箱庭持ちの物量戦ー準備編ー
「さて、何で勝負しようかしら。」
「私が生徒と一緒に魔物でも狩ってこうようか。」
悩む六花に紅葉がいう。
それを聞いた生徒たちはいやそうな顔をする。
「そうね。秋姉はそれでいいかもしれないわね。
問題は売り方。そうね。王国の保有する商家か、王国公認の証明があれば、
いろいろと売れそうね。」
六花は紅葉の提案を流し、考える。
「ビエツの許可証は俺が発行できる。」
「そうか。信兄が今、暫定の王様だっけ?」
「といってもお飾りだがな。」
そういって、苦笑いをした。
「テンクル王国は現状の説明をすれば許可証を出しでくれるかな?
うん。それで行こう。商品はあそこにあるし。屋台式か露店式かな。
ギルドは通さないで・・・。そうだ、前に作った屋台を使おう。
あとは値段設定、か。それはみんなにお願いすればいいか。
うん。そうしよう。」
そう、呟くとすくっと立ち上がり、注目を集めた。
「じゃあ。作戦を説明するね。
まず、秋姉はこの国のモンスターの討伐を優先で。
信兄はビエツにいって、許可証の発行と商材の入手。
流は引き続き情報収集と何かあったときの対応。
生徒のみんなは私のサポートで。
とりあえず、明日は値段の調査と許可証の準備を・・・。」
「六花さま。」
六花が作戦を説明していると、紅葉の後ろから音もなくアンとレイが現れる。
「何、アン、レイ。」
「申し上げます。値段はここまでの道程の中、買い物の傍ら調べておきました。
こちらです。」
そういって、六花へと紙片を渡す。
「これ、本当?」
「間違いないかと。」
六花はアンからの紙片を水で溶かすと、
少し思案して、明日の予定を再び伝える。
「そう。わかったわ。確認してみる。
明日は流と信兄は許可証を取りにテンクルとビエツにそれぞれ向かって。
テンクルにはフレイがいるから。言えば、取り次いでくれるから。
秋姉と生徒のみんなは私と一緒に市内を回ろう。」
『了解!』
みんなの返事を確認すると、六花は再び、アンのメモについて考え始める。
メモにはこう書かれていた。
ー鑑定で値段と内訳が見えました。記載から操作の疑いあり。ー
六花は腕輪の中から、そっとボールペンを取り出した。
そして、システムにアクセスをして、鑑定と同じことをする。
ー
六花の愛用ボールペン。
異世界のボールペンで、この世界ではオーバーテクノロジー。
価値の算出は不可能。
ー
「なるほど。厄介なことになりそうね。」
そういって、ペンを両手でくるくるとまわしながら、
焚火をじっと睨んだ。
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翌朝、六花と生徒、紅葉は町中に繰り出した。
「六花さん。何を見るんです?」
「何が売っていて、何が売っていないかよ。」
「どうしてです。」
「前者は値段を下げて品質の高いものを売れば売れるし、
後者は少し位高くても売れるからよ。
そうやって、需要と供給を見極めて、商売はするの。
ライトノベルは読む?」
生徒たちは顔を見合わせてうなずく。
「そういった本の中で、商売をするときって。
大概その世界にないものを売るのよ。
でも、それってもって1年ぐらい。
市場に供給しきればその商品は売れなくなる。
だから、物語の途中から、商売系の話は描かれないし、
もしくはその後を書かずにエンディングを迎えるのよ。」
六花はそんな身も蓋もないことを言いながら、
システムから並んでいる商品の情報を引っ張る。
ー
エステリア麦の粉 5Kg
強力粉
混ぜ物があり篩いにかけないと食べれない。
価値 鉄貨4枚
(内訳:
卸値 鉄貨1枚大銅貨1枚
輸送費 鉄貨1枚大銅貨1枚
利益 鉄貨1枚 )
ー
ー
サンレンの実
果物
地球でいう柑橘系の果物。少し傷がついている
価値 鉄貨 1枚
(内訳:
卸値 大銅貨1枚
輸送費 銅貨3枚
利益 銅貨2枚)
ー
小麦粉は大鉄貨1枚鉄貨3枚で売りにだされ、サンレンの実も鉄貨2枚と
どれも価値の2倍で売られている。
「価格操作をしている人間がいるわね。
これじゃあ。この国で商人は仕入れないわ。」
そういうとため息をついて、他の店も遠巻きに見て回る。
生徒たちは六花の不穏な言葉に顔を見合わせ、後ろをついて回った。




