賢者と無意味な・・・・②
「皆さま集まっていただきありがとうございます。
それだは早速、資料をお配りして、会議を・。」
「待ってほしい。」
信幸が上座に座り、紅葉がその斜め右後ろに立ち、
ぐるりと、室内を見回したところで、会議を始めようとしたところで、
直ぐ左前に座っていた男が待ったをかける。
「え~っと。」
そっと信幸はこの世界のシステムにアクセスをし、
目の前の男性の情報を引っ張り出す。
ーオリオール男爵ー
ー子爵以上と半数の爵位持ちが人形に変わっていた中で、
最近になって授与したため人形にならなかった。
元は商家の出で、親が築いた各国の人脈を用いて、
外交とロビー活動を行っている。
そのため、国内にいることが少なく、国王も代わりを探しやすいことから、
人形にはせず素のままで利用した。ー
「ああ、オリオール様ですか。何でしょうか?」
「む。こちらは君を知らないので、自己紹介をしてほしい。
それから、なぜ我々が呼ばれたのかを説明してほしい。
見たところ、上の方々がいないようなので、それも踏まえてな。」
「ああ、そうですね。いや~。私も不眠不休で作業を行っていたので、
すっかりと、忘れていました。では、自己紹介から。」
そういって、信幸は自分と紅葉の自己紹介をする。
自己紹介の時には怪訝な顔になったが、
自分たちの王がドワーフや人間ではなかったことを聞くと驚いた顔になった。
そして、信幸が用意した資料を用いて説明を始めると、
現状の人材不足と国難に青い顔になる。
向かって左側の貴族席側の人間は末席になればなるほど、
説明が理解できないのか、ただ聞いているだけになり、
信幸としては人材の確保をどうするべきか、
真剣に頭を悩ました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「と、いうのが王都とこの国の現状です。
入城する際や、国元での騒動で、知った方もいたとは思いますが、
現状、力を示して貴族になることはできません。
役に立つ、知識がある方しか、貴族にはしません。
そうしないと、国が回らないからです。
そして、王なき今、あなた方には2つの道を提示します。
一つは各貴族による会議により運営する議会制の国家を樹立する。
もう一つはこの世界の神にこの中から、王を選出してもらい再度王制を敷く。」
「まってほしい。その二つしかないのか?
これが国家間の戦争であれば、君らが戦勝国ともとれる。
君らが王となり、国家を運営することもできるはずだ。」
「それはできない。最初に言った通り、私達はこの世界にとって、異邦人だ。
王を任命しろと言われればそれは女神に交渉して、任命することはできるが、
この世界に居続けるわけではない私達は協力はすれど、
治めることはできない。この国はこの国民によって、運営すべきだからだ。」
「そ、それは・・・。」
「議会制ならば、この会議に出席しているものが今後も執り行い、
徐々に国民にその権限を委譲し、国家を運営していけばいい。
王制にするなら、今後も王が能力に合わせて爵位を与え、
罪に合わせて罰を与え、自分と民を守ってもらえばいい。」
「即答はできない。」
「王を任命して、決定権だけを王に与え、議会制を敷いてもいい。
まあ、王を立てるのか立てないのか、どうやって国家を運営していくのか、
明後日までには決めてくれ。資料は渡しておく。
王を立てるメリットデメリット。
議会制のメリットデメリットが記載してある。よく読んで考えてくれ。
どんな結果であってもそれを尊重する。」
「わかっ、た。」
「わかりました。」
貴族側のオリオール男爵が重々しく頷き、
王国側のラザフォード筆頭鍛冶師もしぶしぶといった形で頷いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
信幸は会議室から紅葉を伴い退出する。レイとアンは給仕兼監視として、
残ってもらった。
「ふー。一段落かな。」
「かな。」
「王なき今、爵位に意味がないと気づいてくれるかな。
まぁ。選択することに意味があるからな。」




