生徒たちの旅
「食料はある?」
宮城が後ろの富士に問いかける。
「ある。アンさんが気を利かせて、
冷蔵庫に少し入れておいてくれたみたい。」
車体の備え付けの冷蔵庫に卵、ハム、ウインナー、レタス、トマト。
棚に餅と各種調味料が入っていた。
「山にトンネルを作って通るとなると・・・。」
日野が地図を見ながらうなっている。
大野と神戸、名取も同じように考えていた。
「手前で一回野営をしないと、火を起こせない。」
「一回は作り置きを食べることになるかな。」
「アンさんが来れば食料は問題は解決かな~。」
「経路はこれで・・・。」
「何を気にしている。」
「ほら~。真っ暗だと方向が分からなくなるじゃん。」
「あ~。」
「それは問題として挙げておこう。食料の件も。」
そういって名取は筆記用具に入れてあった、
ポストイットに問題を書いてテーブルに貼っていく。
「この馬車の明かりは?」
「聞いた話だと、火ではないみたい。」
「この馬車って、魔石を使ったオール電化もどきじゃなかった?」
「それも一応確認だな。」
「もう、ないでしょ。」
「目標と経路は決まっているしね。」
「喫緊での問題は火と食料だもんね。」
「だな。」
「もうすぐ山の前に着くよ~。」
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『ぐむっ。ここか?』
「そうだけど。」
『ちっ。山がでかすぎて、半分くらいまでしか。
掘れんぞ。』
「このあたりまで、傾斜をつけて掘れる?」
『うん?ほぅ。ぎりぎり1日で行ける距離で、地上へ出るのか。
う~む。それも難しいな。それなら、まっすぐのほうが良いぞ。』
「そうですか。」
『うん?魔物か?』
「えっ?!」
『来るぞ。狼とゴブリンだな。』
「戦闘準備!」
各自抜剣をし、死角を補うように固まって構えた。
単調に突撃を繰り返す相手をいなしていると、
突如、火の玉や矢が飛び交い始めた。
「げっ!こいつら!」
「学習をしている?!リーダー格がいるみたいね。」
「鬱陶しい!」
『力を貸そう。』
「ありがとう!土壁!」
「うお!」
「はぁ?!」
大野が土龍の力を借りて作った土壁は通常の倍、
城壁のような高さと厚さを持った壁が現れ、
前面にいた、富士と大月が慌てて下がった。
「すまん!予想外にすんなりと魔力が作用した。」
「これは俺も気を付けないとだめだな。」
「だが、チャンスだ。富士、神戸、日野!速力を生かして、
リーダー格を探せ、宮城と俺で、遠距離から援護をする。
リーダー格を見つけたら、倒せそうなら、倒せ!」
「「「「はい!」」」」
「大野は壁を維持!大月はリーダー格がイレギュラーな存在なら、
火龍に協力してもらって倒せ!よし!行くぞ!」
名取は各自に指示を出し、そして、壁の上に上ると雷の魔法で、
的確に魔法使いとアーチャーを削っていく。
しばらくすると、3人が戻ってきた。
「「「あれは無理!」」」
「でかい狼とでかいオーガみたいなやつです。」
「ばれそうになったからあわてて戻ってきました。」
「そう、か。なら、大月、大野!後・・・。神戸!
一緒に行って、倒してくれ。落とし穴と火炎が当たるように、
神戸の指示に従ってくれ。馬車は俺と宮城で死守する。」
「了解だ。行くぞ!」
6人が林に消えたのを見送り、宮城が声をかける。
「死守って。大袈裟な。」
「まぁな。」
しばらく、壁の上から処理をしていると、林の奥で雷と炎の渦が天へと突き抜けた。
「おっ派手にやったな~。」
それが合図になったのか、残った者たちは塵尻に林の中へと消えていった。




