箱庭持ちの物量戦-改善編-
売り始めて、2週間程度が過ぎたころ、微妙な小競り合いはあったものの、
スープは売れに売れた。
「さて、そろそと、パンや野菜、果物を売ろうかな。
あっ。秋姉は肉の調達をお願い。」
六花がそういったことで、船が2隻になり、生鮮食品の販売が始まった。
販売員は王国騎士団から、中年の男性と若い女性を派遣してもらった。
「手際が良いし、計算も早いわね。」
「私、商家の末っ子なんです。騎士団には後方支援の部署で、
護衛の任務も兼務していたので、自衛程度ですが、戦闘も。
新設する部門が暗部だって聞いてはいたんですけど、
新しいことを学べるかなって。
とっても今楽しんでます。商売の方法なんて、
貴族や長老と仲良くなればいい、お金を渡して懐柔すれば良いって。
それが嫌で、騎士団に飛び込んだんです。
でも、今回、商売の仕方を一から学べて、しかも自分の役にも、
国の役にも立てて、本当に嬉しいし、楽しいです。
あと、これでうまくいけば、国公認の商家を持っても良いって、
約束をもらったんです。」
そう言って、女性は六花に笑う。
「そう言えば、名前を聞いてなかったね。私は六花。」
「ええ。知ってます。有名ですもん。家名はカザマですよね。
悪徳公爵を倒し、国に利益をもたらす、救国の英雄。
リカです。よろしく。彼はベイル。私の家宰です。
立てまえは頭取。女が頭取だと舐められるでしょう。」
「そうね。つらいわね。お互い。」
差し出された手を握る。
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「どういうことだ!うまくいくというから、
この国に膨大な出資と協力をしたというのに!」
「私も神の御名において、お声を届けるだけですので・・・。」
「なぜだ、あの商会はなんだ。テンクル王国の国旗を掲げて。」
「テンクル王国は浸透が薄く、情報がありません。
公爵とつなぎをつけ、浸透を図る手はずでしたが・・・。
何者かに、殺害、その後、国が接収、
カザマとかいう貴族がその屋敷を使っております。
暗部も帰ってきませんでした。
またあの商会もカザマが関わっているらしいということまでは分かりました。
また、ビエツ・フィンも当国家が関わっている商家、商隊との
取引が停止しました。」
「何!大国が3国も取引を停止したというのか!どういうことだ!」
司教とでぶった男、黒いスーツの男そして、
汗をダラダラと流す男の4人が薄暗い部屋でわめいている。
ここは商業ギルドの隠し部屋である。
それを闇と影に紛れて、暗視カメラで録画しているものがいた。
(こいつら、大丈夫か。隠し部屋なのに魔法感知もないなんて。
嫌、精霊が関与しているなら、魔法感知はだめか。)
暗い場所に紛れている流治はため息をつきながら、
監視を続けていた。
「くそっ!なら、あのカザマとかいうやつらを殺せば、
うまくいくのか?」
「あー。はい。わかりました。」
「神はなんと?」
「今すぐに、消せと。そうすれば、今はまだもとに戻せるだろうと。」
「ですが、難しいですよ。腕が立つものがいなければ・・・。
あの若いのも、大人の男女も。特に、奥から出てきた背の低い男は
やばい気配がありました。」
「護衛を全員出してもらえ。本国にも兵を少しだしてもらえ。
少しなら可能だろう。」
「可能だと思います。」
「やれ。余裕を見て、10日後だ。それ以上は待てん。その際は護衛だけでやる。」
「わかりました。」
「では、解散だ。」
そう言って、4人はでていく。出て行った4人を見送って、流治は影で移動をした。




