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女神と戦乙女

「もう少しで到着よ。」


そういって、六花は水流を操作して、水中洞窟へと船を動かす。


膜に張り付いて、水の中を見ていた生徒たちは、その声を聞いて、

荷物の確認と装備を取り出す。


船の端で左膝を立て、右足を伸ばし、

目をつぶって船の縁に寄りかかっていた流治が

ピクリと身動ぎをすると、コバエを払うように左手を払う。


すると、船の前に右下から、左上に水流が現れ、船が揺れる。

慌てて、六花が船を立て直し、流治の方を振り返り怒鳴る。


「流!」


「悪い。居眠りをしていたら、殺気を当てられたから、つい。」


流治が苦笑いをしながら、謝る。

流治が起こした水流の先では何かが洞窟の天井に埋め込まれたように

穴と亀裂が入っていた。


「いいね。風の能力は。私も戦いたいけど、海の中じゃ、半減よ。」


紅葉が羨ましそうに流治に言う。


「秋姉は面倒だからやめて。」


そのセリフに皆が苦笑する。

その間にも船は進み、木の壁が見えてきた。


「どうやら、水の力は弱くなりすぎて、木の力で守っているらしい。」


「水というより海龍ね。生命と水の両方をつかさどる。」


「鍛冶神が言っていた水龍はこっちか。確かに、こいつが弱まると不味いな。」


「でもどうやって入るんですか?これ。」


名取が疑問を口にする。


「流。」


「了解。」


そう返事をすると、船首に立ち、二本の刀を逆手にもって振りかぶる。

そして、思いっきり、振るうと、空間が切れるように木の壁が後方へと吹き飛ぶ。


「派手ね。」


「サイズがサイズだからな。」


そう言って、さっさと定位置となった、船尾の隅へと戻った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「水はなく。空気があるわね。」


そういうと六花は着底させ、結界を解除し、下船を促す。


「さて、祠はっ。くっ!」


「ぼけっとしすぎ。」


水流が襲うのを感じ六花は慌てて、水の結界を張るが、

とっさのことでうまくできなかった。

それを流治がカバーするように水流を吐く龍を吹き飛ばす。


「お怒りのようですね。」


「自らの主を傷つけられたんだ。女神の仲間であろうとなかろうと、

 殺しにかかるんだろうよ。」


そんな会話をしつつ、生徒と信幸、紅葉は祠へと向かう。


「任せていいんですか。」


「大丈夫だろうよ。俺はそれよりも、あいつが龍たちを敵認定をする前に、

 事を終わらせられるが心配だよ。」


「敵認定するとどうなるんです。」


「この辺一帯が消える。」


「はぁ!?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「で、これが祠なわけだが、これか?」


そこには琵琶が置いてあった。


「ギター?」


「ああ、そこは中学生だな。耳なし芳一。を知らんか?」


「平家物語でしたっけ?」


「あの和尚さんが持っていた楽器。だな。」


「私は嫌な感じがする。」


「お前とは相性が悪いかもな。どう考えても女神だろうし。」


紅葉が嫌そうな顔をしながらも、皆と一緒に力を籠め始める。

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