表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/160

依代

「さーて!昨日説明をした通り、あなたたちは本日をもって、

 元の世界に帰ります。その前に、この形代に分御魂を行ってもらいます。

 魂を分けるといっても、思いや考え方をコピーするだけだから、

 そんなに難しく考えないように、さてやり方だけど、

 こうやって人形の両手を握って、おでことおでこをこうやって当てるだけ。

 簡単でしょ。さぁやってみよう。」


紅葉に言われ、生徒たちは恐る恐ると真似をしてみる。

全員がやったのを確認して、エンデが


「さて、実際に動くかテストしようか。」


と提案をする。


「じゃあみんなこの円の中に入って~。富士君ちゃんと入って後で、

 ちゃんと実験をさせてあげるからね~。」


六花が生徒を誘導しながら、魔法陣の中に入れる。


「エンデ。大丈夫だよ。」


「あいよ~。さてっと『隔絶』。」


エンデが魔法陣の中を外の空間とは別の位相へとずらす。

すると、人形が見るまに8人にそっくりになり、立ち上がった。

人形の側の生徒も自分の体の変化に驚きつつも、結界の自分を見て、

興奮したように指をさす。


「さて、こんなもんかな。空間をもとに戻すぞ。」


すると、人形側は眠るように座り込み元の姿へと戻った。


「す、すごいですね!」


富士が興奮したように声を上げる。


「まあな。所謂アバターってやつだな。今は魔法ありきでしか実現できないが、

 この程度ならもうすぐ元の世界でも実現できるだろうよ。

 どうよ、世界は面白いだろう。」


「はい!」


富士は憑き物が落ちたようにいきいきと返事をした。


「さて。この人形は体力は無尽蔵だけど、痛みは切っていないの。

 切られれば痛いし、毒を食べれば苦しくもなる。

 なぜだかわかる?」


生徒たちはそろって首を傾げた。

なんでそんな設定なのかという感じと

質問の意図が分からないという顔をしている。


「わからないって。顔ね。理由は簡単。

 生きることの大切さと危険を避ける術を学んでほしいからよ。

 人は切られれば痛い、当たり前だけどね。

 それがわからない人間は簡単に命のやり取りをする。

 自殺をしたり、殺人を起こしたり、ね。

 そうはなってほしくないから、 人形の痛覚は切ってません。

 でも、実際にあなた方の体は傷つかないし、

 こんな痛みだったという思いだけがフィードバックされます。

 もしかしたら、心臓がきゅっとなるかもしれないけどね。」


納得半分、迷惑な~という顔半分で、全員の表情が一致した。


「では、帰りましょう。六花。こっちの私をよろしく。」


「せいぜい。暴走しないことを祈るよ。」


「ふふふ。エンデ。」


「あいよ。俺も向こうに用事があるから送ってくは。

 さて、行くぜ。ほい終わり。」


瞬間、風間家の道場へと到着した。


「では、解散。明日は学校で試合前の最終調整を行います。」


そういって、紅葉は各個人を送り出した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(何だかな~。)


六花は動きだした8人を見ながら思案をしていた。

どう考えても、力を使いこなせば一国ぐらい落とせる気がするのだ。


紅葉は言うに及ばず。

名取は光と雷系の魔法すべて、

神戸は風と雷系の強化系の魔法、

宮城は4属の付与魔法

大野は土と火の強化魔法、

大月は風と火の強化魔法

富士は風の強化と付与魔法

日野は風と水の付与と強化魔法

といった具合に能力が定着し始めたからである。


(これは、あの時あの場所に潜在的な勇者と剣聖クラスが集まって

 ゲートが開いた感があるな~。

 さてっ、とするならば、少し魔法の訓練が必要かな。)


六花は思案し、今後の方針を固める。

まず、自分が紅葉が教えることができなかった魔法の部分を教える。

その後、便利な人形の使い方を教えて、

狩りや国からの依頼を受けてもらう。

物資は向こうを頼りつつ元でとなる資材の確保と商人とのつなぎ。

・・・etc


六花は考えて頭が痛くなり始めた。

一人では厳しい。実体を伴った文字通りのサポータが必要だ。

だが、だれを・・・。

そんなことを頭を抱えて悩んでいると肩をたたかれた。

振り返ると、エルとフレイア、アリエル、マリーが立っていた。


「エンデが帰ってきちゃうし、大変だろうと思って。」


「本当に、自分勝手ですよね。自分ですけど。」


「私はあなたに近いから。向こうにいても暇だし。」


「師匠。いつも一人で抱え込みすぎですよ。

 私は姫の従者ですが、師匠の弟子でもあるんです。」


そんな4人の姿を見て、六花は心底安堵の表情を浮かべた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ