強欲な賢者
「信さん。すごいですね。迷った感じもない。」
「まぁ。金属と木の属性に特化しているしな。
だが、紙装甲だから、しっかり守ってくれ。」
「そんなに強いのにですか?」
そう洞窟にはゴーレム種が大量に湧いていたのである。
しかし、信幸にとっては敵ではなかった。
土や泥なら、木の属性を、金属なら雷と金属を操る力で、次々に無力化していく。
そして、腕輪のストレージに入っていく。
「いや、所謂当たらなければどうということもない。というやつだよ。
当たらないように細心の注意をしている。
それに、あまり、俺がやりすぎるのも問題だろ。
これは君たちの冒険でもあるわけだし。」
「まぁ。そういわれると。」
「それに、俺は賢者ポジ。勇者や騎士を正しく導くのも役割だから、
あまりやりすぎるのは良くない気がしてね。」
「はぁ。」
信幸のよくわからないこだわりに生徒たちは一様に戸惑いを見せる。
「まぁ。がんばれ。ほら来たぞ。さて、ブースト系をかけてあげよう。
がんばれ!」
そういって。各個人の武器と肉体に何らかの付与をかけて、
一番最後尾にたたずむ。
「まぁ。行くか。」
そう名取がいうと。各々が武器を構えて、出てきたアイアンゴーレムに相対する。
「先輩!俺が牽制します!」
そういってメイスと大楯を持った、大野がアイアンゴーレムに走って向かう。
腕の間合いに入ると、動きを良く見ながら、楯でさばき、その腕に攻撃を加える。
「日野!富士!行くよ!」
「はい!」「了解です!」
大月は、後輩の日野と富士に声をかけると、自分は真ん中から、
日野と富士には左右に回り込むようにハンドサインで伝える。
そして、日野は足に向かって思いっきり、刀の抜き打ちを当てる。
関節部を狙ったその一撃で、両足を切断する。
両脇から来た二人は、倒れる勢いを利用して、肩を切り、腕を落とす。
「出番がないかな?」
「だといいけど。」
信幸を守りつつ、神戸と宮城はそんなことを話す。
すると奇妙なことが起きる。
切った腕と足が、這うように体に戻っていくのである。
「これは・・・。みんな離れろ!『招雷!』」
名取が剣から雷を飛ばし、ゴーレムの体に当てる。
すると、ようやく這っていた手足も止まる。
「良い連携だ。だが、最後がいただけない。」
「ええ。信さんが戦っていなければ、危なかったです。
伝承とかだと文字を消すっていうのが有名ですけど。
あれ、体か頭のコアをつぶすまで止まらないやつですか?」
「さすが、元部長。その通り。いや~。さすがだね。
倒し方は、途中の四肢を落とすところまでは正しい。
その後、雷による攻撃か胴体を切ってコアをつぶすことによって停止する。
よく気づいたね。」
「信さんが雷で倒していたので、効果があるのだろうとは思いました。」
「良い判断だね。というわけで、次からはもうちょっと連携を考えようか。」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
生徒たちは元気よく返事をする。
そんなこんなで、生徒と信幸は順調に最奥へとたどり着いた。
途中にはゴーレムはいるものの、人質を犯人も見つからなかった。
そして、最奥にはきれいなひし形の結晶と身なりの良い男
そして、数百人はいるであろうやせ細ったドワーフであろう人たちが
大きな部屋にすし詰め状態で待ち構えていた。
「貴様らか!我が領土で問題を起こしているのは。
だがここは我がテリトリ―。つい最近生まれたこのダンジョンコアと
我らが主よりいただいたこの力で貴様らを倒してくれる。
住民たちよ肉壁となり、我を守るのだぞ。」
そういって、ダンジョンコアに触れ、次々とゴーレムを増やすが、
3体ほど生み出したところで、つんのめり、倒れそうになる。
なぜなら、寄りかかるように手をついていたダンジョンコアが
突如消えたからである。
「なんだ。どこへ行った。」
きょろきょろと辺りを探すが見当たらない。
「お探しのものはこれかい?」
男は声を上げた信幸を見る。するとそこにはダンジョンコアを掲げた信幸がいた。
「ど、どうやって。」
「なーに簡単さ。俺は見える範囲であればものを手に入れることができる。
どんな大きさ。どんな形、どんな重さでも関係ない。
なぜなら、『強欲』だからね。いや~。いいもん手に入れた。
これは研究のし甲斐がありそうだ。」
そういうと光となって腕輪に吸い込まれる。
「お、おま。」
「『限定解除』。」
口をパクパクとさせている男を無視して信幸はそうつぶやいた。
<罪人を確認。『限定解除』の申請をします。>
<・・・。3名の許可が下りました。『限定解除』します。>




