道中の不安
「信兄?」
紅葉は難しい顔をしている信幸に静かに話しかけた。
「うん?ああ、何でもない。」
「何でもないって顔じゃなかったんだけど。」
「ふ~。神戸。」
「はい!」
今まで、静かに立っていた神戸が、信幸に呼ばれ、近くまで行く。
「この間、いちゃもんをつけたり、力で脅してきたのはどの集団だ?」
言われ、腕輪のマジックボックスから、手帳を取り出し、ペラペラとめくり、
報告をする。
「えーと。まず、商売に文句をいってきたのは、商業ギルド、
その後はそのギルドが国と教会から力を借りてました。」
それを聞いた信幸は自分の頭の情報と差異がないことを確認し、
紅葉のほうを見る。
視線を向けられた紅葉は首を傾げる。
それを見た日野と富士以外の生徒たちはため息をついて、
ジト目で紅葉を見た。
名取が再びため息をついて口を開いた。
「物流と人心を抑えている相手に、どうやって立ち向かうのか、
また、護衛として、兵を雇っているような相手に、
どうやって道中進めばいいのか。ってとこに悩んでいるんですよね?」
「ああなるほど。」
そういわれ、紅葉も納得し、自分がなぜそこを思い至らなかったのか反論する。
「でも、でも、だから、エンデとアル、忍を呼んだんでしょ?」
「保険だ。あいつらが来るまで待つのか。それとも、進むのか。」
「準備の間を与えずか、準備の間を与えるか?」
「そうだ。ここまで言えばわかるだろう。」
「わかってましたよ。」
そう言って、紅葉は不貞腐れた顔をする。
「ならどうする。」
そう聞かれ、真面目な顔に戻り、口を開く。
「先に進みましょう。エンデなら、ある程度進んでも私たちの場所はわかります。
それに、村町を外れた場所を進めば、問題はないはずです。」
そうきっぱり紅葉が答えた。
すると、その成り行きを見ていたセレスが口をはさんだ。
「あのー。レンカーンまでの道中を気にしています?」
「そうだけど?」
「空はどうでしょう?」
それを聞いた、信幸を含む全員がそれが可能なことに気づき呆然とした。
「あれ?変なことを言いました?」
「いいや。そうだよな。龍と竜の力を借りているんだから、
そこを思いつかないとだよな。」
「ああ。そういうことですか。龍と竜が6体になりましたので、
ある程度の大きさのものなら、人形のほうでも浮かせられますよ。」
「そうなんだ。うん。なら、待ってから進もうかな。」
「そうだな。俺の方でも準備があるから、そうしよう。
緑竜と海竜はこの人形に力を分けてくれ。」
そう言って、精巧な蛇腹状の竜の置物を取り出す。
言われて、芸能神のそばに蜷局を巻いて控えていた2体の竜は、
人形に力をそそぐ。
「では、私はこの国を中心に以西に悪意ある物が入り込まないように、
結界を張ります。」
「頼む。そうか。そうだよな。それも女神だからできるよな。」
「神歴は長いけど、実務歴がないからね私たち。」
「六花と流治、エンデなら。気づいたんだろうがな。」
そう言って、二人は失態に対して、反省をした。




