女教師は抜け駆けしたい。
ーカッチャンー
スッ。きょろきょろ。
(フフフ。誰もいないな。)
紅葉は暗い廊下にすり足ででると、辺りを見回し、
誰もいないことを確認する。
そして、気配を殺して、中庭を目指す。
吹き抜けを使って、城の裏まで飛び、
ダンジョンを一人で攻略するためである。
そろ~り。と後少しで中庭というところまでくる。
「姫様。どこに行くのです。」
「なっ!腕輪の中にいたんじゃ。」
待っていましたと言わんばかりに、
柱の陰からアンが現れ紅葉を止める。
「姫様のことです。無茶をするのは目に見えております。
明日までの御辛抱です。そしたら、皆さまと行きましょうね。」
「えっ。あっ。ちょぉ。」
「姫様。めっ。ですよ。レイさんや信様のご迷惑です。」
そして、そんなアンの後ろから覗き込むように現れ、
両脇を抱えられ、自室へと戻された。
そして、自室の前にはレイがいた。
「レイまで~。」
「信幸様の様子を見に行った帰りです。やはり、抜け出しましたか。
我々がいないことも気づかず、その上信幸様にご相談もせず。
いつになったら、そのような勇気と無謀を履き違えたような
行為を御止めになるのです。」
ベットの上に座らせられ、延々とレイの説教が始まる。
アンとベルは役目が終えたとばかりに
助けを求める紅葉の視線をスルーして、
部屋の入り口の両サイドに控える。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
朝日が部屋の窓から差し込む。
「おや?朝になってしまいましたか。
それでは、今日一日はゆっくりとお過ごしください。
私とアン、ベルは買い出しや連絡事項の確認を致します。
本日は多忙につき、姫様とご一緒はできません。
大人しく訓練をするなり、生徒さんたちのお勉強を見るなりして、
決して、変な気を起こさないようお願いいたしますよ。」
「は~い。」
紅葉はその宣言を聞いて、再度挑戦しようと、計画を練り始める。
「と、その前に、お食事でしたな。まずお着換えをお澄ましください。
我々は食事の用意をしてまいりますので、直ぐに食堂へ来てくださいね。
姫様?姫様!」
「うえ。」
「何ですかその声は?は~。すごく心配ですね。仕方ありません。」
レイはそういって、腕輪の中に消えると、直ぐに、勇とサラを連れて出てきた。
「姫。何やってるんですか。子供じゃないんですから。
何で御守が必要になるんです?」
「姫。そうですよ。」
「あはは。」
「二人ともしっかりと見張って下さい。
無茶をしようとしたら、力づくでも止めて、
私の前まで引きずってきてください。
ホント、子供みたいなことをしないでくださいよ。
ほら、着替えて、早く食堂まで来てくださいね。」
そう言って、レイは今度こそ、アンとベルとともに部屋を出ていく。
「姫。拙者は外に出ていますが、早めの御準備を。」
勇はそういうと、ドアを開け後ろ手で閉めた。
「姫。せっかく水道を作って、お風呂に浸かれるようになったのですから、
身をきれいにしてから着替えましょう。」
サラは紅葉を立たせ、風呂のある部屋へと押し込む。




