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水の所為(精)

―たっ、たっー


馬車はビエツとの国境沿いに近づいていた。


「まず、王国側の関所だな。」


「2つも通るの?」


「そうだ。だが、都市らしい。いわゆる防衛用の都市だな。

あと、国に入ったものの魔力波を記録する場でもあるんだろう。あれだな。」


「お互いの都市が、隣接しているんだ。

うん?川?そうか、あれを境にしているんだ。」


「だろうな。山や川、森林地帯なんかで境にするしな。

 おーい。聞いてるか?」


「はーい。聞いてますよ。」


「確か、日本でも川や坂が今でも県境や、町境に使われていますよね。」

 

「あと、杭や石碑を境にしたり。」


「よく知っているな。そうだな。

ビエツと王国はこの川を境にしているようだな。」


「さーて、どうやって川を渡る?」


「橋が架かっているらしい。行けばわかるだろう。」


「そう。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「止まれ!身分証を。」


「はいよ。ご苦労様。」


「こっ!これは。」


「?」


「し、失礼しました。」


そういって、身分証を受け取った兵士は慌てて、確認の処理を行い、

返却をしてきた。


「通っていただいて構いません。」


「どうも~。」


身分証を受け取り、都市に入る。


「なんなんだろね~。」


「大方、王国の上位しか持たないような身分証の形式で驚いたんだろうよ。」


「は~。すごいんだね。この身分証。」


「今更かよ。まぁいい。どうする。補給をしておくか。」


「信幸様。市場によりたいのですが。」


「おや。アンが意見をするなんて。」


「食材を見ておきたいのです。買って、保管しておけば

料理のレパートリーも増えますし、

 なにより、もうストックしているものの種類が少なくて。」


「なるほどね。」


「アンではありませんが、ここで、何かを仕入て、

別の場所で売れば路銀になります。」


「それも一利あるな。レン。じゃあ市場へ行くか。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「豆、肉、葉物、果物、穀物、香辛料。

さすが、国境だな。王都ほどではないにしろ

 種類はあったな。酒も買えたしな。

 一応、ビエツ側の都市でも市場を回るか。」


「それが良いかと。国によって、税の関係で、

売っているものに特色があるはずですから。」


「そうだな。さて、関所だ。アン。手紙を。」


「はい。」


「ありがとう。王国側はさっきと同じく、身分証のチェックか。」


「みたいね。」


先ほど、都市に入ったときと同様に身分証を呈示する。

しかし、先ほどと違い、戻ってきた兵士が上司と思われる文官を連れてきた。


「失礼ですが、ビエツへはどのような目的で。」


「王の使者としてだが。」


「失礼ですが、何か証明となるようなものは・・・。」


「あなたに渡すわけにはいかないが、これは証明にはならないかな。」


「こ、この封蝋は王家の。宛名はビエツ王ですな。

も、申し訳ございません。

 お、おい。本物ではないか。」


「す、すみまんせ。まさか、本当に王家の関係者とは思わず。」


「ば、馬鹿者。馬車と馬からして、偽物であるはずがないだろう。

 すすすいません。通っていただいて構いません。ど、どうぞ。」


「どうも。」


信幸は橋に向かって馬車を進めた。

すると、橋の中ほどまで進むと、急に水が盛り上がり馬車へと向かってきた。


「そーい。」


そんな掛け声とともに、紅葉が川底から、

土壁を生成して、向かってきた水を防いだ。


「なっ。だ、だれが。」


それを見ていた。両国の衛兵が驚き声を上げる。


「気づかないと思ったの。」


『思ったわ。不意打ちしたつもりだったのに。』


土壁の後ろの水から、声が聞こえる。

その水が徐々に人魚のような形をとる。


「水の精霊・・・。もう面倒ね。」


『あなたたちを自由にさせるわけにはいかないのよ。』


そういって、水の精霊は腕を一閃する。

土壁を真っ二つにして、馬車も切ったと

見ている衛兵は思ったが、

馬車は無傷だった。


それどころか、水の精霊が苦悶の表情を浮かべる。


「でっ。」


『くっ!』


忌々しそうに馬車をにらむと、蒸発するようにフッと消えた。


「相変わらずだな。」


「そうでもない。ちょっとだけ鈍ったかな。

 核を斬ったつもりだった。」


そんな会話をして、信幸は何事もなかったかのように、また、馬車を進めた。


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