聖女たちの一手
「ヤッホー。美幸ちゃん。今大丈夫。」
「ええ、大丈夫ですよ。祭壇の清掃を終えて、ひと段落したところです。
異世界の方はひと段落ですか?」
開いたドアから六花が声をかけられ、美幸は祈るのをやめ
振り返りながら問いかける。
「いんや。まだ問題は山積み。取り敢えず、私が休んでも回る程度には
人員を配置したから、重要案件の相談も含めて戻ってきたの。」
「人形の件ですか?」
「それもあるけど、特殊実験室に行かない。相談したいことがあるんだ。」
そういって、ユグラドシル内に設置されている、
特殊実験室へと連れ立って向かう。
部屋に着くと六花は実験対象を置く部屋に入り、信幸から受け取った宝玉を置く。
それを測定室から見ていた美幸は顔をしかめて、見守る。
”ガチャ”
「ふー。うん。その顔はあれが何かわかっているね。」
「ええ。あれどうしたんですか?」
「向こうの世界で精霊の核のような形で埋まっていたものらしいよ。」
「おぞましいですね。あんな狂気の塊のようなものが核になっていたなんて。」
「ねー。で、だ。後、少なくともあれが3つあるのよ。あっちの世界に。」
「それは、なんとも厄介ですね。あの術式及び濃度の浄化は
簡単ではないですよ。」
「だね。秋姉を頼るにも、属性の相性が悪いんだよねー。」
「残りの推定の属性は?」
「火、水、風。」
「それは。無理ですね。」
「なのよ。でも、何とかしないと、消すわけにもいかないしね。」
「それで私ですか。」
「そう。お願いできる?申し訳ないんだけど、私は休眠に入るから、
起きるまで一人で考えてもらうしかないんだけど。」
「やりますよ。それでも。」
「そう。お願いするよ。母さんには当分お手伝いできないっていっておく。」
「すみません。お願いします。後、対策ってわけではないですが、
流が面白そうに計画していた、”アレ”を進めてはどうですか。
あの子と楽しそうに計画していたやつ。」
「あー。”アレ”。そうね。対抗策の一つとしてはいいかな。」
美幸は目の前の宝玉の術式の解析を行いつつ、解決策の検討に、
六花は”アレ”がどうなっているのか確認するために、
通称”ドールハウス”へと向かった。
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「ドール。入るよ~。」
『おや?六花さん。どうしました。』
「流と考えている”アレ”。どうなってる?」
『美幸さんに聞いたんですか?』
「そうだけど。マスタークラスはみんな知っているわよ。」
『ありゃ。そうですか。では、説明しますね。
量産やカスタマイズを考えて、ベースとなる骨格は同じにします。
コアは合成魔石を使い、運用します。
操作部分は現在、コントローラ、脳波、トレースの三種類を検討中。
装備及び武装については、既存のものを大型化するために
構造計算を再度実施中。
という感じです。
まあ。紅葉さんの武器は専門職のサポートが必要ですが、
そのほかに関しては、今までの蓄積情報から、
飛行パーツ、射撃装備、センサー各種の設計、製造は問題がない状況です。』
「足りないものは?」
『専門職と利用者のイメージですかね。』
「その程度で済むならどうにかするわ。」
『でも、一度だめだしされたのにどうしたんですか?
だからこっそり試作品を作ろうと思っていたのに。』
「必要になりそうなのよ。」
『は~。いきなり状況の変化ですか。わかりました。製造できるように、
ラインの拡張と設計を急ぎます。』
「お願いね。」
六花は帰るためにステーションへと向かう。その途中で、工房の前を通った際に、
紅葉のドールを回収し、起動準備を済ませ、眠りについた。




