鍾乳洞の先へ
<主ここです。>
「確かに、神気を感じるな。」
「私にはさっぱりよ。」
「それはお前に期待していない。
取り敢えず、進むぞ。」
岩の突起が上下から生え、
時々水滴がその間を落ち、洞穴に音を響かせる。
「うわっと、まるで、富士の樹海にある洞穴ね。
じめっとして、滑りやすくって、歩きずらいわ。」
「あっちももともと火山だからな。
同じような感じではあるだろうな。
ちっ、本当に歩きづらい。
仕方がない。全員俺の後ろからついてこい。」
そう言って、信幸は先頭に立つと、杖で地面へと勢いよく叩く。
すると、そこから木の板が生える。
そして、杖を動かすと杖の先端についてくるように木の板が
伸びていく。
「さすがだね。私じゃあそんな繊細なことはできないよ。」
「それも期待していない。お前はちゃんと作業をしてくれ。
あと後ろの警戒な。」
「しなくても大丈夫だと思うよ。私から漏れた魔力が
周囲の魔力を中和しているから。」
「何?どうしてだ。この前はそんなこと起きなかったろ。」
「だってこの間は火龍と土龍の魔力と私の魔力の親和性が高かったから、
抑えるので精一杯だったし、呪いを精霊がかけてたから。」
「あ~。そうか。そういうことか。相性的には紅葉は相克か。
なら、今回は楽ができるな。そうか~。なら、後ろでもぐもぐしてろ。」
「えっ。抑えなくていいの。」
「余力は残しておけよ。消費分は歩きながら補給しろ。」
「やったね!」
紅葉は飛び上がってよろこび、
後ろでアンから歩きながら食べられるものをもらう。
そして、食べ歩きながら、魔力を放出する。
周囲を警戒していた富士はふと鍾乳石の陰に動く物体が見えたので、
首を伸ばしてみると、魔法生物らしきものが崩れるところだった。
「なるほど、中和するとこうなるんだ。」
「わかったろ。魔物がわかなくなるんだ。わいていたものは崩れる。
ま、生物がいなくなるわけではないが、それらは、紅葉や俺には
近づかんだろう。力があるものを本能的にさけるからな。」
「はぁ。なるほど。」
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「ここだな。」
信幸達の前には水の『壁』があった。
「ですね。ここでなければどこだって話ですわ。」
「はぁ。面倒だがやるか。」
信幸は杖で地面をトンっと叩く。
すると木の板が切れる。
そしてそのまま、杖の頭を水の壁へつける。
「やはり、抵抗を受けるか。」
「ねぇ。信兄。クリスと大野と土龍にやってもらったら。」
「おま。そういう事はやる前に言ってくれ。
そうだよ、それが一番楽だよな。はぁ。というわけで頼むわ。」
頼まれた大野は変身し、土龍と融合、そして、紅葉からクリスを借り、
土のアーチを作る。
「ま、そうだよな。土なら、これくらい簡単だよな。属性的に。
もう少し、周りを頼ろう。というか、使うことを覚えよう。」
信幸はそうつぶやくと一番最後に中に入った。
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<ようこそ。よく来てくれました。
女神に助力を請われた者よ。>
「ああ。大変だったな。」
祠を守るように青と緑の竜が蜷局を巻きながら、
信幸達に話しかける。
<祠の中の薬箱に触れてください。>
そう言われ、祠の薬箱に触れ、魔力を流す。
すると、巫女服を着た緑の髪の少女が姿を現す。
<良くぞ解放してくれました。
これで、この辺りの地脈も水脈も元に戻せます。>
「できるだけ、早めに回復をお願いする。
随分邪気に中てられていたからな。」
<そうですか。そうですよね。
できれば、この薬箱の修理と魔力をいただけませんか?>
「いいぞ、さて、仕事だ紅葉。えーと鏡、鏡っと。」
信幸は六花謹製の魔力バッテリーの鏡をストレージから取り出す。
「紅葉。仕事だゾ。」
「ほいほい。」
紅葉は鏡に手を当て、ギリギリ魔力が残るようにし、
魔力を流し込む。
「よし。こんなもんか。あとはっと。」
そして、前回土龍の卵を孵化させたときと同じように魔法陣と鏡を設置し、
薬箱を置く。
前回と違うのは周囲に木の板が置かれている点である。
「よし、これでっと。」
一瞬、魔法陣が輝くと、前回同様祠が社に変わり、
薬神がはっきりとした姿になった。




