女教師久しぶりに指導をする。
「ほら!富士ぶれてるよ。もっと剣を操っている感じで、しっかり振らないと!」
「はい!」
紅葉の大声とそれに答える富士の返事が祠の空間に響く、
「やってるな。」
紅葉が生徒に指導をしていると聞いて、祠の空間へと信幸は足を延ばした。
「お前らはやらんのか?」
入口付近で、アンが取り出したであろう机と椅子に座って、
勉強をしている名取、神戸、宮城に問いかける
「一応、受験生なんで。」
問われた名取が答える。
「なるほどな。ふーん。そこ、違ってるぞ。」
「え。」
「連立方程式の立て方が違っている。図に書くといいぞ。
道のりとか、時間とか絵に描かないとわからなくなるぞ。」
指摘をされて、宮城は慌てて、問題文を図にする。
すると時間の比較に間違いがあった。
「あ、なるほど。」
「まあ、ひっかけだな。」
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そんな、勉強組とは異なり、紅葉は4体1で地稽古による指導を始めた。
「大野は慎重になりすぎ、守ってばかりじゃ一本はとれないよ。
富士はですぎ、周りを見ないと、ほら。一本が入るよ。」
「「痛!」」
竹刀でたたきながら、悪い点を指摘していく。
「日野ちゃんはもっと、いなさないと、ほら無理やりはいりこまれちゃう。
大月はもっと、フェイントを混ぜないと。素直すぎるよ。」
「きゃっ。」
「うわっと。」
4人は息をあげながらも、竹刀を構える。
「秋ちゃん。もう無理~。」
日野が悲鳴を上げる。
「こっちでも、勉強と運動をすれば、元の世界でも役に立つんだから。
ほら、頑張る!」
「「「「え~!!」」」」
そう言いながら、紅葉が竹刀を振ると、それに合わせて、
4人が散開し、再び、地稽古が始まる。
そんな、様子を1時間ほど眺めていた、信幸がそれを止める。
「紅葉、その辺で休みを入れたらどうだ。
いくら、人形と言っても、疲弊はするし、集中力も落ちる。
それに、感覚もある人形だから、追い込み過ぎて、
トラウマになっても困るだろう。」
「むっ。う~ん。わかった。」
そう返事をして、竹刀を下ろす。
「思いっきり指導できる環境だから、わからなくはないが。
何ごともほどほどが一番だぞ。ま、しばらく休んで、全員で紅葉とやって、
終わりにしろよ。」
そう後づけされた言葉に3年生含めげっそりとした顔をして、
信幸を見た。
「そんなにいやかよ。」
『嫌です!』
「ふっ。そうか。なら、俺がお前らと一緒に戦ってやるよ。
ま、それぐらいがハンデでいいかな。」
『う~ん。わかりました。』
7人は渋々といった感じでうなずいて、
アンが用意した、お茶とお菓子の味を楽しみ始めた。




