箱庭持ちの物量戦ー相談編ー
「宰相さん。」
「おや?フレイ殿。王城までいらっしゃるとは珍しい。
いかがいたしました?」
「ちょっと。国家間の話になるんだけど・・・。」
「それは、また。場所を移動いたしましょう。」
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自分の執務室に移動して、フレイに紅茶をだすと、向いに座り、
話を切り出す。
「して、ご用件は。」
「王国の名を借りたい。」
「それは・・・。また・・・。どういった理由でしょうか。」
フレイの建前も何もない、いきなりの本題に戸惑いながらも、
そう聞き返す。
「群島国家ヴェネアテの現状は知っている?」
「一応、手の者を入れておりますが・・・。」
「市場の情報は?」
「それは・・・。」
「だろうね。この国も若干そこを突かれているものね。」
ボソッと言われたことにムッとして聞き返す。
「それはどういうことでしょうか?」
「情報の偏りがあるんだよ。」
「それは・・・。どういった部分でしょうか。」
言われたことがわからず聞き返す。
「おそらく、事件や事変、軍や王侯貴族、噂、そういった、
人に関する情報はあるけど、物価、所謂物の価値や
物の過不足に関する情報が弱いんじゃない。」
そういわれ唖然とする。確かに民衆の不平不満から、
ある程度不足しているものや、商会や王国への不満は分かったが、
価格や品物そのものへの調査は行ったことはなかった。
「それは・・・。調べてません。」
「うん。それは今は仕様がないけど、今以上に発展や防諜に力を入れるなら、
頭に入れた方がいいよ。相手が、自分と同じ土俵、
特に武力で戦争をするとは限らないからね。」
「頭に入れておきます。ところで、それと王国の名を借りたいことは
どのようにつながるのでしょうか?」
訪問の理由を再度聞き返す。
「実は現在、ヴェネアテは精霊と商人のせいで、
国の農業、漁業が滅茶苦茶の上、物の値段が上がっている。
このまま行くと財政と雇用が死んで、大変なことになる。
そこで、六花が後ろ盾を得て、商売をしたいと言っているんだ。」
「なるほど、そのために王国の名を借りたいと。」
「そういうこと、この王国ご用達もしくは王族が関与する商家として、
商売を展開できれば、他の横やりもうまくさばけるしね。」
「ふむ~。一応王には承認と説明をしますが、特に問題はないでしょう。
ただ、見返りが欲しいですな。」
「そういうと思ったよ。とりあえず、家の諜報部をその商家に入れるから、
そちらからも人員をだしてよ。
そしたら、教育をしながら、この国の防諜もするから。」
「なるほど、それはいいですな。技術の提供ということですね。
もう一声、そちらの製品や他の技術も提供してくれませんかね。」
ここぞとばかりに、やりたかったことをねじ込む。
それを聞いたフレイはため息をつきながらも答えた。
「それは前にも言ったけど、別料金。
技術者をそっちで相応の金額で雇ってくれるなら考える。
計画書を頂戴よ。見積をだすから。」
「でしょうな。ま、今後はその商家に依頼を出せば良いのでしょう。」
「そういうこと。いつでも私たちは教えるよ。
ただ、製品は普及させるつもりがあるから、
少し価格を抑えて、そちらには提供するよ。」
「了解しました。まあ、それをうまみとして、王へは話をしましょう。」
そういって立ち上がった宰相にチクりとフレイは釘をさした。
「そうそう。この国でも物価の操作が行われていたよ。
どうにかしないとね~。」
宰相はそれを聞いて唖然としたが、
すぐに復活すると王へと急いで報告と相談に向かった




