虚無
水の精霊が手を振るうと、水面に何かを映し出した。
それは巨体な井戸のような場所に子供たちが投げ込まれる姿だった。
「何だ、これは?」
低い声で、流治は問うた。
それに対して、風の精霊は喜々として答えた。
「すごいでしょ。願いをかなえる井戸。まあ、命は生み出せないけど、
物を人や魔道具から生み出せるんだ。
あと、魔物や精霊を人に変えられるんだよ。
まあ、今回は軍船が大量に欲しいからか、孤児や未亡人を使って、
願っているみたいだね。きゃははは。」
「お前らが作ったのか?」
「そうだよ。なんでも、どこか別の世界にある
願いの泉ってやつを元にしたんだ。」
「そう、か。」
「なに?それだけ。残念だな~。」
「そうだな。残念だな。こんな世界はいらんな?」
「え、な」
『The END』
その瞬間、世界は虚無へと消えた。
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ー世界の成長が強制的に停止。ー
ー原因を調査。ー
ー管理者『観測者』兼『終焉を告げる者』が世界を終わらせたことが原因。ー
ー人類の悪行を確認。ー
ー・・・・ー
ー同世界にいる『調律者』兼『初まりを始める者』を確認。ー
ー世界を分岐。その際に情報を提供。ー
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「じゃんじゃん行くよ~!打て打て!」
一方的に船を打ち、近づかせることなく船を無力化していく。
『秋姉。船の数が減らない。それどころか、
今までなかった場所に船がどんどん出来上がっていく。
うん?これは?げっ。』
「どうしたの六花?」
『ごめん秋姉!流治を止めなきゃ。皆後よろしく!』
そう言って、艦橋から六花が飛び出るのを、紅葉は見送った。
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六花は先に飛び立ったであろう流治を探していた。
見つけたころには風の精霊が高笑いをしていた。
「もう!it's a little world!」
そう六花がいうと、流治と精霊を丸い球体が包む。
そして、しばらくすると、ぼろぼろと球体がくずれ、
流治だけが現れた。
「流~。」
「悪いとは思うが、謝らんぞ。それに、まだやることがある。」
そういうと、腕輪から竜のゼロが飛び出て、流治を連れて、
高速で飛翔をした。
「もう。しょうがないな。」
そういうと、六花は苦笑して、船へと戻った。
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「ここか。」
流治は水の精霊の水鏡の魔素のつながりをたどり、
問題の場所へとたどり着いた。
「ゼロ、やれ!」
ーガア!ー
そう一声吠えると電柱ほどの太さのレーザーのようなブレスが
対象の建物へと突き刺さった。
「すごいな。対象だけを消し飛ばすなんて。」
<さすがに、さんざんやりすぎだといわれましたからね。>
「まだ、ありそうだな。」
似た魔素がまだあることを感じ、再び、ゼロに高速で飛翔させた、
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雅兎国の社の中、風の精霊が水の精霊に吠えていた。
「何だよ!あれは!聞いていないぞ!」
「落ち着きなさい、火の精霊が言っていたじゃない。」
「それでも、何をされたかわからないまま消されたんだぞ!
それに、風も水もない空間に閉じ込められて!」
自分の属性が近くにあれば、分身といえ逃がすことができた。
それに恐怖を覚え、風の精霊は混乱をしていた。
「しょうがないわね。」
そういうと、水の精霊は風の精霊の背後に周り、
手を突っ込みコアとなる魔道具を破壊する。
「なに、を」
「リセットするのよ。主が残した、コピーはまだある。」
そういうと、手を引きぬき、形が跡形もなくなるのを見守る。
「ふふふ。私以外は使えないわ。そうでしょ、マスター。」
そういうと、水の精霊は保管していた、火、土、風の宿るコアを飲み込んだ。




