箱庭持ちの物量戦-船準備編-
「この辺でいいかな。」
「本当にやるの。六花?」
紅葉は沖合で船を止めた六花を不満げな顔で腕を組みながら見つめた。
「やるよー。だってそれこそ一番楽に片が付くもの。
ほら、流ーも早く出す。」
言われた、流治は叔父から借りてきた戦艦大和のプラモデルをだす。
「コピーしたらしまうから早くしてくれ。」
そう言って、六花に渡す。
「-複製-。ほら。」
「確かに。では、返してくる。」
そう言って、流治はドールから抜ける。
「そんなにビビる必要ないのに。ま、こっちはさっさと実体化しよう。」
「ところで実体化ってなんですか?」
富士が六花に聞く。
「実体化ってね。プラモデルや人形を実際のものと同じように
動かせるようにする魔法だよ。」
「すごいですね。」
「ま、私が秋姉や信兄の力を借りないとできない魔法だけどね。
さて、やるよ。触れて。」
言われた信幸と紅葉はコピーをしたプラモデルの戦艦大和に触れる。
「さてっと。思いを形に-創造-」
そう六花が唱えると、光の玉となって、海へと落ち、
そして、徐々に大きくなると船の形になった。
生徒はそれを唖然として眺めた。
「家具、床材、弾丸はこっちで作った。」
「飛行機、砲台、船体の素材の置換と錬成は私でやったわ。」
「喫水線の位置よし!うんいいね!さあ、乗船よ!」
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「間に合ったか?」
「ええ。まだよ。」
流治のドールが起き上がり、六花に尋ねる。
その周りを、小さい人形がトコトコと歩き回っている。
「妖精?精霊?」
「ああ。これか。ゴーレムだな。パペットタイプだ。」
流治が不思議そうな顔をしていると、透明な画面を操作していた信幸が
顔を上げて答える。
「ああ。なるほど。そういえば生徒と秋姉は?」
「探検だって。まぁ。旅客船に負けないぐらいの船だから、
見ごたえはあるだろうね。」
流治が周囲を確認して聞くと、六花がそう答えた。
「配置は?」
「指揮所には私、宮城、富士。主砲に、秋姉、名取、神戸。
機関室は信兄、大野、大月。
観測機に流治、日野。でどう?」
「観測機?必要か?レーダーとソナーを着ければいけるだろう。
空中からの測量って、精度をだすためだぞ。
現代の技術なら、相当精度がでるだろう。」
「じゃあ、レーダーとソナーは日野ちゃんと富士くんに監視をお願いして、
信兄、設置と作成よろ~。」
「へいへい。」
そう言って、信幸は艦橋から出ていく。
「で、艦載機はどうするの。」
「特攻でもさせるか。」
「コストに見合わない。」
「魔法型ガトリングでも積んで、複座から打たせるか?」
「それいいね。」
「まじか!は~。設置してきます。」
「よろ~。」
藪蛇だ~。とつぶやぎながら。流治は船尾甲板に向かう。
その後ろ姿を笑いながら見送り、双眼鏡で水平線を見渡した。
しばらくすると、紅葉が生徒を連れて戻ってきた。
「どう。楽しかった?」
「広くて、周りきれなかった。」
「でしょうね。」
ケラケラと笑いながら、六花は返した。
「配置は。」
「そのホワイトボードに書いてある。」
後ろの壁に引っ掛けられたホワイトボードを指しながら答える。
「え!いつの間に。」
「秋姉は、引率よろ~。」
「了か~い。行くわよ~。」
「「は~い。」」
「大野くんと大月くんは信兄が来たら、船尾動力室へ向かって。」
「「はい!」」
「さてっと。いつ来るかな?」
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沖合に急に大きな島のようなものが現れ、周囲の島では大騒ぎが起きていた。
「あれはなんだ!」
商業ギルドのマスターはそれを指しながら喚いた。
だが、だれもそれにこたえることはできず、唖然と眺めていた。
「王からの伝令です。」
商業ギルドのマスターの後ろに真っ黒な男が現れ囁く、
「何だ?」
低い声で聞く。
「例の者たちが沖合に出たのちあれが現れた。
よってやつらのものであろうとのこと。
奴らを倒し、あれを奪えば一挙両得であろうと。」
「そちらも出してくれるんだろな。」
「王からは時刻を指定すれば、討伐のためという理由で兵を動かすと。」
「わかった。2時間後だ。」
「承りました。あろ、教会も神にお願いすると。」
「僥倖。では、準備をしよう。」
そういうと真っ黒な男は消える。
「くくく。目にものを見せてやる。」




