女教師国王と交渉す
ーぱぁーー
光が徐々に収まっていく。
(うーん。目がちかちかする。)
「おー。お?これが異世界の戦士か?戦士には見えんな。」
召喚者であろう人物が声を上げる。
「酷い言われようね。拉致しておいて。」
「なっ。こちらの言葉がわかるのか。これでは!!」
紅葉はこの男がしようとしたことが「見えた」。
「何?操って肉壁にでもするつもりだったの?
女神から教えられた秘術でそんな醜いことを平気でするんだ?」
「くっ。ならば。無理にでも。ぐぎゃ!!」
紅葉は静かに怒り、武器化したアンを振りぬいた。
「汚らわしい男ね。人を人と見ないなんて。最低ね。
でも、私のかわいい生徒が見ているから、勘弁してあげる。
さぁ。さっさと、この国のトップのところまで、連れて行きなさい。」
「何をしている!マグダル!さっさと、こいつらに首輪をつけて操らんか。」
太った男がわめきながら、首輪の大きさのものを持って生徒に近づく、
紅葉は黙って近づけばいいものをと思いながら、内心溜息をつきながら、
「飛炎」
男の肩口に向けて剣を振り下ろした。
振り下ろした剣から炎が剣線状に男に飛んでいく。
「ひぁ!」
男は情けない声を上げてしりもちをつく。
斬られた腕は、切り口の表面が炎で焼かれて、血が噴き出ることなく落ちる。
「腕が!!い、痛い!!」
そういって、男は失禁しながら、気絶をした。
「情けない。さて、あなたは浅い切り傷で済ましているけど、
この男みたいになりたい?」
マグウェルと呼ばれた男は気絶している男と紅葉を見て、
ぶんぶんと首を振る。
「なら、この国のトップのところに案内をしてくれるよね。」
男は勢いよく首を縦にふり、立ち上がる。
「来て、レイ!」
腕輪から光が現れると初老の男性へと姿を変える。
「この男を見張って。」
「御意に。」
「さて、問題はこの男だけど・・・。仕方ない。」
紅葉はどこからともなく扇を取り出すと。太った男の腕を合わせて、
手に持った扇でなでる。
すると、斬れた腕はきれいにつながった。
「これでよし。勇。」
今度は羽織に袴姿の武士のような人物が現れる。
「この男をお願い。」
「え。俺ですかい。」
「そうよ~。私やレン、クリス、もしくは生徒に持たせるの?」
「いえ。そうではなくて、他にも・・・。」
「他の子は別件で使いたいの。身バレさせたくないしね。」
「は~。わかりやした。」
そういって、勇と呼ばれた男は太った男を担いだ。
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「こ、こちらです。」
マグダルは先頭に立って、紅葉や生徒たちを案内していく。
途中、数名のメイドや騎士にすれ違ったが、
マグダルが
「客人だ。」
というと、首をかしげながら、すれ違っていく。
この男はそこそこ、身分が高いらしい。
広い城内を歩き、地下から階段を上がり、2階の1室の前に案内される。
「あの部屋だが、近衛兵がたっているぞ。どうするつもりだ。」
「そうね。レイ。アン。」
腕輪から一人のメイドが姿を現す。
そして、マグダルの問いに答えるように、
レイとアンは近衛兵の近くまで普通に歩いていき、両サイドから、
当身で兵士を昏倒させる。
「な!?」
「ざるね。」
紅葉はそうつぶやくと、扉を開けて中に入った。
そこには、優しさの中に威厳を持った顔つきの男と、
いかにも優等生で通ってきた男が立っていた。
「何者だお前たちは。近衛兵は何をしていた!」
「この馬鹿二人に異世界から召喚された、そうね~、
戦士よ。この服を見ればわかるでしょう。」
そういって、紅葉は勇に男を下すように指で合図をしつつ、マグダルを小突いた。
「なっ!?ブルウェルにマグダルだと。マグダル、女性の言ったことは本当か?」
「は、はい。恐れながら、申します。ブルウェル様が強靭な兵を求めまして、
英雄召喚の儀を行いましたところ、彼女たちが召喚されました。」
「なに。兵を求めただと!一個人の欲を満たすためにそんなことをしたのか!」
「申し訳ございません!」
マグダルは首を垂れて震えながら、発言をした。
それに追い打ちをかけるように紅葉が机の上に首輪を投げながら、口を開いた。
「それだけじゃないでしょ。その首輪、隷属の首輪だと思うんだけど。」
「何!?」
横に控えていた男は慌ててその首輪を手にとり、調べていく。
「ま、間違いございません。王。これは隷属の首輪です。」
その発言を聞きマグダルはビクリと肩を揺らした。
「どういうことだ。」
先ほどより、低い声色で再度マグダルへと問い詰める。
「し、仕方がなかったのです。ブルウェルさまに召喚が成功し、
兵が手に入った暁には、その者の知識や持っていた物をいただけると。」
「馬鹿者!神託があったわけでもないのに、何をしている!
剰えその兵で何をするつもりだった!ブルウェルは公爵だ!
そんな男が兵を求めるとはどういうことか、考えればわかるだろう!
その力を使って叛意を抱いたとしてもおかしくはないだろうが!
ジェークスこいつらを捕まえて牢につないでおけ。
魔法が使えないように施してな!」
顔を真っ赤にしながら、横にいた男にそういう。
ジャークスと呼ばれた、優等生っぽい男性は兵をよぶために、慌てて部屋をでて、
昏倒している兵にまゆを寄せながらも、顔をたたいて、起こし、
二人を連れていけるだけの、兵を呼ばせ、連れて行かせた。
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二人が連れていかれ、落ち着いた王は口を開いた。
「身内の恥でこのようなことになってしまい申し訳ない。異世界の客人よ。
召喚された際に、女神様に聞いたかもしれないが、戻る手立てがないため、
この世界でとどまっていただく必要がある。
支援はするが、最低限のものになる。」
「女神様にも言ったけど、戻る手立てはこちらにあるから問題はないわ。
でも、しばらく生活する拠点が欲しいの。
後、一応これでも、戦士として召喚されたのだから、
こちらの兵を鍛えたり、何らかの討伐のお手伝いはするわ。」
「それは願ってもないご提案ですな。しかしながら、見たところ・・・、
あなた以外は成人していないようですが?」
ジェークスと呼ばれた男が疑問を口にする。
「そうね。でも、一応素質はあるし、ある程度鍛えてあるから。
足手まといにはならないと思うわ。
その辺は要相談で。あと、いろいろと情報提供できると思うから~、
都度相談で。どう?」
「王よ。異界人の情報はお金に代えがたいものがありますし、
兵の練度を上げてくれるというのならば、願ってもないことかと。
それに、公爵のこともありますので、この辺りが落としどころかと。
それに、あやつの屋敷が空きますので、しばらくの間といっていますし、
使わせるのがよろしいかと。」
「うむ。そうよな。ではそのように進めてくれ。
今日は、客間か迎賓館で過ごしてもらえばよかろう。」
「はっ。そのように進めます。では、えーと。」
「ああ。私は紅葉よ。クレハでも、アキでもいいわ。」
「では、モミジさまと。モミジさまと皆さま、
今人を呼びますので、そのものについていってください。」