姑息で卑怯な真似
「やはりこうなったか。」
そうつぶやく信幸の眼前には土でできた馬、大きなゴーレム、
どう見ても鍛冶職であろう、ゴーグルに腕だけムキムキ、
火で焼けたであろう目周り、
そして、耳も奇形になりかかっている人物たち。
遠くに城が見えるが、その前がなぜか荒野になっている。
草が全く生えていなく、どう見ても整地した後だった。
「これはどうしたもんかな。」
「この前見たいに木にするのは。」
「今回は無理だ。」
「あの魔法は術者が魔法陣の中央にいる必要があるのよ。」
大野の質問に信幸は端的に答えるが、紅葉が説明する。
「無理ですね。これ、ゴーレム作り放題とかですか。」
「いや、それは。」
「私と信兄でどうにかするわ。今も抑えているしね。」
「あの、えっと。秋ちゃん?えっ?」
「戦場になると人が変わるんだ。」
「「「「え~?!」」」」
「何よ?」
「いや、完全に別人では?」
「何言っているの?」
「いやいや。」
「諦めて、こういう生物だと思った方が精神的に楽だぞ。」
「はぁ。」
「何かしら、戦いづらい気配がする。」
紅葉が肩眉を上げて、そういう。
「勘、か。なら、気を付けるとするかな。よっと。」
紅葉の言葉を受け、信幸はどこからともなく、弓を取り出し、
符のついた矢を乱発する。
すると、着弾した場所から、木が急速生えてくる。
「す、すごいですね。」
「俺の属性だからな。さて、奴さんも動くだろうから、紅葉後は頼むわ。」
「わかっている。サラ!」
そういうと、紅葉の左手にかかとから腰ほどの長さの両刃の剣が現れる。
「『軍勢』!!」
紅葉が剣を両手で胸の前に掲げる。
すると、鎧をまとい様々な武器を持った天使のような存在が
大勢現れた。
「かかれ!」
剣を敵に向けてそう叫んだ。
そして、ある程度、間を空けて、自らも駆け出した。
それを見て信幸は
「しばらくすれば終わるだろう。」
そういって、馬車の屋上に上ると座り、本を読み始めた。
それをみて、生徒たちも屋上で観戦することにした。
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「あれ?」
しばらく見ていた大野は不自然なことに気づいた。
明らかにゴーレムや土人形は減っているのに鍛冶師の集団が
未だに大量に残っている。
そして、何人かの天使が打ちあっているが、
そのうち、天使が離れ、近くのゴーレムへと向かう。
「なんで倒れない?」
大野はぼそりと、つぶやく。
それを聞いた信幸が戦場に目を向ける。
怪訝な顔で、戦場を凝視する。
しばらくすると、ゴーレムと土人形を打ち終わった
紅葉と天使が慌てるように引き返してきた。
「信兄!あれ無理。あれは無理!」
「どうした!」
「あいつら、奪った魂を使って生きた防具と武器を作ってそれを着ている!」
「はぁー!!」
「打ち込みづらいし、傷は修復するし、装備者が気絶しても動くし、
燃やすわけにもいかないし、無理!
あれ絶対人質にしているし。肉壁扱いよ。」
そんな、やり取りをしている間に集団が近づいてくる。
「ちっ!全員降りろ!」
そう叫んで全員を降ろすと、馬車をしまい、
何かを地面に投げつけた。
すると、何本もの太い蔦がムクムクと生え、
そして絡まりあい、信幸や生徒たち、紅葉を持ち上げ、
さらに大きくなり、大樹のような姿へと形を変えた。
その頂上で、皆が落ち着くのを待ち、信幸が紅葉に尋ねる。
「お前、魂だけ焼くことはできないのかよ。」
「え!?え~と。使えません。使い方がわからないの、
前に一度使ったと思うのだけど、使い方がわからなくて。」
紅葉は首を垂れて答える。
「ふー。あいつに聞いてみるか。」
そういって、六花に家族会議のお願いを出した。




