群島と水の国ヴェネアテ
「皆~潮の香がしてきたよ~。」
「「おー!」」
小高い丘に、馬車を止め、屋上から海のほうを見渡す。
「フーン。あれがヴェネアテっか。」
「水の国っていうからどんな感じかと思ったけど、
長崎っぽいですね。」
「長崎とオランダ、あとイタリアを足した感じだな。」
眼下には風車と色とりどりの畑、縦横無尽に張り巡らされた水路、
それらをもった中ぐらいから大き目の島が無数に見えた。
「う~ん。これはどうしようかな。」
「どうしたんです?」
「いや。水と風の精霊のホームグラウンドで、かつ、祠の位置がもしかすると、
水中となると、やっかいだな。てな。」
「あー。秋ちゃんと信さんの相性が微妙ってことですか。」
「倒すだけなら簡単なんだ。紅葉の土、俺の木でどうにかできるから。
ただ、水中、水上行動には向かんのよ。こりゃ、流治と六花に手伝ってもらうべきかな?
とりあえず、ここをキャンプ地とするか。」
そういって、杖を突くと、高床のログハウスができあがった。
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『でっ、連絡してきたと。』
「ああ。馬車を浮かべてもいいんだが、動力がな。玉龍たちにひかせてもいいんだが・・・。
いざというときに困るだろう。」
『それもそうね。見た目馬が水の上を走っていたらなんだと思うし、
大きいから小回りも効かないわね。』
「でだ、何か案はないか。」
『精霊と流の分御魂をかしてもいいんだけど・・・、
解決にはならないわね。青龍、天后、白虎、天一、太陰。
彼らにお願いするのは違う気がするのよね~。
精霊の妨害は2体の可能性あり、とするなら、戦力の増強は必要。
船、船ねー。船体は信兄。問題は動力。水か風。火はだめね。
人数を増やしても邪魔になるだけだし。
やっぱり、そうすると私か流ね。はぁ~。』
六花は溜息をついて、しばらく無言になった。
『わかったわ。ドールを使う。私と流。二人で出るわ。はぁ~。
エンデが水晶と黒水晶でドールを作り上げ終えてるはずだから。
力を十分に使えるはず。』
「ご迷惑をお掛けします。」
『お兄にそれを言われると気持ち悪いわ。明日にはドールを座標に転移するわ。』
「了解。こっちは船を上げておく。」
『船の図面は送っておく。いいのがあるわ。オランダの船の家。
2艘にすれば、全長が短くてすむはず。』
「了解。作っておく。」
『楽しみにしておく。通信終了。』
通信終了と同時に、船の断面図、側面図、正面図が書かれた紙が現れる。
「こりゃー。作り甲斐があるな。」
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「でっ。これ?」
「そう。水晶のドール。作るの苦労したんだー。」
「でしょうね。なにこれ、水晶の骨格標本。違うわね。なんて言ったらいいの。」
そこには、頭は骸骨。体が骨格の外側に蛇腹の外殻でコーティングされた人形があった。
「どうよ。力作だぜ。2体も作ったしな。俺以外は作れないぜ。」
「そうね。空間の能力がないと無理ね。これ以上のものはないわね。
オーバーテクノロジーをいいところよ。はぁ~。」
エンデは腕を組んで満足そうにうなずいた。
六花は頭に手を当てて大きなため息をついた。




