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賢者は蒔く

「何じゃこりゃ、でっかい棺桶?」


「棺桶ではないんだがな。」


信幸は動力部分が空欄になった飛行船の設計図をもって、

鍛冶ギルドを訪ねていた。


「まー、言われれば作るが、自分たちで作った方が早いんでわないか?」


「そうなんだが、恐らく、こちらの世界でも必要になる技術だと思うから、

 勉強だと思って、作ってみてくれ。」


「って言われてもな。材料はどうすっかなー。

 この間、連邦からの輸入が止まっちまって、

魔物由来の素材の在庫が怪しいんだよな。

 まあ依頼だから、やるけどよ。」


「湯水の如くとはいかんが、見積もりをくれれば、

こちらの余剰分を出すことはするぞ。」


「ほう!なら、頑張らんとな。明日には渡すから、城に居てくれ。」


そういって、いそいそと自分のデスクに向かい、

素材集であろう本とチョークを出して、

何やら計算をし始めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


信幸は工業街を祠へ向かって歩き始める。


その後ろを青龍が静かにそして気配を隠して、ついていく。

その顔は少し不機嫌そうな不安そうな顔をしていた。


そのなんとも言えない圧をひしひしと感じながら、信幸は先を歩いていた。

しばらくは耐えたが、我慢しきれなくなり、路地へと入り、振り返る。


「何か言いたいのか?」


「生徒もいるのに、作らせるのですか。それでなくとも流通が滞って、

 品質の低いものが出回っているというのに。

 あまつさえ、我々が手助けしなければ、

土地は痩せ、自然は衰え、資源は低品質になります。

 もう、滅亡までもう少しのこの世界で何を学ばせるというのです。

 やらせる意味も救う意味もないでしょう。」


青龍は一息でそこまで言うと、睨みつけた。


「はー。この世界に最初に来たのは誰だ?」


「それは、あの方とその教え子です。」


「お前はあいつらに、もう救いようがないから、この世界は壊してしまえ。

 そう伝えるのか。」


「それは・・・。」


青龍は主たる信幸にそう言われ言葉に詰まった。


「青龍、お前はいつから、そう結論を急ぐようになった。

 まあ、お前がそういうのもわからんでもない。

 一度滅びた世界だしな。」


「それはどういう?」


「あとで、六花にでも聞け。だが、それでも世界は再構成された。

 それはひとえにこの世界がまだ生きたがっているからであり、

 女神も未だ諦めてはいないからだ。

 それにだ、今回なんとなくだが、最後の最後には、

紅葉がどうにかする気がするんだよな。

 勘だがな。だから、種は蒔いておくに限る。未来がある限りな。」


「勘、ですか。」


そういって、青龍は苦笑を浮かべる。

信幸の言うこともわかる。女神もその眷属も守護龍もだれ一人として、

精霊が乱したこの世界ももとに戻すことをあきらめてはいない。

それに、生徒も紅葉もまだもとに戻せると信じている。

なら、主はその手助けをするだけなのだろう。

そう考えるとあの方が進む限り、この人は助言し手助けするのだろうな。

そう考えるとまた自然と苦笑がこぼれた。

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