしたら、どうやったらがルールとして設定できますが、
闘争はそれがない。ただ、ただ、戦うということしかないわけです。」
「それが、さっきの秋ちゃんにどうつながるの?」
「紅葉様は闘争の権能のこともあり、
基本、戦いにおいてほぼピンチになることがありません。
それこそ、致命傷を負うことはありません。
ですが、先ほどの訓練で、皆様方は、有効打をいくつか出しました。
一本はでませんでしたが、それこそ、『捌き切れない』と
本能的に思わせるぐらいに思わせるぐらいには。
そして、それは紅葉様を高揚させ、本気にさせました。」
「ああ、それで。」
「そうです。日頃は惰性や作業でやっている紅葉様が危機感を覚えた。
それで、先ほどのように闘争の権能が表に出てきたわけです。」
なるほどと皆がうなずく。
「ちなみに、あれを身内では『バーサーカ・モード』と呼んでいる。
静止の声も聴かず、手が付けれなくなるからだ。
もうひとつ言うと、あれを単騎で止められるのは、流治とエンデぐらいだ。
それも、作業のように止めるがな。」
落ち着いた信幸がそんなことをいう。
「あれを作業で止めるんですか?」
「そうだぞ。俺やお前らが、こんな満身創痍で止めたあれを作業で止めるんだ。
そして、あの状態に定期的にして、自分の訓練に使っているんだ。
やってられんだろう?」
「なんすかそれは。」
「ま、そのおかげか、最近はなるならないの判定ぐらいは
自分でできるらしいんだが・・・。
今回は身をゆだねた感があるな。わざとかな?」
ふと、信幸は紅葉がわざとあのモードになったのではないかと思い立ち、
眉間にしわを寄せた。




