水中神殿
「あらかた片付いたかな。」
紅葉は伝声管にそう問いかける。
<はい。周囲の港および入り江から出て来る船はありまえん。
増えていた船も今のところ増える様子はありません。>
「でしょうね。」
紅葉は先ほど慌てるように流治を追いかけていった六花の様子から、
流治が何かをしたのだろうと考えた。
先ほど遠くの空にいくつか光の柱が立ち、敵味方ともに驚いたこともある。
「ふい~。」
そんなことを考えながら、甲板にでると、気の抜ける声を上げながら、
六花が下りてきた。
「いや~。大変だったよ。流治が切れて、この世界を終わらせようとしてて。
まぁ。一回終わったんだけど。」
「ああ。システムが止めろって言ったんだ。」
「そうそう。ま、あれで精霊もしばらくおとなしくするでしょう。
あっ、後、神殿の位置を把握できたよ。水中の中だった。
片付けをして、行こうか。」
「そうね。」
そう言って、生徒に撤収の準備をさせ、信幸が保管していた、小型船を出し、
順次乗り換える。
「忘れ物はない?」
「ないです。一応、主砲、艦橋、動力室は確認してきました。」
「了解。じゃあ収納しちゃうね。」
そう言って、六花が触れると光の玉となって、六花の腕輪に消える。
それを確認すると振り返り、宣言する。
「さぁ!海中探検に出かけよう。」
「え!?どうやって!?」
大野が驚いて聞き返すが、六花はにやりと笑うと、手を挙げる。
すると、海水が船を球状に包み込み、沈み始めた。
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「えっ。これって。」
「私の能力。水と親和性が高いから、これくらいわね。
さあ、しばらく、水中遊泳をお楽しみください。」
そんなことを言う六花の後ろに影が浮き上がえり、
人型を形作る。
それを見た生徒は臨戦態勢をとるが、紅葉と信幸はそれを眺めた。
そして、顔がはっきりとすると、それは六花の頭を叩いた。
「あてっ。」
「置いてくな。」
現れたのが流治とわかり、生徒はほっとした。
「探すのに苦労したぞ、俺は水の適正が低いんだからな。」
やれやれと言った感じで、腰を下ろす。
すると小さな竜が下りてきて、流治の腕輪へと消えた。
「で、六花どこに行くの?」
「ここから、ここの王都側に行ったところに、海底の洞窟があるの。
そこに行くわ。」
「王都?」
「そうだけど?」
紅葉が行先を問いかけ、
それを聞いた流治が怪訝な顔をする。
「どうしたの?」
「いや、魔法陣があったんだが、それがもしかしたらと思ってな。」
「まさか・・・。」
流治が懸念を口にすると、六花はひきつった笑いをする。
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「ああ、神が与えたもう、泉が・・・・。」
ーゴゴゴゴゴゴゴー
「何の音だ?」
ーギュオーー
何かが穴から出て、鳴き声を上げると、海水が沸き上がり、渦潮を作り上げ、
何もかもを飲み込んでいく。
穴から出てきた何かは周囲を確認し、穴に戻っていった。




