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賢者の政③

「う~ん。こいつは。」


うなる信幸の前には地獄の様そうの壁と柱が広がっていた。

生きたまま土の中に埋められたのであろう人が呻き声をあげ、

ところどころに白骨が見え隠れしている。

世界の終わりの一部分を切り取って壁画にしたのかと思うそれの周辺に、

幾何学模様の線がはしっている。


文字通りこの国の礎にされた人々の様そうに、

信幸は生徒をこの場に連れてこなかったことに安堵しながらも、

魔法陣の解析と魂の選別を始める。


「天空、手伝ってもらえるか?」


「御意に。」


案内し終え、周囲の警戒を六合、騰蛇、白虎とともに行っていた、

天空に手伝いを依頼しながら、解析を進める。


「主・・・。」


「ああ、厄介だ。」


解析をすべて終えたわけではないが、破壊または一人でも生贄を助けると

壁が崩れ、生き埋めにされることがわかる。


「取り敢えず、天井と床を支える木の柱を立てておこう。」


そういって、何か所かに種を植え、術を行使する。

それが一通り、終えた段階で、天空には引き続き、解析をお願いしつつ、

埋まっている者の魂の解析を始める。


(う~ん。なんか違和感があるな~。)


半分ほど解析をした段階で、ゆっくりと歩いていた信幸の少し後方の空間に

水が集まり、それをくぐって六花が現れる。


「これは・・・。」


現れた六花は周囲の様そうに唖然としながら、立ち尽くした。


「ようこそ六花。地獄へ。」


「冗談になってないよ。信兄。」


「ははは。」


乾いた笑いをしながら、周囲を見回す六花についていく。

六花は、式神がいる入り口の階段に向かいながら口を開く。


「なんで呼んだの?」


「救えるリソースは救う。それが俺らの仕事だろう。

 というか、救わないと、この国はコントロールできない。」


「王族は?」


「いると思うか?」


「どうして?」


「あの武具の元ネタが、王様だったんだよ。そして、例の狂った精霊。」


「ああ、そういう。信兄が人気のない城で途方に暮れている、

 急いできてくれって言うだけで、理由が見えなかったんだよね。

 なるほど、トップ不在、ということは、領主も不在。

 で、この人たちを助けるために私をっか。助ける魂の判定は?」


「人数が多すぎる。難しいんだ。」


「秋姉は?」


「実は、精霊が紅葉を食おうとして、逆に暴食が食い殺したんだが、その時に、

 ドールに満ちた精霊の力にはじき出されたっぽいんだ。」


「はぁ?!あれ、結構傑作だったのに~。マジか~。

 まあそれは明日にでも流に頼むとして。

 浄化<浄火>は無理か。限定解除の贖罪は?」


「消えかねないだろ?」


「だとするとあれとあれの複合~。でもな~。

 それやると私どれだけ休眠が必要になるか。

 う~ん。あの子たちのおかげ、創造<想像>の分はあるけどー。」


しばらく、入り口で、二人でうんうんとうなりながら、考える。


「そうだ。清浄<正常>は使えるか。確か、清め、浄め、正しく常ならん。

 だっけ?」


「ああ。うん。う~ん?いけるかな。少し足りない。かな?」


「なら、俺の余剰を使え。」


「そうね。宝玉か魔石、マテリアルはある?」


「一応。ほら。」


そういって、自身の魔力を込めた宝玉を渡す。


「さすがね。琥珀?作ったの?」


「ああ。自信作だ。」


「でしょうね。うん。足りそう。さて、<限定解除>。」


<世界的な脅威を確認・・・。周辺には無し。

 彷徨う魂を確認・・・。確認。申請を開始。>


<六花より、『限定解除』の申請が行われました。許可しますか。>


「許可だ。」


<許可承服しました。>


<・・・。3名の許可が下りました。『限定解除』します。>


その声とともに、六花の周囲の気温が下がり、霜が発生する。

霜が晴れると羽衣を纏って六花が現れる。


「さて。久しぶりにこの状態になるわ。ふー。まずは

 『清め、浄め、正しく常ならん!清浄<正常>』!」


すると、水がフロアを満たし、周りだし、壁や柱を削り、

現れた白骨や死体、人々を中央へと集める。

天井や壁が崩れるが、それは木の柱が支え、

崩壊するのを防ぐ。


「よし!『想いを形に創造<想像>』!」


その威力は劇的だった。死体には血色が戻り、白骨は血、血管、肉、皮が付き

元の人へと戻っていく。


ただし、一部は白骨と死体のままだった。


<死者の回復を確認。『限定解除』を再度封印します。ご利用は計画的に。>


「ありゃ?」


「あー。なるほど?」


二人は戻らなかった、白骨と死体を近くで確かめる。


「あー。やっぱり、清浄<正常>で魂がはじかれたな。」


「へー。これは以外。そんな効果があったんだ。

 もともと、元に戻す魔法だと思ってた。」


「3人で、この人たちを上へ。俺と六花は後から騰蛇と上がる。」


「「「御意。」」」


白虎が風で蘇った人を持ち上げ、六合と天空が、挟むように前後について、

階段を上がっていく。


「六花、大丈夫か?」


「無問題!」


「なら良し!問題がないか確認して、戻、る、ぞ・・・?」


足元の死体と白骨が空中に巻き上げられ、異形へと姿を変える。


「げっ!だが!『緊急』!『限定解除』!」


<罪人を確認。『限定解除』の申請をします。>


<信幸より、緊急の『限定解除』の申請が行われました。許可しますか。>


「許可よ!」


<・・・。タイムアウト。紅葉以外の2名の許可を確認。『限定解除』します。>


「秋姉・・・。」


六花はそのアナウンスを聞いて、何とも言えない顔をする。

その横で信幸は杖を掲げ、ワードを口にする。


「『汝は罪を贖うでは事足りぬ、断罪』!」


雷が異形を貫く。そして、炭化する。


<罪人が消失しました。『限定解除』を再度封印します。ご利用は計画的に。>


「あいつだから。しゃーなし。」

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