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女教師は座学を開催する。

「さて、本日は体を使いません。ひたすら頭を使います。

 まず、集団行動とはなんたるかと、

 過去事例を片っ端から頭に叩き込んでもらいます。」


そういって、紅葉は部下にも手伝ってもらい、

ドンッドンッと分厚い冊子をテーブルの上に置いていく。

そして、表紙をポンポンと叩きながら話を進める。


「この冊子を今から配ります。

 余ったら図書室とこの部屋に一冊ずつ置いておきます。

 また、一緒に、紙を回しますので、名前と背表紙に書いてある2桁の番号を

 記載してください。」


そういって、列ごとに冊子と白紙を配っていく。


冊子の中身は紅葉が激選した中世の世界で起こった戦争の歴史書をまとめ、

冒頭は指示系統、指示方法、基本戦術、集団行動とはどういったものかが

書かれたものである。


ぶっちゃけ、趣味で行ったものをユグラドシアの技術で冊子化したものである。


ギリシャやトルコ、明治以前の日本史、三国志、

和洋問わず、大規模な軍事行動を取り、圧倒的な人数差を覆した戦略、

奇才、鬼才の戦略を気の向くままに史実に忠実に軍事行動のみを書き出し、

地図と図を入れて書いたものである。

今回は近代は抜いた。兵科が若干異なるからである。


紅葉自身ここで役に立つとは思わなかった。


実はこの冊子を提案してきたのは演習の際に

司令官役を任されていた兵士であった。


何でもユグラドシアの部隊では、あの冊子を少しづつ読み進め、

軍の配置、進軍方法、運用方法を学んでいるというのである。

軍事行動の何たるかがわからないものに何を言っても伝わらないなら、

理解できる水準まで底上げすればいいとのことである。


それを聞いた紅葉は確かにと納得した。

王国では兵科が分かれ、かつ基本的な運用を理解していた。

なので、一人一人の能力の向上と臨機応変に対応できる知恵を与えれば

将も兵も力量が向上した。


しかし、武具と肉体の強さにものを言わせたこの国の国軍では、

それが通用しない。

なら、通用するだけの知識を与え、底上げをすればよい。

そして、1週間たったら、兵科ごとの運用方法と将棋もしくはチェスを教えれば、

自ずと戦術を考え、そして戦略とは何かを認識するはずということだ。


紅葉は配り終えたのを確認し、手元に戻ってきた紙と人数を確認する。

それをしまい、今後の説明を始める。


「今から皆さんにはその冊子を2週間かけて読んでもらいます。

 毎日この時間に私はこの部屋に5時間ほどいます。

 その間はどんな質問でも受け付けます。

 また三日後と1週間後には皆さんで本に書かれている内容について、

 話し合いを行ってもらいます。

 その際に評価を行い、不適格と思われる方は申し訳ないが

 軍をやめてもらいます。

 その意味は分かりますよね?

 今、皆さんは温情により、生かされています。

 もし、不適格と判断された場合、良くて奴隷、悪くて死罪です。」


そこで言葉を切り、顔色をうかがう。

皆真剣に聞いている。ここにいる国軍は操られたとはいえ、

民を利用した兵器を使うという禁忌を侵している。

それは確かに死罪に値するだろうことを認識しているのだろう。


「ですが、その汚名を返上するためにも、

 皆さんはどのような状況であっても、

 民を守れることを示さなければなりません。

 そのための勉強です。

 この冊子は写本を許可します。

 メモや所感はその写本に行ってください。

 2週間後には返却してもらいますので、

 それまでに写す方はどうぞ写してください。

 最後には再度演習を行います。

 それまでに皆さんがしっかりと学習することを望みます。

 以上!では勉強を始めてください。」


そういって、紅葉は座り、自らも読み始めた。

部下の兵士たちも折り畳みの椅子を取り出し、

同じように座り、読み始める。


そして、室内にはカリカリとものを書く音だけが響き始めた。

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