包囲殲滅戦③
「さーて、競争にするか?」
「いいえ。ここは確実に仕留めましょう。」
宮城がそう答える。
「何だ張り合いがない。受験のストレスとかがあるだろう。
発散をする機会だぞ。」
「信さんに見てもらっていますから。それに、人の2倍の勉強ができるのに、
そんなに慌てたりしませんよ、」
「そうかい。ま、確実が堅実かね。とはいうものの、
ほぼザコしかいないと思うがな。」
「なら、私が一人で行きます。」
そう言って日野が元気に手を上げる。
「日野ちゃん?」
「うーん。まぁ不足はないか。一人で行くなら、敵がいる場所は教えるから、
これをつけてくれ。」
そう言って、耳掛け式のヘッドセットを渡す。
「感謝します。あと何人でしたっけ?」
「5名だな。隠れようとうろうろしているもの2名と
谷の底に降りようとするもの2名。こっちに向かってくるもの1名。
だな。」
「谷の底に降りようとするものを先に捕まえますよ。」
「だな。補足しにくくなるし。こっちに向かってくる一名はこっちで対処する。」
「了解です。では。」
そういうと、日野は風を纏い、すごい速さで走って行った。
「なるほど、流治と六花の下位互換だな。あれなら、すぐ終わるか?」
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<もう少し、右だな。>
「了解です。」
言われた通り、右前方に走る。
走っても疲れないこの世界を日野は好きだった。
自由を感じることができ、何より広い。
人々は少しの幸せで笑顔を見せ、
楽しそうにしている。
だからこそ、いろんなことを他者に強要し、
笑顔が消えるのが嫌だった。
「見つけました。」
<捕縛は任せる。気絶させたら言ってくれ、
空間収納をつなげる。>
「わっかりましたー。」
そう言って、崖に向かって手をかざすと、
ものすごい上昇気流が発生し、大人二人が舞い上がる。
「よしっ!」
「「小娘!」」
そう言われた日野は可愛く舌をして、双剣を逆手で握って、
構える。
が、二人の大人は受け身をとることなく自由落下し、
そのまま気絶をした。
「えっ?えっとー。エンデさん。」
<どうした?>
「落下させたら、気絶しちゃいました。」
<そうか。拍子抜けだな。では、収納するから。
少しだけ離れてくれ。>
言われた通り、少しだけ、後ろに飛びのくと、
黒い穴が二人の下に現れ、落ちて行った。
「次はどちらですか?」
<ああ、まあ。厄介だな。等距離で反対に逃げている。>
「なら、どちらでも同じですね。」
<なら、正面から行こうか。>
「了解です。」
そう言って再び日野は風を纏って走り出した。




