苦手フィールド/得意フィールド
紅葉たちは騒動から逃げるためと、人質の解放のために、検問を突破し、
呪の発信地と思われる洞窟を目指し、道なき道を疾走していた。
本来であれば、ゆっくりと宿で休み、夜営の疲れを癒したいところではあるが、
このままでは住民から犯罪者のレッテルを張られかねず、
急ぎ原因の究明をしなければならなかった。
「信兄・・・。ここ?」
そこは、鉱山のような場所だった。
入口らしき場所には馬房のような大きな建物と、
豪華なロッジがたっていた。
「ここのはずだ。お前だってわかるだろうが。」
「まあ、地属性の力で邪気を感じないでもないけど・・・。
ここは私は役に立たないかな。」
「まあ、閉鎖空間はお前にとっては弱点たりえるものな。
特に人質救出の系統では・・・。」
紅葉は火と土の属性しか持たないため、閉鎖空間では殲滅を得意とするが、
救出となると力を振るえないため、役立たずとなる。
「俺と、生徒でいくわ。」
「その間に、私は周辺の調査と逃亡してきたものの確保を行うわ。」
「心配だが致し方なし。レイ、アン。わかっていると思うが・・・。」
「ええ、そこは私達がフォローいたします。」
「本当に頼むぞ。」
レイとアンは目をそらしながら、
「善処します・・・。」
そう絞り出した。
「なんでよ。」
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「秋ちゃん先生じゃあ。能力的に無理だとして、
信さんはどうやって、この坑道の中から人質救出をするんですか?」
「俺は紅葉みたいに、派手ではないが、それなりに細かいことが得意でな。」
そういいながら、何かを壁に貼っていく。
「何をしているんすか?」
「探索系の符を張っている。これは土の中の微量な貴金属を媒体に
内部構造や索敵に使える。
あと、入口には気づかれないように、トラップを張った。」
「ほ~。符ですか。」
「そ。最近陰陽師とか流行ったろ。俺はその系統に特化しているんだ。
さて、人とゴーレムの場所はわかったから早速行こうか。
しかし、何だか。この場所ダンジョン化している気がするんだが・・・。」
「不穏なことを言わないでくださいよ。」
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「さて、私も仕事をしないとね。」
そういって、紅葉は、坑道の入り口にサラを、自分たちが来た入口側に勇を、
そして、周囲の索敵にヤンとキョウを放ち、自分はアン、レイを伴い、
豪華なロッジへと足を向けた。
「何かあるとすれば、この建物のはず。
まぁ。外れても、奴隷のように住民を扱っていたことを考えると、
あの馬房のような建物にも何等かの手がかりがあるとは思うけど、
まあ後にしましょう。」
歩きながら、そんなことを言いつつ、建物にはいる。
「派手ね。悪趣味的な意味で。」
中は黄金で、埋め尽くされていた。壁や柱はともかく、
調度品や家具は金で作られていた。
「さて、食器はっと。」
紅葉はキッチンを探すが、見つからない。
「はは~ん。これは確定ね。精霊か、アンデットか。
どちらにしても、飲食をしない体の持ち主ね。」
そう、この建物には食器棚やキッチンが見当たらない。
通常炊事場はこの文明レベルなら、
まだ一階のどこかに設置する。
水を利用しやすいためである。
しかし、見つからなかった。
これは、飲食をしない体の持ち主が主であると考えて
相違ないと紅葉は判断し、続いて、2階へと上がる。
2階には執務室と思われる部屋以外何もなかった。
「睡眠も必要ないのかしら。」
そんなことをポツリと漏らしながらも、部屋をあさっていく。
アンに書類を適当に渡し、なおも漁るが、何も出てこない。
特に借金の証文があると考えていた紅葉にとっては空振りもいいとこであった。
「おかしいわね。どうやって、人を連れてきたのかしら?
求人?魔法?う~ん。」
「姫様。お考えのところ申し訳ございませんが、この建物おかしいですな。」
「レイ?あっ!そうね。ブランクスペースが多いわ。」
「さようでございます。この執務室の両隣に、
小さいながらもスペースがあるはずですし、
なにより、フロアの底上げをしているのも気になります。」
「地下スペースがある可能性っか。う~ん。
信兄なら、一発で見つけるのかもしれないけど・・・。
とりあえず、面倒だから、廊下にでて、両隣の壁を引っぺがすか。」
レイは苦笑いをしながらも、妙案が思い浮かばず、主についていくしかなかった。




