箱庭持ちの物量戦-販売編-
「さてっと。食べ物はー。うん。いい感じ。」
「だな。俺のほうもいい感じだ。」
信幸と六花は自分たちの箱庭に腕輪からアクセスし、
野菜や果物、魚の成長の繁殖具合を確かめて、満足そうにうなずいた。
「あれは何を見ているんです?」
後ろで、馬車に寄りかかりながら、音楽を聴いていた流治に
大野が訪ねる。
尋ねられた流治はヘッドホンを首にかけてから顎でしゃくって答える。
「信兄は木と雷の属性を持っているから、植物と鉱石関連を、
六花は水と生命の属性を持っているから、植物と魚をそれぞれの
箱庭で育てているんだ。」
「その箱庭ってなんですか?」
宮城が重ねて質問をする。
「いわゆる小世界だな。次空間や世界の狭間に
自分の属性を使って生み出した世界、空間のことだ。」
「あれ?それだと秋ちゃんも持っているんですか?」
「いや、俺や秋姉は空間を作っても生命を生み出せないし、
循環をさせることが難しいから、個別では箱庭をもっていない。
こと、箱庭に関しては、サポート要員さ。」
そんなはなしをしていると、六花が流治に向かって、手をこまねいた。
「呼ばれたから、行くな。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「見張りをお願いしようと思ったんだけど、紅葉と生徒たちに頼んで、
流は料理に回って。」
「どうした。お前らだけでも、行けるだろう。アンだって、手伝うんだから。」
「よく考えたら、スープやおかゆだから、
じっくりことこと調理をしなければならないじゃない。
だから、種類を作ると、人手が足りないのよ。」
「は~。了解した。値段はどうするんだ。」
「ふふふ。鉄貨1枚よ。相場の半値以下。
儲けは出ないけど、客をつかめればいいから、
しばらくしたら、パンや肉を定価の1.5倍で売れば、回収はできるはず。」
「ま、儲けは考える必要はないしな。
スープはコンソメ、コーン、味噌、ブイヤベースかな。」
「だね。具あり、具なし、クルトンあり、なし。かな。」
「俺の能力で促進はできるから・・・。道具は?」
「えーと。」
「こちらです。」
そう言って、アンが、寸胴鍋を4つと、湯切り、麻布、包丁、器と
次々に出していく。
「さすがね。」
六花が感心しているよこで、流治は出された道具をチェックしていく。
「器は紙にしよう。インパクトがあるし、分解もされるから。」
「そうですね。では、こちらを。」
「うん。いいね。えーと、信兄!」
「応!こっちも、用意はできてる。」
呼ばれた方を見ると、館船に改造された、船が見えた。
「よし!じゃあ戦争のお時間です!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
六花の作戦は功を奏し、物珍しさから、売れに売れた。
5日目になったころ、船の周りを、うろうろするものが増えた、
どう見ても、ごろつきの類で、売り子の女子生徒と六花を見つつ、
奥の料理をする、流治とアンの手つきと扱う素材も盗み見ようとする。
流治は、料理をしながら、それらの視線を感じつつ、内心ため息をついた、
レシピを盗まれたところで、真似などできるはずがないからである。
特に、調味料系は向こうの物を使っており、また、時間系の魔法を使って、
最後の調整をしている。
この世界でそんなことをできるものはいるはずがない。
(次はレシピ登録をさせて、無断使用か。もしくは、強行手段か。)
などと、考えていたら、外が騒がしくなった。
「おう!おう!誰の許可を取ってこんな、うわー!」
流治はため息をつきながら、振り返ると案の定、
紅葉がアッパーの姿勢のまま立っていた。
「ごちゃごちゃとうるさいな!もう!」
「秋姉。まだ、口上の途中だったよ。
だから、脳筋とか瞬間湯沸かし器とか、って言われるんだ。」
「あれ?まだだった?だって、気に入らなかったんだもん。」
「だもんじゃねーし。」
流治はそんな会話をしながら、落ちてくる人をやんわりと落ちるように
風の魔法を発動する。
流治は男を部下であろう別の男に渡し、料理を再開するために戻りながら、
紅葉の横でつぶやいた。
「はー。次はうまくやって。死人がでないようにね。」
それを聞いた紅葉はしょんぼりとした。




